小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

人生

979 教師の原点を振り返った知人の話 90年前の小野訓導の悲劇

教職にある知人から電話があり「小野訓導を知っていますか」と聞かれた。かすかな記憶の中に、それはあった。どこかでこの名前を聞いたことがあったのだろう。それは悲劇の女性教師だった。この女性教師を思い、教職を目指した知人は、最近ある偶然から小野…

975 日本沈没への不安 ある若者の憂い

「このままでは日本は沈没してしまうのではないか」。希望して入った組織で意欲的に働く若い女性から、最近こんな言葉を聞いた。政治も経済も行き詰まっていて、閉塞社会がどんどん進行しているのではないかと危惧しているのだ。 特に昨今の政治状況はひどす…

968 棚田にて ある青年との出会い

傾斜地に続く棚田は日本を含めて世界各地に存在する。その中で唯一、世界遺産(文化遺産)になっているのがフィリピン・ルソン島の「コルディリェーラの棚田」である。しかし若者たちが村を離れて行き、3割の棚田が後継者不足のため耕作放棄地となって荒廃…

959 偉大な米大統領・急死の真相 歴史の襞に埋もれた事実を掘り起こした記者魂

米国大統領として4選を果たしたのは32代のフランクリン・ローズベルト(1882-1945。日本の新聞の表記はルーズベルが多い)のみで、彼はいまも偉大な大統領として、米国の歴史に名を残している。ローズベルトが静養先の山荘で脳出血のため急死し…

956 大人も惹きつけられる児童書 沢木耕太郎の「月の少年」

まさか、沢木耕太郎が児童書を書くとは思わなかった。青年時代に香港からからロンドンまでを、バスだけを使って旅をした体験記「深夜特急」でノンフィクション作家としての地位を確立した沢木がこうしたジャンルに挑戦したことが面白いと思ったのか、朝日新…

952 障害者支援を貫いたある人生 末期がんと闘ったYさん

知人の女性がこの2月、がんで亡くなった。末期のがんに侵され入退院を繰り返しながら、仕事に最後まで情熱を注いだ人生だった。2月初めに入院し、ついに仕事に復帰することはできなかった。 彼女が末期のがんに侵されているとは知らなかったから、他の人も…

952 障害者支援を貫いたある人生 末期がんと闘ったYさん

知人の女性がこの2月、がんで亡くなった。末期のがんに侵され入退院を繰り返しながら、仕事に最後まで情熱を注いだ人生だった。2月初めに入院し、ついに仕事に復帰することはできなかった。 彼女が末期のがんに侵されているとは知らなかったから、他の人も…

940 津波~仮設に住宅に暮らして ある高齢者の1年

3月に入って、被災地を歩いた。宮城県東松島市で仮設住宅に暮らす一人の高齢者から話を聞いた。それは、絶望と希望という言葉に象徴される話だった。大津波に自宅が襲われ、長年連れ添った妻を亡くした宮城県東松島市の武田政夫さん(76)だ。 武田さんの…

935 酒を飲む5つの理由 コリン・ウィルソンの「わが酒の讃歌」より

イギリスの作家・評論家のコリン・ウィルソンの「わが酒の讃歌=うた」(田村隆一訳)を読んだのは1976年(昭和51)のことである。この本はそのまま本棚の奥にひっそりと収まっていた。 本棚を漁っていて何気なく手に取った。副題には「文学。音楽・そ…

935 酒を飲む5つの理由 コリン・ウィルソンの「わが酒の讃歌」より

イギリスの作家・評論家のコリン・ウィルソンの「わが酒の讃歌=うた」(田村隆一訳)を読んだのは1976年(昭和51)のことである。この本はそのまま本棚の奥にひっそりと収まっていた。 ふと、本棚を漁っていて何気なく手に取った。副題には「文学。音…

934 マナーと強い女性の話

人生の大先輩を送る会合があった。異業種交流のようなボランティア活動のような、一種独特の組織から、大先輩が卒業することになった。約10人の集まりの中で、この大先輩は、「この10年でショックを受けたことが2つある」と語った。それは現代を反映し…

929 芥川の小説作法十則 文芸中の文芸は詩

「共喰い」という作品で芥川賞を受賞した田中慎弥の、斜に構えた受賞後の会見が話題になっている。 女優のシャーリー・マクレーンがアカデミー賞に何回もノミレートされた後にやっと受賞した際「私がもらって当然」と話したことを引用して「大体そういう感じ…

925 富山で出会った元野球少年 立山連峰の下で挑戦の人生

先日、富山・立山連峰の話を書いた。圧倒的な姿に言葉は不要と思った。その富山でこよなくこの山を愛する人に出会った。富山県高岡市の作道和宏さん(70)である。63歳でバス運行会社を起こし、68歳で障害者自立支援のNPOを立ち上げた起業家だ。 悠…

924 1%のひらめきと99%の努力 卓球・福原の初優勝に驚く

いまあるかどうかは分からないが、かつて会社の保養所や温泉旅館には娯楽施設として卓球台があった。下手なもの同士がのんびりと小さなボールを返し合う。「ピンポン」という言葉を聞くと、そうした光景を連想する。そのピンポンを日本語では卓球という。テ…

905 西向く侍とは 凛とした2人のボランティア女性

ことしも「 西向く侍(にしむくさむらい)」の月がきょうで終わり、明日から師走になる。2、4、6、9、11月は、ひと月の日数が31日以外の月のことである。この5つの月(小の月)を、このように言うのだと小学校で教えられた。 「さむらい」は「士」…

903 人間関係の輪を広げ、最悪の事態を想定 海外暮らしの秘訣とは

タイのチェンマイでロングステイしている知人から「チェンマイ・フーケオ通り」というタイトルのエッセー集が送られてきた。「知人が住んでいるファイケオ通りからとった「風景夫」というペンネームでチェンマイのタウン紙『ちゃーお』にロングステイ初心者…

893 「涙を喪失した少年」よ 一度だけ見た母の号泣

他の人のブログを見ていると、その人の個性がよく出ていて面白いものが少なくない。「文は人なり」といい、ブログの文章からも筆者の人間性、品格が伝わってくるのだ。 このブログの「マイリンク集」の一番下の「冬尋坊日記」の11月6日分「涙を喪失した少…

891 海外暮らしという人生の選択 チェンマイからの便り

かつて、同じ会社で勤務していた知人から突然メールをもらった。会社を辞めたあと、音信が途絶えていたが、このメールで奥さんと一緒にタイのチェンマイで7年前から暮らしていることが分かった。私は2005年1月、家族と一緒にこの街に行ったことがある…

882 宝の海を奪われた三陸の海女さんの話 でも「まだやれる」

東日本大震災は、三陸の漁場を荒涼たる海に変えた。宮城県石巻市の牡鹿半島西南に位置する網地島(あじしま)沖合にも多くの遺体が流れてきたという。この島に住み、宮城県内で歌謡教室の先生をやりながら海女を続けている小野寺たつえさんに、最近話を聞く…

875 「どんな本を読み、どんな作品に救われたか」 震災後の本の読み方

《東日本大震災は流れ去って消えていくものとは違う。この国の歴史に深々と打ち込まれた杭として、おそらく将来の長きにわたって、優れた文学作品を語る際の座標軸のひとつになりうるだろう。たとえば、僕はこんなことを考えるのだ。震災の直後にどんな本を…

867 「一世紀を生きて……」 柴田トヨさんと日野原さん

この4日に百歳を迎えた医師・日野原重明さんをNHKの特集を見た。認知症になった夫人、聖路加病院緩和ケア病棟の2人の患者を中心に、いまも現役を続ける日野原さんの姿を追った番組だ。 「感謝」という言葉が日野原さんの現在を支えていると、知った。こ…

867 「一世紀を生きて・・・」 柴田トヨさんと日野原さん

この4日に百歳を迎えた医師・日野原重明さんをNHKの特集を見た。認知症になった夫人、聖路加病院緩和ケア病棟の2人の患者を中心に、いまも現役を続ける日野原さんの姿を追った番組だ。 「感謝」という言葉が日野原さんの現在を支えていると、知った。こ…

864 「それでも、なおの頑張りを」 時代の風・伊佐木健著

いま、日本の政治は危機にあるといっていい。それを政治家は意識しているのだろうか。そんな思いを抱くのは私だけではないだろう。そんな時、知人の伊佐木健さんから「時代の風 20―21世紀の政治をめぐって」(WWB/ジャパン出版部刊)という本が届いた…

864 「それでも、なおの頑張りを」 時代の風・伊佐木健著

いま、日本の政治は危機にあるといっていい。それを政治家は意識しているのだろうか。そんな思いを抱くのは私だけではないだろう。そんな時、知人の伊佐木健さんから「時代の風 20―21世紀の政治をめぐって」(WWB/ジャパン出版部刊)という本が届いた…

863 音楽とともに歩んだ記者人生 アマチュアオーケストラは楽しい・松舘忠樹著

音楽の楽しみ方は人それぞれだと思う。この本(仙台市・笹気出版)の著者である松舘さんは、社会部記者を中心に長い間、報道機関のNHKで忙しい生活を送った。そんな生活の中でも松舘さんはヴァイオリニストとしてのもう一つの顔を持ち、クラシック音楽を…

853 長い夏の終わりに hanaの8月のつぶやき

私は、この夏で9歳になったゴールデンリトリーバーの雌のhanaです。もう9回の夏を過ごしてしまいました。それにしてもことしはいろいろなことがありました。楽しいこと、つらいこと、悲しいことが重なりました。長い間一緒にいて、あんなにつらそうな…

852 言葉を扱う政治家なのに 民主党代表選の記者会見を見る

菅首相が正式に辞任を表明し、次の首相を決める民主党の代表選が29日に実施されるという。5人の候補者が日本記者クラブで会見しているのをテレビで見た。 民主党で依然力を持っているという小沢、鳩山両氏が支持を打ち出した海江田万里氏(辞任の時期を失し…

851 甲子園に響いた日大三高の校歌 作詞者山本正夫の孫の思いは

夏の甲子園・高校野球全国大会で、東京代表の日大三高が青森代表の光星学院を11―〇でくだして優勝した。「見よや 麗わしの誠の光昇る旭日に ほのぼのと・・・」という(小林大次郎作詞、山本正夫作曲)日大三高の校歌をテレビで聞いた。 負けた光星の選手…

850 「苦労した写真の後でうなぎ食べ」 青年・子規の房総の旅

俳人の正岡子規(1867年10月14日―1902年9月19日)は、34年の短い生涯で、5つの長旅をしているという。その1つが24歳の時の「房総の旅」だった。この旅で子規は、明治4年創業の千葉の老舗うなぎ店「やすだ」に立ち寄り、蒲焼を食べてい…

847 2月の印象 国立新美術館の日美展を見る

東京・乃木坂の国立新美術館で開催されている「第12回日美絵画展」をのぞいた。友人の田口武男さんの作品がが日本画部門の秀作に選ばれ、展示されたからだ。 公益財団法人国際文化カレッジの主催で入選した2000点を展示するという大きな美術展だった。…