小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

853 長い夏の終わりに hanaの8月のつぶやき

画像私は、この夏で9歳になったゴールデンリトリーバーの雌のhanaです。もう9回の夏を過ごしてしまいました。それにしてもことしはいろいろなことがありました。楽しいこと、つらいこと、悲しいことが重なりました。長い間一緒にいて、あんなにつらそうな家族の顔を見たのは初めてでした。

楽しいことは、私の一番大事なお姉さんが、1月に女の赤ちゃんを産んだことです。産んだ後、ミニチュアダックスフンドのノンちゃんと、4カ月も一緒に過ごすことができました。私は犬族にはあまり関心がないのですが、ノンちゃんはいつも私にまとわりついてくるので、いつの間にか妹のような感じを持ちました。

つらかったのは大きな地震の時のことです。あの日、家族はみんな出かけていて、家にいたのはお姉さんと赤ちゃん、それに私とノンちゃんでした。お姉ちゃんは赤ちゃんを抱え、あちこちに電話を掛け続けていました。でも、ほとんどつながらなかったみたいで、その夜は人間2人と私とノンちゃんで眠れない時間を送りました。

余震が続いて、みんな眠るどころではなかったのです。あの夜の、お姉ちゃんのつらそうな顔を今も忘れることができません。

悲しいこともありました。散歩の途中に見かける仲間が姿を消してしまったのです。ラブラドールレトリーバーのシオンさんは、病気と闘い、一時は奇跡的に持ち直したのですが、地震の後に亡くなったと聞きました。体調を壊して、歩くのがやっとという状態でしたのに、一番好きなお姉さんが産んだ赤ちゃんに対抗意識を燃やして、普通に歩けるようになったのです。

でも、それは命が燃え尽きる前の、輝きだったのかもしれません。

そして、暑い夏がやってきました。お父さんは「人生で一番暑く、長く、つらく、悲しい夏だ」と言っています。私にはよくわかりませんが、たしかに暑い夏でした。原子力発電所の事故という、とても大変な事故が地震の後に起き、それが原因で電気がいつもの夏のようには使えなくなったというのです。

毛皮にくるまれた私には、夏の毎日は地獄のようなものです。エアコンが必要ない秋が待ち遠しいと思い続けながら、ハアハアと息をしていました。

でも、がまんが出来ます。お姉ちゃんと赤ちゃん、ノンちゃんが自分の家に戻った後は、私がこの家の中心になっているからです。家族3人は私に夢中なのです。特に、自分が機嫌のいい時にはちやほやして、そうではないときは相手にしてくれないお父さんが、最近はけっこう優しいのです。

明日で8月が終わります。最近、吹く風が体にやさしく感じられるようになりました。あの地震から、半年が近づいているそうです。まだ、たくさんの人たちが、家に戻ることができず、不自由な生活を続けていると、お父さんは言います。「何とかしてほしい」と、私も思います。

最近、ますます食欲が湧いています。私の元気を被災地のみなさんに分けてあげたいのですが・・・。