小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

847 2月の印象 国立新美術館の日美展を見る

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東京・乃木坂の国立新美術館で開催されている「第12回日美絵画展」をのぞいた。友人の田口武男さんの作品がが日本画部門の秀作に選ばれ、展示されたからだ。 公益財団法人国際文化カレッジの主催で入選した2000点を展示するという大きな美術展だった。田口さんの作品は「2月の印象」と題し、水仙と鳩を前面に、背景に京都の山を描き自然の力強さを感じさせる。 2月という季節は、田口さんにも私にも縁がある。実は2人が生まれた月であり、1年の違い(私が1年遅い)はあるが、誕生日が同じなのだ。だから、田口さんはこの季節に、創作意欲がふだんにも増してわいたのだと想像する。 彼は以前、書の世界に魅入られ、そして、いまは絵にのめりこんでいる。別の友人は「田口さんは天才だ」と評したが、人間には隠された才能があるのだと思う。彼は3年後に、日展入選を目指すと言っている。有言実行である。 会場を見ていると、大賞、準大賞に次いで最優秀賞のコーナーがあり、その中の「絵手紙部門」が目にとまった。要するに、絵はがき部門である。最優秀に選ばれたのは東京都の松浦マリ子さんの4枚で「今、力を合わせる時」という題がついていた。 松浦さんの絵手紙作品は、1枚目が「被災者の皆様へ」というもので「深い悲しみと不安を胸に秘め乍ら、時には笑顔とありがとうの言葉での対応にむねがいっぱいになります。ずっと応援を続けてゆきます」という文章と、水仙の花を描いている。2枚目は「ボランティアの皆様へ」とあり、「被災者の方々の疲れを自分のものとして手助けしていらっしゃるお姿に頭が下がります。ありがとうございます」が文章。花はピンク色の桜らしい。 3枚目。題は「原発の復旧に集まる方々、自衛隊の方々へ」とあり「過酷な状況の中で命を賭して働いて下さりありがとうございます」という文章とアザミらしい花が描かれている。4枚目は「天国に召された方々」だ。「皆さまのご冥福を日本中の人々がずっとお祈りし続けます」という文章にお地蔵さまらしい絵がついている。 いずれもが文章と絵がマッチしていて、心打たれる作品だ。 先週、仙台、石巻に行ってきた。最大の被災地、石巻のがれきの撤去は進んだが、痛めつけられたこの街の復興は並大抵ではないと思った。仙台は七夕祭りの直前で少しずつ飾りの準備が進んでいた。「鎮魂と復興」がテーマと聞いた。それは、被災地である東北3県に共通する「合言葉」だと思った。