小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

人生

1195 マー君の契約にため息 重圧との戦いも

無芸大食(最近は小食の方か)の身には、全く別の世界の話のように思ったのは、マー君こと楽天の田中将大投手の大リーグヤンキースへの移籍の話だ。ポスティングシステムで移籍が決まったマー君は、年俸総額1億5500万ドル(日本円で161億5000万…

1180 荘子・胡蝶の夢に惹かれて ある詩人を偲んだ絶唱

詩人の飯島正治さんが亡くなって3年が過ぎた。亡くなる1年前の2009年から飯島さんが中心になって発刊した詩誌「薇」の第9号が手元に届いた。9人の同人による詩と「小景」という短いエッセーが掲載されている。言葉と向き合う達人たちの詩の中で、ふ…

1175 微笑の国での生活 タイへの旅(3)

定年後、日本を離れて海外で暮らす「ロングスティ」希望者が増えている。日本は来年4月から消費税が8%になるため、さらに海外に目を向ける人が多くなるのではないか。「一般財団法人ロングスティ財団」。こんな財団があるとは知らなかったが、ウェブで調…

1168 非情な天才と差別に耐えた大リーガー 伝記映画で知るやり返さない勇気

米国の伝記映画を見た。伝記映画というのは、実在した歴史上の人物の半生あるいは生涯を描いた作品だが、これまで制作された数多い伝記映画は完全な伝記や史実に基づいたものではなく、制作者によって創作や脚色されることが珍しくないそうだ。 それはさてお…

1165 自分史執筆のすすめ 堀淳一著「旅で出会ったアメリカ人」を読む

この世の中にはさまざまな人生がある。いま、生きている人それぞれに歴史があり、何かしら他の人を惹きつける物語を持っている。昨今は、そんな自分の半生を振り返って一冊にまとめる自分史ブームのようだ。旧知の堀淳一さんから「旅で出会ったアメリカ人」…

1164 一筋の道を行く 3人が歩む世界

日本シリーズでパリーグの楽天がセリーグの巨人に勝って日本一になった。その原動力になったのは、田中将大投手であることは衆目の一致するところだ。日本球界を代表する投手に成長した田中の姿を見ていて、「一筋の道」を歩む他の2人のことを考えた。 1人…

1151 追悼・遠藤正芳さん 教育への思い遥か

知人の遠藤正芳さんが8月初めに亡くなった。66年の生涯だった。もう少し早く、追悼のブログを載せたいと思っていたが、きょうになってしまった。穏やかな表情の遠藤さんを思い出しながら、このブログを書いている。以前、私は何度か遠藤さんにインタビュ…

1124 望郷の思いで聞く名曲 友人のシャンソンコンサートにて

美しい故郷をすてて若者は都会に出ていく。そして長い年月が過ぎる。でも故郷の山はいまも美しい……。シャンソン「ふるさとの山」はこんな曲だ。6月29日夜、東京・神楽坂のライブホール・The GLEEで開かれた友人のシャンソン歌手・斉藤信之さんのコンサー…

1121 悲しい過去を持つ島で 73歳になったジェンキンスさん

新潟県佐渡島の観光施設・佐渡歴史伝説館の土産販売コーナーで、北朝鮮による拉致被害者の一人である曽我ひとみさんの夫のチャールズ・ジェンキンスさんを見かけた。ここで販売されている「太鼓番せんべい」は、拉致被害者の救出を目的にする「ブルーリボン運…

1120 旅の終わりに 挫折・大震災・病と闘いながら

旅の多い生活に区切りをつけることになった。2006年12月から始まったこの生活は、旅をして人に会い、話を聞いて文章を書くのが仕事だった。これまで約100回の旅をした。初めての旅で利用したのは石川県の小松空港で最後の旅も偶然、小松空港着の飛…

1116 社会福祉士になった74歳の知人 北海道の旅にて

高齢化社会である。周囲を見渡すと60歳を過ぎても継続雇用で働く人が大半だ。札幌で暮らす知人は現在74歳。悪名高い名称の「後期高齢者」まであと1年なのだが、最近「社会福祉士」という福祉の3大国家資格(他の2つは精神保健福祉士、介護福祉士)の…

1108 出会いの瞬間が大切 本間秀夫写真集「純白の貴婦人 オオバナノエンレイソウ」を見る

北海道で生活したことがあり、少し野の花に興味を持つ人なら、「オオバナノエンレイソウ」(大花延齢草とも書く)の存在は知っているだろうと思う。この花の魅力にひき寄せられた川崎在住のフリーフォトグラファー・本間秀夫さんは長年にわたって北海道に通…

1103 花束を拾う姿に浅田の区切りを思う 挫折を乗り越えたスケート人生

フィギュアスケート女子の浅田真央が、ソチ冬季五輪シーズンとなる来季限りで現役を引退する意向だというニュースが流れた。東京で行われていた世界国別対抗戦のフリーのあと「ソチ五輪を集大成としていい演技ができるようにしたい」と、引退表明と受け取れ…

1103 花束を拾う姿に浅田の区切りを思う 挫折を乗り越えたスケート人生

フィギュアスケート女子の浅田真央が、ソチ冬季五輪シーズンとなる来季限りで現役を引退する意向だというニュースが流れた。東京で行われていた世界国別対抗戦のフリーのあと「ソチ五輪を集大成としていい演技ができるようにしたい」と、引退表明と受け取れ…

1098 洗礼名は日本26聖人が由来 クリスチャンになった友人

大阪に住む69歳の友人がことしの復活祭の前日の3月30日、カトリックの洗礼を受け、クリスチャンになった。洗礼名は「パウロ・ルドビコ」(あるいはルドヴィコと)という。 「パウロ」は新約聖書の著者の1人といわれ、初期キリスト教の理論家の名前で、…

1098 洗礼名は日本26聖人が由来 キリスト教信徒になった友人

大阪に住む69歳の友人がことしの復活祭の前日の30日、カトリックの洗礼を受け、クリスチャンになった。洗礼名は「パウロ・ルドビコ」(あるいはルドヴィコと)という。 「パウロ」は新約聖書の著者の1人といわれ、初期キリスト教の理論家の名前で、「パ…

1079 「人は生き、愛し、苦しみ、亡くなる」 美しい横綱・大鵬との別れ

不世出の大横綱といわれた大鵬が19日に亡くなった。いつも遠くを見るような、哀しみを湛えたような風貌を忘れることができない。土俵入りは孤高さを感じさせ、私は「この人は笑ったことがあるのだろうか」と思ったものだ。 大鵬と同時に横綱になり、柏鵬時…

1064 大リーグで成功した3人の1人 記録と記憶に残る松井が引退

日本球界から大リーグに移って、成功した選手はそう多くはない。日本人初の大リーガーである村上雅則もいるが、成功した3人を挙げれば野茂英雄、イチロー、松井秀喜だろうか。ヤンキースに残った黒田博樹や1年目うまく行ったダルビッシュ有も成功組に入る…

1062 「遥かなりラオス」 頑張れノンちゃん!

2009年9月、ラオスを旅した際、お世話になった現地NGOの女性で「ノンちゃん」という愛称を持つ、庶民の味方がいた。そのノンちゃんが最近、体調を崩したと聞いた。肝臓の状態が芳しくなく、病気と闘う日々を送っている。彼女の回復を祈りながら、こ…

1051 心に残る福美ちゃんの絵 小児がんの子どもたちの絵画展にて

11月もきょう30日で終わり、明日から師走に入る。日本人は楽しいことには気が早いのか、街ではもうクリスマスツリーを見かける。そのクリスマスツリーを自分の目で見ることを夢見ながら、病床で絵を描いた少女がいた。石川福美ちゃんだ。 横浜のみなとみ…

1005 10歳でも1000キロは歩けるのだ ビクトル古賀の半生

サンボという格闘技があることは知っていたが、かつてサンボの神様といわれた人物がいたことは石村博子著「たった独りの引き揚げ隊 10歳の少年、満州1000キロを征く」(角川文庫)を読むまで全く知識にはなかった。 たまたまこの本の前に、マーク・ト…

1004 日本一住みたい場所は? 長崎・五島への旅

日本一住みたい場所はどこかと聞かれたら、何と答えたらいいのだろうかと悩んでしまう。住めば都という言葉がある通り、自分が住んでいる地域が気に入っている人は少なくないだろう。原発事故で故郷を追われた福島の多くの人たちは、自分たちの故郷が日本一…

998 ピストリウスの活躍に爽快感 もうひとつのロンドン五輪

このブログで「義足のランナーに五輪資格を」と書いたのは、5年前の2007年12月のことだ。北京五輪(2008年8月)を前に、南アフリカの義足の男子短距離ランナー、オスカー・ピストリウス選手(現在25歳)が北京五輪で健常者と一緒のレースを走…

994 ストレスたまるロンドン五輪 柔道の松本の表情が救い ロンドン五輪(1)

ロンドン五輪が始まって、きょうで10日になった。このブログを書いている現在(日本時間8月31日午後9時、現地時間午後1時)、日本選手のメダルは金1、銀4、銅6(団体競技は1と計算)の計11個だ。前半は、日本のお家芸ともいえる柔道が連日行われている。だ…

993 大災害に立ち向かう矜持 山本一力著「菜種晴れ」を読む

昨年3月11日の東日本大震災の直後に、山本一力の「菜種晴れ」は文庫本として中央公論から発売になった。単行本としては2008年3月の発行だから3年後の文庫本化である。江戸末期の時代小説である。大火と大地震に襲われた江戸の下町。その中で生き抜…

992 イチローは逆転の発想の持ち主 電撃移籍に思う

大リーグのシアトル・マリナーズからニューヨーク・ヤンキースに電撃的に移籍したイチローは天才である。それはだれもが認めることだろう。日本球界で打者として頂点を極め、大リーグでもやはり天才ぶりを発揮した。衰えを見せたことし、イチローは心境の変…

992 イチローは逆転の発想の持ち主 電撃移籍に思う

大リーグのシアトル・マリナーズからニューヨーク・ヤンキースに電撃的に移籍したイチローは天才である。それはだれもが認めることだろう。日本球界で打者として頂点を極め、大リーグでもやはり天才ぶりを発揮した。衰えを見せたことし、イチローは心境の変…

980 いのちの重さを思う時間 3冊の本・がんと闘う友人・マーラーの5番

この数日は、密度の濃い時間を送った。毛色の変わった3冊の本を読み、がんと闘う友人と話をし、東日本大震災の被災地にも出かけた。友人は、奇跡的にがんを克服しつつある。それは人間の生命力の強さを感じさせ、大震災以来、暗く沈んでいた心に一筋の光明…

980 いのちの重さを思う時間 3冊の本・がんと闘う友人・マーラーの5番

この数日は、密度の濃い時間を送った。毛色の変わった3冊の本を読み、がんと闘う友人と話をし、東日本大震災の被災地にも出かけた。友人は、奇跡的にがんを克服しつつある。それは人間の生命力の強さを感じさせ、大震災以来、暗く沈んでいた心に一筋の光明…

979 教師の原点を振り返った知人の話 90年前の小野訓導の悲劇

教職にある知人から電話があり「小野訓導を知っていますか」と聞かれた。かすかな記憶の中に、それはあった。どこかでこの名前を聞いたことがあったのだろう。それは悲劇の女性教師だった。この女性教師を思い、教職を目指した知人は、最近ある偶然から小野…