小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

934 マナーと強い女性の話

人生の大先輩を送る会合があった。異業種交流のようなボランティア活動のような、一種独特の組織から、大先輩が卒業することになった。約10人の集まりの中で、この大先輩は、「この10年でショックを受けたことが2つある」と語った。それは現代を反映した内容で、さもありなんと思った。

大先輩が語ったショックの1つは、共有する本にアンダーラインンを引いたのを見つけたことだという。図書館の本にも同じように、赤のボールペンで線を引いたり、書き込みをしたりした頁が見つかるそうだから、同じような感覚で重要だと思った個所にアンダーラインンを入れたのだろう。

電車の中でも、図書館の本を持った人をよく見かける。自分の本ならカバーをするのだろうが、なぜかカバーなしで持ち歩いているのだ。

大先輩は「モラルの低下がここまで来ているのは愕然とした」と嘆いた。

ショックを受けた2つ目は、笑い話に近い。自分よりかなり体が小さな女性と腕相撲をする機会があり、当然自分が勝つと思ったのに、簡単に負けてしまったことだそうだ。断ったうえで腕に触らせてもらうと筋肉がけっこうあって、これなら負けて仕方がないとあきらめたという。

人は見かけによらないということであり、女性の方が体を鍛えていて元気であることを証明していると思った。

マナーといえば、電車の中で平気で足を組んでいる若い男性をしばしば見かける。傍若無人というのだろうか。足が長いので、その席の前の吊皮は空いている。イヤホーンから音楽が漏れることも少なくない。

先日、若い男性が聞いているイヤホーンからかなり大きな音が漏れていた。みんながうるさいと男性の方を見ている。私が注意しようと思っていると、それより先に、やはり若い男性の一人が席を立ち、音漏れイヤホーンの男性に近寄り、注意をした。注意された男性は素直に音量を下げたが、最近は、こんなことでけんかに発展することが少なくないといわれる。

東日本大震災では、日本人の(東北の人々)忍耐強さと冷静さが国際社会から称賛された。だが、日本人のマナーはそれほどでもない。ヨーロッパでは信号がない横断歩道に人がいれば、車は止まってくれる。日本で同じ状況で車が止まってくれた経験は数回しかない。

政界を含めてうそがまかり通っている時代であり、日常的に大小の差はあってもショックを受けることが少なくない。