小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

福祉

493 年金運用の赤字 いつもと違う夏

「私たちは、年金積立金の安全かつ効率的な管理・運用に努め、年金制度の運営の安定に貢献します」。年金積立金管理運用独立行政法人のホームページにはこのような言葉が並んでいる。安全と効率的は実は矛盾している。 「二兎を追うもの一兎も得ず」なのだ。…

481 かあさんの家その後 人生終末期の過し方

宮崎市にあるホームホスピス「かあさんの家」を訪問したのは今年1月のことだった。そこには、ヘルパーとともに、5人のお年寄りが住んでいた。認知症や末期のがんを抱え、人生最期のときを迎えようとしている人たちだ。7月16日夜、NHKがこの家をドキュメ…

468 お母さんただいま奮闘中 飛行機で再会した先輩の本

以前、奈良と京都を旅していて偶然、京都のデパートで東京の知人と出くわしたことがあった。ことしになって、今度は沖縄に向かう飛行機の中で同じ職場で働いたことがある先輩と乗り合わせ、空港到着までの時間を昔話に花を咲かせた。人生にはこんな偶然は何…

444 清潔を好む民族性 新型インフルエンザへの対抗策

豚インフルエンザは新型インフルエンザという呼称に変わった。日本でも感染者が発見され、メディアは「スペイン風邪」の再来のような報道ぶりだ。弱毒性で死亡率も0・4%いうから、そう恐れることはないはずだが、ウイルスは気まぐれであり、いつか強毒性…

405 生と死への問いかけ 天童荒太「悼む人」

本の題を見ただけでは、内容はなかなか想像できない。しかし、手に取るとその内容の濃さに心がうずく。天童荒太はベストセラーになった「永遠の仔」以来8年ぶりにこの本を出版した。 変わった題名だ。読み進めていくうちに、頭の中ではこのような「悼む人」…

391 心の中で輝く2人の少女 小児がんで逝った福美ちゃんと桜ちゃん

昨年11月14日のブログで「小児がんの子どもたちの絵画展」について紹介した。その中に登場する2人の少女が最近NHKのニュース番組首都圏ネットワークの中で取り上げられた。短い生涯を閉じた2人だが、ご両親はもちろんのこと周囲の人たちの心の中に、い…

388 ホームホスピスとは 宮崎のかあさんの家訪問記

2006年12月、末期のがん患者らを受け入れるホスピスや在宅緩和施設を運営する3人の話を聞いた。そのうち2つの施設、東京・山谷のホスピス「きぼうのいえ」と仙台の在宅緩和センター「虹」には翌2007年にお邪魔し、あらためて命の瀬戸際にある人…

381 どうなる定額給付金 過去の二の舞か

定額給付金が第2次補正予算に盛り込まれ、閣僚が受け取るとか、辞退するとかがニュースになっている。オーストラリアでは12月のクリスマスを前に景気刺激策の一部として、全国民を対象に一時給付金104億豪ドル(約6436億円)が支給された。これが…

379 人を支える存在に

最近、懐かしい顔に出会った。大谷藤郎さん、84歳だ。ハンセン病(かつて、らいと呼ばれた)隔離政策の誤りを指摘した信念の人だ。旧厚生省の官僚OB(医系技官トップの医務局長で退官)ながら、退官後「らいは治る。患者を隔離しておくらい予防法は人権侵…

357 けなげな子どもたち 小児がん患者の絵画展で涙

千葉の幕張メッセで14日から始まった小児がん学会の会場一角で「命の輝き」を訴える絵画展が開かれた。 「財団法人 がんの子供を守る会」が10年前から毎年実施しているささやかな展覧会だ。この展覧会をのぞいて、あるポスターの前でくぎ付けになり、涙を…

299 畳の上で死ぬということ 在宅ホスピス・ケアの時代に

後期高齢者医療制度」という新しい制度に批判が集中した。高齢者の定義は難しい。しかし、いずれにしろ人間は年をとる、とらないにかかわらずいつか死ぬ運命にある。千葉市の幕張メッセで開かれた「日本ホスピス・在宅ケア研究会全国大会」をのぞいて、いま…

275 人は何のために生きるのか 根源に迫る汐留のアウトサイダーアート展

東京・汐留の松下電工ミュージアムで24日から「アール・ブリュット/交差する魂」と題したささやかな展覧会が開かれている。アウトサイダーアートといわれ、正規の美術教育を受けていない人たちの作品展だ。同じ会場で開かれたアウトサイダーアートのフォーラ…

257 どこへ行く「ゆりかごから墓場まで」

「ゆりかごから墓場まで」は、社会保障制度の先進国、イギリスの社会福祉政策のスローガンで、日本もこれを指針とした。しかし、いまやこのスローガンは死語になりつつある。 かつてばらまき福祉といわれたほど日本政府は社会保障で大盤振る舞いをした。それ…

200 首相の謝罪 気付くのが遅れたとは?

「ご迷惑をかけて申し訳なかった。厚生労働大臣も反省している。みなさんのことに気付くのが遅れて申し訳なかった」。福田首相が今月5日、首相官邸で中国残留孤児の集団訴訟の原告らと面談した際、このような言葉で謝罪したと新聞に報じられた。 新しい支援…

129 ビジネスモデルのまやかし 2つの挫折

起業家の間では、いつしか「ビジネスモデル」という言葉がもてはやされるようになった。言葉の響きはいいが、要するに「いかにしたらもうける手段ができるか」ということだ。基本的にいまの日本社会は利潤追求を最優先にしているのだから、それはそれでいい…

128 育て、元気にと祈る 盲導犬訓練センターにて

盲導犬は「無私の精神」で、目の不自由なパートーナーと日常を送っている。かつて沢口靖子が主演したNHKのドラマ「盲導犬クイールの一生」で、盲導犬の重要性を認識したことを覚えている。 しかし、あれほど評判を呼び、映画にもなったにもかかわらず、盲導…

125 バリアーフリーはどこまで進んだか 自己体験

ある朝、地下鉄の階段で足を踏み外し、転倒しないように右足を踏ん張った。その結果、一段下に着地したが、右足のひざ上を痛めた。足を引きずり、整形外科に行った。診断は1週間程度で治るという軽いものだった。しかし、そうではなかった。いまも痛めた右足…

95 医師群像 ひた向きに患者に向かう

江戸時代に活躍した相撲の名大関「雷電」を主人公にした飯嶋和一の「雷電本紀」は、いつになっても色あせしない小説だ。この中に江戸庶民を相手にする名医が登場する。庶民相手の名医といえば、山本周五郎の「赤ひげ」を連想するが、飯嶋版赤ひげの「恵船」…

91 高齢化社会の現実 整形外科病院の老人たち

数年前、ゴルフをしていてぬかるんでいた斜面で転倒した。背中をしたたかに打った。その時、首も少し痛めた。病院に行くほどはないとたかをくくり、そのまま数ヵ月痛みを我慢した。 いつしか痛みはなくなり、転んだことも忘れていた。ことし1月末から2月にか…

82 山谷にて 「きぼうのいえ」を見る

「東の山谷、西の釜が崎」という言葉がある。双方とも、いわゆる「ドヤ街」といわれる簡易宿泊所があり、日雇い労働者や路上生活者が多く住んでいる街である。 かつては、この街を舞台に、いろいろな話題があった。山谷は台東区清川・日本堤・東浅草と荒川区…

82 山谷にて 「きぼうのいえ」を見る

「東の山谷、西の釜が崎」という言葉がある。双方とも、いわゆる「ドヤ街」といわれる簡易宿泊所があり、日雇い労働者や路上生活者が多く住んでいる街である。 かつては、この街を舞台に、いろいろな話題があった。 山谷は台東区清川・日本堤・東浅草と荒川…

19 福祉への挑戦

公務員を退職した後、福祉の仕事を始めた友人がいる。 公務員として、幹部まで上り詰めた彼は、介護タクシー(介護を必要とする老人を対象に自宅-介護施設の送り迎えをする業務)の免許に挑戦、9日間の合宿を経て62歳で見事免許を取得した。 そこで彼の夢は…

19 福祉への挑戦

公務員を退職した後、福祉の仕事を始めた友人がいる。 公務員として、幹部まで上り詰めた彼は、介護タクシー(介護を必要とする老人を対象に自宅-介護施設の送り迎えをする業務)の免許に挑戦、9日間の合宿を経て62歳で見事免許を取得した。 そこで彼の夢は…