小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

19 福祉への挑戦

 公務員を退職した後、福祉の仕事を始めた友人がいる。

  公務員として、幹部まで上り詰めた彼は、介護タクシー(介護を必要とする老人を対象に自宅-介護施設の送り迎えをする業務)の免許に挑戦、9日間の合宿を経て62歳で見事免許を取得した。

  そこで彼の夢は広がる。介護タクシーだけでなく、自宅の一階を改造してディサービスを始めたのだ。公務員として、福祉関係の部署の幹部を務めた彼は、定年後、一時NPOの手伝いもした。

  それを経て、介護タクシーという発想は、弱者に対する優しい眼差しゆえの決断だったのだろう。それでも、新しい仕事を始めた当初は、「はたして利用者はいるのだろうか」と夜も眠ることができない日々だったという。

 公務員を勤め上げ、これからの暮らしに不安はないだろう。彼を知る人の半数は「そんな冒険をする必要がない」という。しかし、半数は「やるだけやった方がいい」と、彼の決断を応援しているそうだ。

  彼が信頼する叔母も「死ぬ気でやり遂げなさい」と、叱咤激励をしてくれたという。日本は、これから未曾有の高齢化社会に突入する。彼の挑戦は、高齢者へのエールのように思える。