小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

災害

947 表皮をそがれた柿、切り倒された桃の木 原発事故で果樹の名産地が危機

原発事故で福島県の田村市や川内村の一部に設定された警戒区域が解除になり、一部の住民が一時帰宅したというニュースが流れた。しかし、住民が元通りの生活に戻ることができるという保証は全くない。この地区よりも北部の伊達市はホットスポットといわれる…

943 ある贈る言葉 原発事故福島の小学校の卒業式

以前、ラオスに同行した宍戸仙助さんは、現在原発事故で多くの県民が避難生活を送っている福島県の小学校で校長をしている。宍戸さんが校長をしている伊達市立富野小学校は、きょう卒業式を迎えた。在籍児童は33人、このうち8人が6年間の学び舎を去った。卒…

942 春を告げるメロディー 心弾む季節は遠く…

ことしは「早春賦」という歌=春は名のみの 風の寒さや 谷のうぐいす 歌は思えど 時にあらずと 声もたてず 時にあらずと 声もたてず=のように、春が来るのが遅い。 うぐいすは「春告鳥」とも言うが、うぐいすが鳴かないと春が来た感じがしない。 ようやく今…

942 春を告げるメロディー 心弾む季節は遠く…

ことしは「早春賦」という歌=春は名のみの 風の寒さや 谷のうぐいす 歌は思えど 時にあらずと 声もたてず 時にあらずと 声もたてず=のように、春が来るのが遅い。 うぐいすは「春告鳥」とも言うが、うぐいすが鳴かないと春が来た感じがしない。ようやく今…

941 もう1度ゆきたい場所 大震災から1年

詩人の長田弘さんは「もう一度ゆきたい場所」という文章(詩文集=詩的エッセー・人生の特別な一瞬)を書いている。その文章の冒頭で「かなわないと知っている。けれども、もう一度ゆきたい場所は、もう二度とゆくことのできない場所だ」と記し、続いてその…

940 津波~仮設に住宅に暮らして ある高齢者の1年

3月に入って、被災地を歩いた。宮城県東松島市で仮設住宅に暮らす一人の高齢者から話を聞いた。それは、絶望と希望という言葉に象徴される話だった。大津波に自宅が襲われ、長年連れ添った妻を亡くした宮城県東松島市の武田政夫さん(76)だ。 武田さんの…

940 津波、そして仮設に住宅に暮らして ある高齢者の1年

3月に入って、被災地を歩いた。宮城県東松島市で仮設住宅に暮らす一人の高齢者から話を聞いた。それは、絶望と希望という言葉に象徴される話だった。大津波に自宅が襲われ、長年連れ添った妻を亡くした宮城県東松島市の武田政夫さん(76)だ。武田さんの…

938 「遠い『やまびこ』」とともに 厳寒続く被災地を歩く

3月に入っても寒い日が続いている中、東日本大震災の被災地を歩いた。福島県田村市と宮城県東松島市。前者は原発事故で避難生活を送っていた障害者が暮らす共同住宅(仮設ではない)が完成し、その落成式に参加した。 後者は震災以来、被災者たちの心の相談…

933 厳寒・凍結の北上川 芭蕉が歩いた一関街道

石巻市から登米市に車で行った。一関街道(国道45号~342号=宮城県石巻市から登米市を経て岩手県一関市に至るルート)を北へ向かう。道の左側には、北上川がある。本当は「流れている」と書くべきところなのだが、川は凍結し、スケートリンクのような…

933 厳寒・凍結の北上川 芭蕉が歩いた一関街道

石巻市から登米市に車で行った。一関街道(国道45号~342号=宮城県石巻市から登米市を経て岩手県一関市に至るルート)を北へ向かう。道の左側には、北上川がある。本当は「流れている」と書くべきところなのだが、川は凍結し、スケートリンクのような…

926 言葉の海に生きる 震災を語る2冊の本

東日本大震災を書いた2人の芥川賞作家の本を読んだ。順に書くと玄侑宗久の「福島に生きる」と辺見庸の「瓦礫の中から言葉を」だ。 玄侑は文字通り福島に生まれ、いまも福島の三春で生活をしている。 後者の辺見は同じ被災地でも、津波の被害が最大だった宮…

926 言葉の海に生きる 震災を語る2冊の本

東日本大震災を書いた2人の芥川賞作家の本を読んだ。順に書くと玄侑宗久の「福島に生きる」と辺見庸の「瓦礫の中から言葉を」だ。 玄侑は文字通り福島に生まれ、いまも福島の三春で生活をしている。後者の辺見は同じ被災地でも、津波の被害が最大だった宮城…

924 1%のひらめきと99%の努力 卓球・福原の初優勝に驚く

いまあるかどうかは分からないが、かつて会社の保養所や温泉旅館には娯楽施設として卓球台があった。下手なもの同士がのんびりと小さなボールを返し合う。「ピンポン」という言葉を聞くと、そうした光景を連想する。そのピンポンを日本語では卓球という。テ…

923 震災の不条理訴える2枚の写真 高倉健さんが持ち歩く宝物とは

80歳になった高倉健さんが6年ぶりに出演する映画が8月に公開されるという。撮影中、高倉さんは台本に東日本大震災直後に撮影された1枚の少年の写真を貼り付けて持ち歩いていると新聞に出ていた。 その写真を見ると「ギュッと気合が入る」のだそうだ。 …

923 震災の不条理訴える2枚の写真 高倉健さんが持ち歩く宝物とは

80歳になった高倉健さんが6年ぶりに出演する映画が8月に公開されるという。撮影中、高倉さんは台本に東日本大震災直後に撮影された1枚の少年の写真を貼り付けて持ち歩いていると新聞に出ていた。 その写真を見ると「ギュッと気合が入る」のだそうだ。東…

922 あの日あの時私は何をしていたか 阪神淡路大震災から17年

きょうで阪神淡路大震災(1995年1月17日)から17年になった。長い歳月が流れたにもかかわらず、あの日のことはよく覚えている。人は自分の生涯で「忘れることができない」幾日かを持っている。喜びと悲しみの個人史であり、昨年の3月11日は現代…

922 あの日あの時私は何をしていたか 阪神淡路大震災から17年

きょうで阪神淡路大震災(1995年1月17日)から17年になった。長い歳月が流れたにもかかわらず、あの日のことはよく覚えている。人は自分の生涯で「忘れることができない」幾日かを持っている。喜びと悲しみの個人史であり、昨年の3月11日は現代…

917 2人の大家意識した社会派小説 伊集院静初の推理小説・星月夜

新年早々に読んだ本は、伊集院静の推理小説「星月夜」(文藝春秋)だった。書店に行くと東野圭吾や道尾秀介、京極夏彦ら推理小説の部類に入る本が店頭を大きく飾っている。 書店の店員の投票で選ばれる「本屋大賞」(2004年からスタート)の2011年大…

916 故郷を思う天才ランナーの言葉 激走のあとの柏原選手

「僕が苦しいのは1時間ちょっとです。福島の人たちに比べたらきつくないです」。東京箱根往復駅伝、往路5区(23・4キロ)をトップで走り切った東洋大学の山登りの天才・柏原竜二は、走り終えた後、インタビューでこう答えた。 東日本大震災と原発事故に…

913 2011年の旅模様 「辛苦了」の1年

東日本大震災という歴史的災害に見舞われた2011年も残すところ1週間になった。人それぞれこの年について思いはあるだろう。私は実に20回の旅をし、その半分近くが被災地訪問だった。漢字一文字で表現すれば、私にとっての2011年は「辛」という字…

912 太陽の戯れに出会った友人 元荒川の幻日現象

「幻日」(げんじつ)という現象があることは知っていた。しかし、それを自分の目で見たことはない。埼玉に住む友人がこの現象を見て、カメラに収めた。友人自身も興奮したという幻日。東日本大震災という歴史的大災害とともに、2011年の象徴的出来事と…

911 命はいつか尽きるのだが… 高田の一本松・わが家の五葉松に思う

先日、岩手県陸前高田市の高田松原の「奇跡の一本松」が海水などの浸食で根が損傷してしまったため、保存を断念するというニュースが流れた。東日本大震災の復興のシンボルといわれただけに残念でならない。 動植物を問わず命はいずれ尽きるものだから、仕方…

911 命はいつか尽きるのだが… 高田の一本松・わが家の五葉松に思う

先日、岩手県陸前高田市の高田松原の「奇跡の一本松」が海水などの浸食で根が損傷してしまったため、保存を断念するというニュースが流れた。東日本大震災の復興のシンボルといわれただけに残念でならない。動植物を問わず命はいずれ尽きるものだから、仕方…

909 大震災で示された子どもたちの潜在力 負のイメージ払拭を

現代の子どもたちは無気力で、夢がない…。こんな見方が根強い。最近、福岡のNPOが発行した「ふくおか子ども白書」を見た。その中のアンケート(1600人の小中高生が対象)は、そんなイメージを裏付ける結果だった。 「疲れやすい」「学校に行き気がしない…

909 大震災で示された子どもたちの潜在力  マイナスイメージの払拭を

現代の子どもたちは無気力で、夢がない…。こんな見方が根強い。最近、福岡のNPOが発行した「ふくおか子ども白書」を見た。その中のアンケート(1600人の小中高生が対象)は、そんなイメージを裏付ける結果だった。 「疲れやすい」「学校に行き気がしない…

908 2011年の暮れに思う 震災の「東日本よ」

今年も1年を回顧する時期になった。3月11日の東日本大震災を置いて、語るべき言葉はない。以下は「東日本よ」をキーワードに書いた震災被災地・被災者への私の思いである。 ひ 「悲劇」が日本列島を襲った。マグニチュード9.0という巨大地震。それに続く…

908 2011年の暮れに思う 震災の「東日本よ」

今年も1年を回顧する時期になった。3月11日の東日本大震災を置いて、語るべき言葉はない。以下は「東日本よ」をキーワードに書いた震災被災地・被災者への私の思いである。 ひ 「悲劇」が日本列島を襲った。マグニチュード9.0という巨大地震。それに続く…

907 東日本大震災と文学・詩 比喩が成り立たない

「震災以後、なかなか詩が書けない」と、新聞記者で詩人の秋山公哉さんが詩誌「薇」5号で書いている。「薇」は昨年亡くなった飯島正治さんが主宰していた同人誌で、飯島さん亡き後も発行されている。今回は、東日本大震災に触れた秋山さんらの詩も載ってい…

907 東日本大震災と文学・詩 比喩が成り立たない

「震災以後、なかなか詩が書けない」と、新聞記者で詩人の秋山公哉さんが詩誌「薇」5号で書いている。「薇」は昨年亡くなった飯島正治さんが主宰していた同人誌で、飯島さん亡き後も発行されている。今回は、東日本大震災に触れた秋山さんらの詩も載ってい…

906 朝の散歩の風景 風評被害を助長した行政の怠慢

毎朝、犬の散歩をするのが日課になっている。震災後、変わった服装の人を見かけるようになった。年格好は64、5歳の男性が白い上下のトレーニングウエア(長袖、長ズボン)に白い靴、白い登山帽、サングラス、白いマスク姿で散歩をしているのだ。 真夏の暑…