小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

924 1%のひらめきと99%の努力 卓球・福原の初優勝に驚く

いまあるかどうかは分からないが、かつて会社の保養所や温泉旅館には娯楽施設として卓球台があった。下手なもの同士がのんびりと小さなボールを返し合う。「ピンポン」という言葉を聞くと、そうした光景を連想する。そのピンポンを日本語では卓球という。テーブルを使って、テニスと同じようなゲームをするので「テーブルテニス」―「卓球」と名付けたのだそうだ。卓球の全日本選手権をテレビで見た。福原愛選手(23)が優勝したが、初優勝と聞いて驚いた。

福原は幼いころから卓球の天才少女といわれ、特にテレビメディアに追いかけられ続けた。中国にも渡り、実力も次第についた。これまでのテレビの騒ぎっぷりからみて10代でとうに日本チャンピオンになっていたと錯覚していた。だが、ベスト4が過去最高で、決勝進出、優勝とも今回が初めてだという。決勝の相手だった石川佳純(18)の方は、昨年高校生ながら全日本で優勝しているので、福原は石川にもう勝てないのではないかと言われていたようだ。

たまたま準決勝の実力者、平野早矢香の試合から見たのだが、福原の積極戦法は平野を圧倒し(4―0)、石川も叩きのめした(4―1)。解説者は「福原のバックハンドがいい」といっていたが、たしかに気持ちがいいくらいにいいボールが返り、相手はついていけない。

「かつての天才、いまはただの人」という言葉がある。子どものころ、天才と思われるほどの才能がありながら大人になると伸び悩み、普通の人と何ら変わりがないという人は世間には少なくない。一方で「大器晩成」という大人物は時間をかけて実力を養い、遅くなって大成するという意味の言葉もある。

福原は、一時ただの人になりつつあったのかもしれない。だが、そうした限界を乗り越えて大器晩成ぶりを見せてくれた。

明王エジソンが「天才とは1%の霊感(ひらめき)と99%の努力なり」という名言を残した。天才でも才能を開花させるには生まれつきの才能が占める部分は1パーセントで、あとの99パーセントは努力が必要なのだと解釈されている。福原の初優勝の原動力も、たゆまぬ練習、卓球ゲームの研究という99パーセントの努力だったのではないだろうか。

福原は、東日本大震災の被災地である仙台の出身だ。独断だが、福原の顔は洗練された石川と比べると純朴な東北の顔といっていい。福原の顔がほころんだのを見ることができたのは、満更でもなかった。