小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

933 厳寒・凍結の北上川 芭蕉が歩いた一関街道

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 石巻市から登米市に車で行った。一関街道(国道45号~342号=宮城県石巻市から登米市を経て岩手県一関市に至るルート)を北へ向かう。道の左側には、北上川がある。本当は「流れている」と書くべきところなのだが、川は凍結し、スケートリンクのような状態になっている。

 ニュースでは最低気温が氷点下10度以下を記録したというから、川が凍ってもおかしくはない。それにしてもこんな風景を見たのは何年ぶりか。大寒波を実感する。 この街道は、かつて芭蕉が平泉を目指して歩いた。芭蕉は仙台から奥州街道を外れ、塩釜、松島、石巻へと足を進め、この街道に入り、一関を目指した。1689年(元禄2年)5月のことである。

 322年後、この周辺地域は巨大地震津波のため、様相が大きく変わってしまった。 北上川岩手県から宮城県を流れる長さ249キロの東北最大、国内4番目に長い川だ。洪水防止のため登米市で2つに分かれ、一つは石巻市追波湾に流れる新北上川で、旧北上川は昔からの流れである石巻湾へと注いでいるのだ。

 3月11日、津波追波湾から新北上川(本流)を50キロ先まで遡ったことが東北大の調査で判明しており、大震災の津波がいかにすさまじかったか想像できる。 私が凍結した川面を見たのは本流の方で、石巻市桃生町の山間部である。

 登米市に入ると、氷は次第に解け、青い水が見えるようになった。芭蕉はこの川の色を見ながら歩いたのだろう。写真を撮るため短時間だけ外に出たが、風が冷たく手がかじかんだ。

 一方、記録的な寒波に見舞われているヨーロッパでは、交通の大動脈であるドナウ川が広い範囲で凍結して船舶の航行ができなくなったというニュースが流れた。 NHKによると、クロアチアルーマニアなど沿岸の少なくとも4か国は、水面の90パーセントが氷で覆われて危険だとして船舶の航行が禁止され、クロアチア北東部では10日に凍結した川で穀物を積んだ貨物船が立往生し、砕氷船が出動して乗組員が救助されたそうだ。

 氷点下30度近くまで気温が下がったルーマニアでは場所によって氷の厚さが20センチにも達したという。 地球は温暖化しているといわれる。その反面でこの冬のように大寒波が来ることも少なくない。氷に覆われた北上川を見て、自然界は人知では推し量ることができないことを実感する。

 凍結する川といえば、かつてスンガリ川と呼ばれた中国東北部にある松花江が有名だ。ことしも当然のように凍結し、ハルビンでは市民が散策を楽しんでいるそうだ。凍結した北上川には人の姿はなかった。