小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

2008-01-01から1年間の記事一覧

360 透明な季節の中で 不透明な日本社会

空気は乾き透明感の強い一日、少し足を延ばして郊外を歩くと、木々の葉が赤や黄色に色づき、つい見とれて足を止めたくなった。家に帰ると、目の前にあるけやき並木からは、強い風にあおられた葉が次々に飛んできて、狭い庭は落ち葉で一杯になっている。 空は…

360 透明な季節の中で 不透明な日本社会

空気は乾き透明感の強い一日、少し足を延ばして郊外を歩くと、木々の葉が赤や黄色に色づき、つい見とれて足を止めたくなった。家に帰ると、目の前にあるけやき並木からは、強い風にあおられた葉が次々に飛んできて、狭い庭は落ち葉で一杯になっている。 空は…

359 不思議な村上春樹の世界 ありそうでなさそうな「東京奇譚集」

ノンフィクションの沢木耕太郎と純文学の村上春樹を比較するのは、両者に失礼かもしれない。年代的には2人とも団塊の世代(沢木1947年11月29日生まれ、村上1949年1月12日生まれ)である。 デビューは沢木の方が早い。ノンフィクションとフィクションの違いは…

359 不思議な村上春樹の世界 ありそうでなさそうな「東京奇譚集」

ノンフィクションの沢木耕太郎と純文学の村上春樹を比較するのは、両者に失礼かもしれない。年代的には2人とも団塊の世代(沢木1947年11月29日生まれ、村上1949年1月12日生まれ)である。 デビューは沢木の方が早い。ノンフィクションとフィクションの違いは…

358 80日間世界一周 新幹線で読むヴェルヌ

神戸に行ってきた。六甲や郊外は紅葉の季節を迎え、六甲に向かう中高年ハイカーの姿をあちこちで見かけた。行き帰りとも新幹線ののぞみに乗った。往復約6時間余を読書の時間に当てた。 今回の旅の友は古い小説、フランスのジュール・ヴェルヌの「80日間世界…

358 80日間世界一周 新幹線で読むヴェルヌ

神戸に行ってきた。六甲や郊外は紅葉の季節を迎え、六甲に向かう中高年ハイカーの姿をあちこちで見かけた。行き帰りとも新幹線ののぞみに乗った。往復約6時間余を読書の時間に当てた。 今回の旅の友は古い小説、フランスのジュール・ヴェルヌの「80日間世界…

357 けなげな子どもたち 小児がん患者の絵画展で涙

千葉の幕張メッセで14日から始まった小児がん学会の会場一角で「命の輝き」を訴える絵画展が開かれた。 「財団法人 がんの子供を守る会」が10年前から毎年実施しているささやかな展覧会だ。この展覧会をのぞいて、あるポスターの前でくぎ付けになり、涙を…

357 けなげな子どもたち 小児がん患者の絵画展で涙

千葉の幕張メッセで14日から始まった小児がん学会の会場一角で「命の輝き」を訴える絵画展が開かれた。 「財団法人 がんの子供を守る会」が10年前から毎年実施しているささやかな展覧会だ。この展覧会をのぞいて、あるポスターの前でくぎ付けになり、涙を…

356 難しい言葉の遣い方 想像力の乏しい人々

井戸敏三兵庫県知事が関西経済活性化をテーマにした近畿ブロック知事会議で「関東大震災が起きれば相当ダメージを受けるからチャンス。チャンスを生かさないといけない」と、語った-というニュースは、震災で大きな被害を受けた人々もあきれたに違いない。 …

356 難しい言葉の遣い方 想像力の乏しい人々

井戸敏三兵庫県知事が関西経済活性化をテーマにした近畿ブロック知事会議で「関東大震災が起きれば相当ダメージを受けるからチャンス。チャンスを生かさないといけない」と、語った-というニュースは、震災で大きな被害を受けた人々もあきれたに違いない。…

355 時間の過ごし方 3本の映画から

映画ファンには増えつつあるシネマコンプレックス(シネコン)、あるいはマルチプレックスシネマ(英語表記:Multiplex Cinemas)と呼ばれる形式の映画館はうれしい存在だろう。同一施設に複数のスクリーンがある映画館のことである。こうした映画館に足を運…

355 時間の過ごし方 3本の映画から

映画ファンには増えつつあるシネマコンプレックス(シネコン)、あるいはマルチプレックスシネマ(英語表記:Multiplex Cinemas)と呼ばれる形式の映画館はうれしい存在だろう。同一施設に複数のスクリーンがある映画館のことである。こうした映画館に足を運…

354 詩的な旅エッセー 伊集院静「旅行鞄にはなびら」

風邪が長引き、一日中横になっている。そんな時に手に取ったのがこの本だ。ヨーロッパを中心に、花を求め絵画を鑑賞する旅をテーマにした伊集院静のエッセー集「旅行鞄にはなびら」だ。 短い25本のエッセーはどれもが詩的であり、随所で小説家の鋭い観察力…

354 詩的な旅エッセー 伊集院静「旅行鞄にはなびら」

風邪が長引き、一日中横になっている。そんな時に手に取ったのがこの本だ。ヨーロッパを中心に、花を求め絵画を鑑賞する旅をテーマにした伊集院静のエッセー集「旅行鞄にはなびら」だ。 短い25本のエッセーはどれもが詩的であり、随所で小説家の鋭い観察力…

353 オバマ氏家族が飼う犬は? 米国らしい会見

米国の次の大統領に決まった民主党のバラク・オバマ氏が記者会見した。この中で最初の話題はもちろん、経済問題だった。この後に出た質問の7番目はオバマ氏家族がホワイトハウスで飼う犬についてだった。 日本の首相会見では考えられない話題である。先日も…

353 オバマ氏家族が飼う犬は? 米国らしい会見

米国の次の大統領に決まった民主党のバラク・オバマ氏が記者会見した。この中で最初の話題はもちろん、経済問題だった。この後に出た質問の7番目はオバマ氏家族がホワイトハウスで飼う犬についてだった。日本の首相会見では考えられない話題である。先日も…

352 人はなぜ山へ登るのか 沢木耕太郎「凍」を読む

私は登山とは縁がない。山への気持ちは、田中冬二の「山への思慕」という詩程度のものだ。 しずかな冬の日 私はひとり日向の縁側で 遠い山に向かってゐる 山は父のやうにきびしく正しく また母のやうにやさしい 山をじっと見つめてゐると 何か泪ぐましいもの…

352 人はなぜ山へ登るのか 沢木耕太郎「凍」を読む

私は登山とは縁がない。山への気持ちは、田中冬二の「山への思慕」という詩程度のものだ。 しずかな冬の日 私はひとり日向の縁側で 遠い山に向かってゐる 山は父のやうにきびしく正しく また母のやうにやさしい 山をじっと見つめてゐると 何か泪ぐましいもの…

351 栄枯盛衰 人間の浮き沈み

11月になり街路樹が色づき、散歩が楽しくなった。今朝も遊歩道で犬の散歩をしていると、中年の外国人(欧米系)女性4人を連れて散歩する老人夫妻の姿があった。 会社勤務当時、外国に駐在し、そこで知り合った女性たちを招待して、日本の朝を一緒に楽しんで…

351 栄枯盛衰 人間の浮き沈み

11月になり街路樹が色づき、散歩が楽しくなった。今朝も遊歩道で犬の散歩をしていると、中年の外国人(欧米系)女性4人を連れて散歩する老人夫妻の姿があった。 会社勤務当時、外国に駐在し、そこで知り合った女性たちを招待して、日本の朝を一緒に楽しんで…

350 オバマ氏は新幹線 米国大統領選候補者たちを乗り物で風刺

米大統領選で、一般の有権者が投票する11月4日が間近に迫ってきた。既に不在者投票をしたという知人(米国人)が面白い写真を見せてくれた。 大統領、副大統領候補の4人について、知人の親族が子どもに説明するのに作ったという。この乗り物を利用した写…

350 オバマ氏は新幹線 米国大統領選候補者たちを乗り物で風刺

米大統領選で、一般の有権者が投票する11月4日が間近に迫ってきた。既に不在者投票をしたという知人(米国人)が面白い写真を見せてくれた。 大統領、副大統領候補の4人について、知人の親族が子どもに説明するのに作ったという。この乗り物を利用した写…

349 繰り返す歴史 塩野七生「ローマから日本が見える」

小さな都市国家だったローマがいつしかヨーロッパを席捲する巨大帝国になり、長い間ヨーロッパの支配を続ける。その歴史を塩野七生は「ローマ人の物語」(全15巻)としてまとめる。その蓄積を背景に古代ローマの攻防の歴史を振り返り、現代日本に対する塩野の…

349 繰り返す歴史 塩野七生「ローマから日本が見える」

小さな都市国家だったローマがいつしかヨーロッパを席捲する巨大帝国になり、長い間ヨーロッパの支配を続ける。その歴史を塩野七生は「ローマ人の物語」(全15巻)としてまとめる。その蓄積を背景に古代ローマの攻防の歴史を振り返り、現代日本に対する塩野の…

348 中国の旅(3)完 大連にて

「大連の3つの多い、3つの少ないは何か」。かつて中国といえば、自転車という印象があった。朝夕、通勤、通学の人たちの自転車で主要道路は埋め尽くされる。しかし、大連ではその光景はなかった。(写真は中山広場から見た大連賓館) 大連は「中国国内でも自…

348 中国の旅(3)完 大連にて

「大連の3つの多い、3つの少ないは何か」。かつて中国といえば、自転車という印象があった。朝夕、通勤、通学の人たちの自転車で主要道路は埋め尽くされる。しかし、大連ではその光景はなかった。(写真は中山広場から見た大連賓館) 大連は「中国国内でも自…

347 エリザベート ハプスブルク家最後の皇女の波乱の生涯

「激動の歴史」という言葉が頭に浮かんだ。塚本哲也の「エリザベート」を読み終えたのは、中国・上海に向かう飛行機の中だった。これから行く中国とエリザベートが生きた中欧は、第二次大戦後、「社会主義」というイデオロギーに翻弄された共通の歴史がある…

347 エリザベート ハプスブルク家最後の皇女の波乱の生涯

「激動の歴史」という言葉が頭に浮かんだ。塚本哲也の「エリザベート」を読み終えたのは、中国・上海に向かう飛行機の中だった。これから行く中国とエリザベートが生きた中欧は、第二次大戦後、「社会主義」というイデオロギーに翻弄された共通の歴史がある…

346 中国の旅(2)幻のアカシアの大連

「アカシアの大連」は昔の話だった。中国への旅は香港を含めると4回目になる。このうち揚州に続いて訪れた大連は3回目だった。その変わりようには驚いた。 揚州から大連へは、そう時間はかからない。車で1時間半かけて南京空港に行き、飛行機で大連までさら…

346 中国の旅(2)幻のアカシアの大連

「アカシアの大連」は昔の話だった。中国への旅は香港を含めると4回目になる。このうち揚州に続いて訪れた大連は3回目だった。その変わりようには驚いた。 揚州から大連へは、そう時間はかからない。車で1時間半かけて南京空港に行き、飛行機で大連までさら…