小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

351 栄枯盛衰 人間の浮き沈み

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 11月になり街路樹が色づき、散歩が楽しくなった。今朝も遊歩道で犬の散歩をしていると、中年の外国人(欧米系)女性4人を連れて散歩する老人夫妻の姿があった。 会社勤務当時、外国に駐在し、そこで知り合った女性たちを招待して、日本の朝を一緒に楽しんでいるのだろうと想像した。そんな雰囲気の集団だった。

 老夫妻は幸せな老後を送っていると思った。そうした庶民とは違う世界に住む人たちもいる。最近2人の有名人の動きを見て栄枯盛衰という言葉を思い浮かべ、人間の浮き沈みを感じた。

 1人目は、先日のプロゴルフツアーで初優勝した17歳の石川遼選手である。天才であることは間違いがない。17歳という年齢、顔立ちや細身の体から発する爽やかなイメージから人気が先行したが、このところ急速に実力をつけて、深堀という練達のプレーヤーを相手に逆転で優勝してしまったのだから、だれも文句をつけようがない。

 心配なのは、若すぎることゆえに、周囲が妬んで開花途中のつぼみをつむようなことをしないかということだ。「子どものころは神童といわれながら、成長するとただの人」になってしまう場合が少なくない。スポーツという実力の世界は、運、不運もあるが、本人のたゆみのない努力こそが大選手へと成長する基本である。石川は慢心したら、諌めてほしいという趣旨のことを周囲に話していると言う。そうした謙虚さがあれば、まだまだ強くなるはずだ。

 もう1人は、新聞、テレビで話題の音楽プロデューサー小室哲哉である。かつては、人気歌手、作詞作曲家として高額納税者にもランクされた彼が5億円の詐欺事件の容疑者なのだという。「転落への軌跡」というコメントをつけて彼を紹介するテレビ番組もあった。たぶん、小室も音楽面の天才なのだろう。しかし、活動の幅を広げた結果、人間としての道を踏み誤ってしまったのだろうか。

 秋はものを考える季節でもある。2人の生き方だけでなく、日々の新聞には、人生を考えるうえで教訓の数々が掲載されている。政府見解に反する論文を発表し、更迭された田母神(たもがみ)俊雄・前航空幕僚長とプロの総合格闘技へ転向することを表明した柔道の石井慧(さとし)選手の話題も考えることが多かった。

 言論人であるはずの渡辺恒雄読売新聞グループ会長・主筆旭日大綬章をもらったというニュースにも違和感を持った。石田礼助国鉄総裁、中山素平元興銀会長、伊東正義元外相らは叙勲を断ったことで知られる。渡辺氏が同じ行動をとれば、彼への評価は変わったはずだと思った。