357 けなげな子どもたち 小児がん患者の絵画展で涙
千葉の幕張メッセで14日から始まった小児がん学会の会場一角で「命の輝き」を訴える絵画展が開かれた。
「財団法人 がんの子供を守る会」が10年前から毎年実施しているささやかな展覧会だ。この展覧会をのぞいて、あるポスターの前でくぎ付けになり、涙を隠すのに苦労した。急性白血病のため8歳で亡くなった静岡県伊東市の石川福美さんの作品だ。
福美さんはたった一人で医師から小児がんの告知を受けた。入院して苦しい治療の間、家に帰りたいと叫び続けた。小康状態になり、4人部屋に入った彼女は、同じようにがんと闘う幼い友達を得る。そして、精神的に大人になった彼女は悩み事を抱えた人たちの相談を受けることを思い立つ。悩み事を受け付けることを知らせるポスターが今回展示された。
(ポスターは大部分平仮名だが、読みやすくするため漢字も入れて再現する)
石川ふくみそうだん会 皆さん悩みってどこで作るのでしょう。知ってますか、それは心と気持ち!たった二つの見えないものがそんないやなものを作ってしまうのです。時によってうれしい幸せを運ぶことも、どんな悩みがあっても隠さずに言ってください。悩みを1つ抱えると、10個、20個、悩みが増えますよ。人生一つ、命一つ、悩みや困ったことを抱えて生きるのはもったいない。せっかくもらった命だから、楽しく、悩みや困ったことのない人生に。
これが8歳の少女が書いた文章だ。素晴らしいではないか。当然、彼女の元には、相談者が押しかける。相談は秘密ということで、両親は直接彼女から相談の内容は聞いていない。しかし相談者の方から、勇気をもらったと打ち明けられる。
……………………………………………………………
小児がんの子供の母親の相談。「お金が貯まらなくて困っているの」―答え「バスに乗ったつもりで歩き、つもり貯金をしましょう」
がん病棟の医師の相談。「仕事が忙しくて困っています」―答え「高い給料をもらっているのだから、忙しくて当たり前。文句を言うな」
同じく看護師の相談。「犬が夜吠えてうるさくて困っています」―答え「昼間ずうっと運動させて絶対に休ませなければ、夜は疲れて眠るから吠えません」
……………………………………………………………
福美さんには、同室で3歳下の桜ちゃんという友だちがいた。福美さんが病気との闘いの末、無菌室に入る際、桜ちゃんは、「ふくちゃんおうえんしてるよ」という絵を描いた。この絵は、絵画展で福美さんのポスターの隣に展示されている。
桜ちゃんも福美さんの後を追うように亡くなった。桜ちゃんの絵の解説には、「闘病している子供たちは、決して頑張ってという言葉は使わない。それはみんなが精一杯頑張っていることを知っているからです。頑張ってという言葉は優しいようで、時には厳しい言葉であることをちゃんと分かっているのです。だから、桜も応援しているよというポスターを作ったのだと思います。きっといまは、この絵のようにきれいなお花畑の中で、ふくちゃんと桜はその小さな手をつなぎ笑顔で自由に走り回っていることと思います」と書いてあった。
この展示会は16日まで開催中だ。展示された作品は全部で41点、このうち海外のドイツ、オランダなど5カ国の子供たちの作品10点も含まれている。