小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

音楽

611 復活した校歌の物語(3) 見つかった山本さんの孫

福島県立図書館所蔵の近代音楽年鑑(昭和17年版)には、山本正夫の住所として東京都板橋区上坂6-50-2とあり、「帝都学園女学校校長」と記されている。 これを頼りに、宍戸さんの調査に協力している矢祭町教育委員会の片野宗和委員長が、山本の孫の晴美…

609 復活した校歌の物語(2)  戦後になぞの空白期間

東舘小学校は、戦後十数年校歌が歌われない時期があったという。当時の在校生に聞くと、その通りで校歌の代わりに、郡全体の体育祭(南部8校対抗戦)のときに歌う「応援歌」を入学式や卒業式などの行事の際に合唱した記憶があると、口をそろえて言う。 なぜ…

608 復活した校歌の物語(1) 執念の校長の調査

童謡の「夕焼け小焼け」は、郷愁を誘う歌だ。作詞をしたのは中村雨紅という東京の教師であり、作詞家だった。彼は日本でも有数の作詞家、野口雨情に憧れ、その一字をもらい「雨情」に染まるという意味を込めて「雨紅」というペンネームをつけたという。 その…

572 ポプラのように 09年旅の終わりに

先日、「傘の自由化は可能か」という、大崎善生の一風変わったエッセー集を読みながら、九州の西端、枕崎から鹿児島中央まで約2時間45分、JR指宿枕崎線のロ-カル列車の旅をした。 大崎は日本将棋連盟発行の将棋雑誌の編集者を経て作家になった。札幌出…

546 知床旅情とともに 森繁久弥さんの死

札幌で生活をしたことがある。最初が1990年初めの1年半で、次が10年後の2000年代初めの2年間だ。合わせても3年半という短い期間だが「第二の故郷」と自称するほど北海道が好きになった。 北海道を離れる人と一緒に同僚たちが肩を組みながら「知…

509 歌の風景 『少年時代』の風あざみ

秋到来を感じる8月の末日だ。先日、歌手の井上陽水を取り上げたテレビ番組を見た。その中で『少年時代』という歌が代表作の一つだと井上自身も語っていた。その詩の中に味わい深い造語があることを知った。「風あざみ」である。 この歌は一番の歌詞に「夏が…

509 歌の風景 少年時代の風あざみ

秋到来を感じる8月の末日だ。先日、井上陽水を取り上げたテレビ番組を見た。その中で「少年時代」という歌が代表作の一つだと井上自身も語っていた。その詩の中に、実在しない植物が書かれているのを知った。 「風あざみ」だ。この歌は「夏が過ぎ 風あざみ …

507 夜想曲集(音楽と夕暮れをめぐる5つの物語) カズオ・イシグロの世界

カズオ・イシグロは、独特の感性を持った作家だ。イシグロといえば人生の黄昏を描いた「日の名残り」の印象が強かった。そうしたカテゴリーだけでなく音楽を共通の背景にした5つの短編からは人生の襞といおうか、あるいは陰影を感じ取り、考えることが多か…

504 肝高の阿麻和利・東京公演  ありがとう沖縄の子ら

「沖縄の子どもたちよ、ありがとう」。正直なところ、こう思った。8月19日夜、東京・新宿の厚生年金ホールで行われた現代版組踊「肝高(きむたか)の阿麻和利(あまわり)」の舞台を見る機会があり、そのすさまじいばかりのエネルギーに圧倒され、こんな…

504 肝高の阿麻和利・東京公演  ありがとう沖縄の子ら

「沖縄の子どもたちよ、ありがとう」。正直なところ、こう思った。8月19日夜、東京・新宿の厚生年金ホールで行われた現代版組踊「肝高の阿痲和利」の舞台を見る機会があり、そのすさまじいばかりのエネルギーに圧倒され、こんな感想を持った。 この舞台に…

473 弦楽セレナードの街 折に触れて聴くチャイコフスキー

CDで聴くのは圧倒的にモーツアルトだ。基本的に外れがなく、心がどんな状態のときにも合うだけの曲がそろっている。でも最近はなぜか、チャイコフスキーの「弦楽のためのセレナード ハ長調、作品48」を聴くことが多い。 CDの解説によると、チャイコフスキ…

473 弦楽セレナードの街 折に触れて聴くチャイコフスキー

CDで聴くのは圧倒的にモーツアルトだ。基本的に外れがなく、心がどんな状態のときにも合うだけの曲がそろっている。でも最近はなぜか、チャイコフスキーの「弦楽のためのセレナード ハ長調、作品48」を聴くことが多い。 CDの解説によると、チャイコフスキ…

458 庄司紗矢香さんの世界 一芸に秀でれば

ピアノの天才のことを昨日書いた。辻井伸行さんのことだ。日本にはピアノだけでなく、ヴァイオリンでも天才がいるのは多くの人が知っている。 16歳のときパガニーニ国際ヴァイオリンコンクールで優勝した庄司紗矢香さんだ。史上最年少だった。その庄司さん…

458 庄司紗矢香さんの世界 一芸に秀でれば

ピアノの天才のことを昨日書いた。辻井伸行さんのことだ。日本にはピアノだけでなく、ヴァイオリンでも天才がいるのは多くの人が知っている。 16歳のときパガニーニ国際ヴァイオリンコンクールで優勝した庄司紗矢香さんだ。史上最年少だった。その庄司さん…

457 真っ白いピアノ演奏 辻井伸行さんの偉業

芸術の世界で頂点を極めることは、並大抵ではできない。たぶんに持って生まれた才能に大きく左右される。その豊かな才能の持ち主を天才ともいう。米国のバン・クライバーン国際ピアノコンクールで優勝した辻井伸行さん(20)も数少ない天才の一人だ。辻井…

457 真っ白いピアノ演奏 辻井伸行さんの偉業

芸術の世界で頂点を極めることは、並大抵ではできない。たぶんに持って生まれた才能に大きく左右される。その豊かな才能の持ち主を天才ともいう。 米国のバン・クライバーン国際ピアノコンクールで優勝した辻井伸行さん(20)も数少ない天才の一人だ。辻井…

434 スーザン・ボイルさんの歌声 事実は小説より奇なり

いま、イギリスだけでなく、全世界を驚かせているのがスーザン・ボイルさん(47)という女性のユーチューブ映像だろう。わずか7分余りの映像から、映画を見ているような不思議な感動を受けるのだ。「人は見かけによらない」というが、それを立証したのが…

404 若い画家とオペラ歌手家田紀子さん 優雅な時間

詩人の飯島正治さんには、画家になった誠さんという自慢(私の想像だが)の息子がいる。その誠さんが京橋の画廊で「記憶と光彩」という個展を開いた。 2月の終わりの夕方、画廊に向かった。ほっそりとした青年が1人、画廊に立っている。どことなく父親の正…

392 躍動する子どもたち 沖縄の組踊・肝高の阿麻和利

沖縄県うるま市にある「きむたかホール」で、沖縄の伝統芸能「組踊」を現代風にアレンジした「肝高(きむたか)の阿麻和利(あまわり)」の舞台稽古を見る機会があった。 1月20日のブログに書いた平田大一さんが演出しており、平田さんの案内でこの芝居に…

382 英国で最も不快なものはカラオケ 日本のワーストワンは

英国から、面白いニュースが伝わってきた。英国政府が2500人以上の大人を対象に「最も重要と思いつつ、最も不快に感じる発明品」について調査したところ、日本発祥のカラオケが1位になったというのだ。 携帯電話やゲーム機を抑えてトップになった背景は…

336 あるシャンソン演奏会 母校で出前授業

京都に住む友人がある小学校で出前授業をした。彼は京都でシャンソン教室を開いているシャンソン家だ。私たちの母校である小学校の校長先生の依頼で、子どもたちにシャンソンを聞かせたのである。 卒業以来51年ぶりに母校に行き、子どもたちとの濃密な90…

336 あるシャンソン演奏会 母校で出前授業

京都に住む友人がある小学校で出前授業をした。彼は京都でシャンソン教室を開いているシャンソン家だ。私たちの母校である小学校の校長先生の依頼で、子どもたちにシャンソンを聞かせたのである。 卒業以来51年ぶりに母校に行き、子どもたちとの濃密な90…

333 中欧の旅(7)ウィーンの宮殿コンサート

オーストリア・ウィーンは「音楽の都」という代名詞が付く。以前、山田洋次監督、渥美清主演の人気映画「男はつらいよ」シリーズ41作目のウィーン編(竹下景子がマドンナ役)を見たことがあり、このときも音楽会のシーンがあったことを記憶している。 ウィー…

333 中欧の旅(7) ウィーンの宮殿コンサート

オーストリア・ウィーンは「音楽の都」という代名詞が付く。以前、山田洋次監督、渥美清主演の人気映画「男はつらいよ」シリーズ41作目のウィーン編(竹下景子がマドンナ役)を見たことがあり、このときも音楽会のシーンがあったことを記憶している。 ウィー…

300 クラシックとの再会 仕事の合間のコンサート

猛烈に仕事が忙しい時代に、ある交響楽団の定期会員になり、仕事の途中で演奏会に足を運んだ。会場はいつも新宿の厚生年金会館だった。たまに音楽でも聴かないとストレスがたまってしまうと思ったからだ。それが私の場合はクラシックだった。 中学の音楽の授…

300 クラシックとの再会 仕事の合間のコンサート

猛烈に仕事が忙しい時代に、ある交響楽団の定期会員になり、仕事の途中で演奏会に足を運んだ。会場はいつも新宿の厚生年金会館だった。たまに音楽でも聴かないとストレスがたまってしまうと思ったからだ。それが私の場合はクラシックだった。 中学の音楽の授…

289 けやきと映画と本の話 「奇跡のシンフォニー」「30%の幸せ」

最近、涙もろくなった。本を読み、映画を見ては涙ぐむことが多いのだ。アメリカ映画「奇跡のシンフォニー」は、孤児院で育った音楽の天才少年が実の父、母に巡り会うまでの話である。そのストーリーは他愛ないといえばそれまでなのだが、子どもが見ても楽し…

269 息を聴け 熊本盲学校の音楽への挑戦

視覚に障害のある音楽家は少なくない。バイオリニストの和波孝禧と川畠成道は豊かな才能に恵まれ、第一線で活動を続けている。2人の演奏をテレビで聴くと(正確には見たというべきか)ただ感嘆するばかりだ。 しかし、健常者は視覚障害者が音楽に取り組むの…

269 息を聴け 熊本盲学校の音楽への挑戦

視覚に障害のある音楽家は少なくない。バイオリニストの和波孝禧と川畠成道は豊かな才能に恵まれ、第一線で活動を続けている。2人の演奏をテレビで聴くと(正確には見たというべきか)ただ感嘆するばかりだ。 しかし、健常者は視覚障害者が音楽に取り組むの…

241 少年の夢かなえた友人 京都でシャンソンに生きる

駆け足で近江八幡から京都を経由して神戸に行った。京都で途中下車をして、時間があれば、ある友人と会いたいと思った。それはかなわなかった。青くさい少年時代の一時期を共有した友人だ。 人嫌いで、友だちとはあまりうちとけることができない少年時代だっ…