小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

映画

697 映画「トイレット」の世界  もたいまさこの目の演技

見る人に想像力を求める映画だ。「かもめ食堂」の荻上直子監督の新しい作品「トイレット」である。米国(撮影場所はカナダのトロント)の小さな町を舞台に主な出演者は、もたいまさこと3人の孫たちと一匹の猫である。日本の映画だが、セリフはすべて英語で…

643 言葉と向き合う達人たち 詩誌「・薇2」を読む

友人の飯島正治さんが主宰する詩誌「薇(び)2」が届いた。飯島さんら10人の詩人の詩と、「小景」という短文が載っている。 言葉の達人たちの詩と文章を読み返しながら、この人たちはどんな思いで「言葉」と向き合っているのだろうかと考えた。私は酒を飲…

642 郷愁感じる桑の実 口内に広がる甘い香り

犬の散歩コースに調整池を囲む遊歩道がある。その遊歩道の上の斜面には2本の桐の木と、1本の山桑がある。山桑は実が熟する時期らしく、約1センチほどの黒くて小さな実がいっぱいなっている。その実を取ってジャムにしてみた。それは新鮮であり、郷愁を感…

639 どうせなら、夢を求めたい 映画「RAILWAYS」

「夢」という言葉は、3つの意味があると広辞苑にある。「睡眠中に見る幻覚」次に「はかない、頼み難いもののたとえ」、そして「空想的な願望」―である。「将来の夢は」という言葉は3つ目に該当する。 その「夢をかなえる」ことは、現実にはなかなか困難だ…

636 高齢化社会の現実を投影 映画「春との旅」

仲代達也と徳永えりの「春との旅」という映画を見て、高齢化社会の現実の厳しさを思った。近所でも高齢者の1人暮らしが増えている。この映画は、世界でも類例のない超高齢化社会が進行中の日本の話なのである。 元漁師の祖父・忠男(仲代)は学校給食の仕事…

636 高齢化社会の現実を投影 映画「春との旅」

仲代達也と徳永えりの「春との旅」という映画を見て、高齢化社会の現実の厳しさを思った。近所でも高齢者の1人暮らしが増えている。この映画は、世界でも類例のない超高齢化社会が進行中の日本の話なのである。 元漁師の祖父・忠男(仲代)は学校給食の仕事…

629 3Dの世界を初体験  映画「アリス・イン・ワンダーランド」

いわゆる「3D」という立体画面の映画を初めて見た。今年になって「アバター」が日本でも上映され、3Dが流行語になった。この方式のテレビも最近発売になり、眼鏡をかけた立体映像の世界が急速に浸透しつつある。 眼鏡をかけて映画を見るというのは、肌に…

629 3Dの世界を初体験  映画「アリス・イン・ワンダーランド」

いわゆる「3D」という立体画面の映画を初めて見た。今年になって「アバター」が日本でも上映され、3Dが流行語になった。この方式のテレビも最近発売になり、眼鏡をかけた立体映像の世界が急速に浸透しつつある。 眼鏡をかけて映画を見るというのは、肌に…

604 もう一度は? アカデミー賞の「ハート・ロッカー」

もう一度見たい映画や読んでみたいと思う小説がある。では、きょうアカデミー賞の作品賞を受賞したキャスリン・ビグロー監督の「ハート・ロッカー」(行きたくない場所、棺桶を指す)というアメリカ映画はどうか。 「ノー」である。それは、この映画自体がノ…

604 もう一度は? アカデミー賞の「ハート・ロッカー」

もう一度見たい映画や読んでみたいと思う小説がある。では、きょうアカデミー賞の作品賞を受賞したキャスリン・ビグロー監督の「ハート・ロッカー」(行きたくない場所、棺桶を指す)というアメリカ映画はどうか。 「ノー」である。それは、この映画自体がノ…

592 マンデラとラグビーの魅力 映画「インビクタス」

ラグビーといえば、ニュージーランドのオールブラックスを思い浮かべる。その強豪を破って、南アフリカが1995年、第3回ワールドカップの開催国として初優勝したことは、ラグビーファン以外にはあまり知られていない。 「インビクタスー負けざるものたち…

592 マンデラとラグビーの魅力 映画「インビクタス」

ラグビーといえば、ニュージーランドのオールブラックスを思い浮かべる。その強豪を破って、南アフリカが1995年、第3回ワールドカップの開催国として初優勝したことは、ラグビーファン以外にはあまり知られていない。 「インビクタスー負けざるものたち…

588 永遠の日々への手伝い 映画「おとうと」より

山田洋次監督の映画「おとうと」を見た。吉永小百合と笑福亭鶴瓶が姉弟役を演じ、フラガールの蒼井優が吉永の娘役を演じる。「男はつらいよ」の「寅さん」を彷彿とさせる喜劇調の前半から、後半はがらりと変わって死がテーマになる。 吉永が鶴瓶のめちゃくち…

588 永遠の日々への手伝い 映画「おとうと」より

山田洋次監督の映画「おとうと」を見た。吉永小百合と笑福亭鶴瓶が姉弟役を演じ、フラガールの蒼井優が吉永の娘役を演じる。「男はつらいよ」の「寅さん」を彷彿とさせる喜劇調の前半から、後半はがらりと変わって死がテーマになる。 吉永が鶴瓶のめちゃくち…

549 フィクションとノンフィクションの境目は 沈まぬ太陽

フィクションとノンフィクションには、創作と事実という境界がある。しかし日航ジャンボ機が群馬県・御巣鷹山に墜落し、乗員乗客520人が亡くなった事故をモデルにした映画「沈まぬ太陽」は、フィクションとうたいながらもノンフィクションに近い。日航の…

549 フィクションとノンフィクションの境目は 沈まぬ太陽

フィクションとノンフィクションには、創作と事実という境界がある。しかし日航ジャンボ機が群馬県・御巣鷹山に墜落し、乗員乗客520人が亡くなった事故をモデルにした映画「沈まぬ太陽」は、フィクションとうたいながらもノンフィクションに近い。日航の…

548 人間の尊厳を思う 映画「さまよう刃」

広島県北広島町の山中で遺体が見つかった島根県立大1年、平岡都さんの事件は悲惨だ。首が切り落とされ、体も多くの傷があったという。遺族にとっては耐え難い事件である。映画「さまよう刃」を見て、犯罪被害者の苦しみ、悲しみを思った。 昨年9月のブログ…

548 人間の尊厳を思う 映画「さまよう刃」

広島県北広島町の山中で遺体が見つかった島根県立大1年、平岡都さんの事件は悲惨だ。首が切り落とされ、体も多くの傷があったという。遺族にとっては耐え難い事件である。映画「さまよう刃」を見て、犯罪被害者の苦しみ、悲しみを思った。 昨年9月のブログ…

547 夕焼け空 茜雲に思う

北千住駅前だった。彼はあわてて電車に乗り、現場に向かった。駅前の道路わきに息子の車が止まっており、後にはパトカーがいた。ふらふら状態の息子さんは、父親が駆けつけたことを知って、安心したのかようやく話ができるようになった。 「車を運転していて…

477 映画「劔岳 点の記」立山連峰の美しさ・厳しさ

いま、日本では中高年の間に登山ブームが起きている。趣味として山に登り、頂上を極めた達成感と美しい景観を味わおうということだろう。困難な山に挑むいわゆる登山家を別にすれば、山は趣味を楽しむ人々のパートナーになっている。映画「劔岳 点の記」は、…

477 映画「劔岳 点の記」 立山連峰の美しさ・厳しさ

いま、日本では中高年の間に登山ブームが起きている。趣味として山に登り、頂上を極めた達成感と美しい景観を味わおうということだろう。 困難な山に挑むいわゆる登山家を別にすれば、山は趣味を楽しむ人々のパートナーになっている。映画「劔岳 点の記」は…

456 映画「ガマの油」と公園の蛍狩り

名優、役所広司がメガホンを取った映画「ガマの油」を見た。同じ日の夜、近所の公園に蛍狩りに行った。どちらも「郷愁」ということばにつながるものだ。私自身、実際にガマの油売りを見たことはないが、その口上の面白さは子ども時代から知っている。一方蛍…

456 映画「ガマの油」と公園の蛍狩り

名優、役所広司がメガホンを取った映画「ガマの油」を見た。同じ日の夜、近所の公園に蛍狩りに行った。 どちらも「郷愁」ということばにつながるものだ。私自身、実際にガマの油売りを見たことはないが、その口上の面白さは子ども時代から知っている。一方蛍…

442 映画・スラムドッグ$ミリオネア インドの過去と未来と

インドは人口11億9800万人で、中国に次いで世界第2の人口大国である。中国とともに経済発展も著しい。だが、貧富の差は私たち日本人の想像の範囲を超えている。この映画はムンバイという都市の最も貧しいスラムに生まれ育った若者が、テレビのクイズ…

442 映画・スラムドッグ$ミリオネア インドの過去と未来と

インドは人口11億9800万人で、中国に次いで世界第2の人口大国である。中国とともに経済発展も著しい。だが、貧富の差は私たち日本人の想像の範囲を超えている。この映画はムンバイという都市の最も貧しいスラムに生まれ育った若者が、テレビのクイズ…

437 グラン・トリノ 人生最終章の選択

クリント・イーストウッドは1930年5月30日生まれなので、現在78歳。あと1ヵ月で79歳になる。最近のインタビューで、俳優としてはこれが最後の作品で今後は監督業に専念することを示唆したイーストウッドの渋い演技が脳裏に焼きつく映画だった。 …

437 グラン・トリノ 人生最終章の選択

クリント・イーストウッドは1930年5月30日生まれなので、現在78歳。あと1ヵ月で79歳になる。最近のインタビューで、俳優としてはこれが最後の作品で今後は監督業に専念することを示唆したイーストウッドの渋い演技が脳裏に焼きつく映画だった。 …

427 人間の原罪を問う舞台 劇団四季の「ひかりごけ」

劇団四季の「ひかりごけ」の舞台を見た。日下武史らの4人芝居だ。初めから終わりまで暗い内容で、重い気持ちのまま舞台の4人に見入った。 武田泰淳のベストセラー小説を基にした、極限状況下「人の肉を食べてまで生きるべきか」を問うた芝居であり、幕間に…

417 映画「ワルキューレ」 失敗したヒトラー暗殺作戦

映画「ワルキューレ」を見た。1944年7月20日、ドイツ。ヒトラーを暗殺し、独裁政権を倒そうとした歴史的事実に基づいた映画だ。計画は未遂に終わり、中心人物のシュタウフェンベルク大佐(映画ではトム・クルーズが演じた)をはじめ関与した多くの人…

417 映画「ワルキューレ」 失敗したヒトラー暗殺作戦

映画「ワルキューレ」を見た。1944年7月20日、ドイツ。ヒトラーを暗殺し、独裁政権を倒そうとした歴史的事実に基づいた映画だ。計画は未遂に終わり、中心人物のシュタウフェンベルク大佐(映画ではトム・クルーズが演じた)をはじめ関与した多くの人…