小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

442 映画・スラムドッグ$ミリオネア インドの過去と未来と

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 インドは人口11億9800万人で、中国に次いで世界第2の人口大国である。中国とともに経済発展も著しい。だが、貧富の差は私たち日本人の想像の範囲を超えている。この映画はムンバイという都市の最も貧しいスラムに生まれ育った若者が、テレビのクイズ番組で大金を手にするまでのストーリーだ。

 インドの現代史と若者の純愛を巧みに取り入れ、映画の楽しみを存分に味あわせてくれる。アカデミー賞の多くの部門を総なめにしただけのことはある。 クイズ番組は日本でもみのもんたが司会して有名になった。もともと英国のテレビ局が始めた番組だ。

 スラム育ちの無学な青年・マリクは難しい問題を次々にクリアし1000万ルピーを手に入れる。残る1問で全問正解。賞金は2000万ルピー(日本円で4000万円)だ。しかしマリクは最後の問題を残して苦境(どんなことかはここでは秘す)に陥る。

 苦境の中でマリクは、問題を答えた理由を思い出す。それは自分の生い立ちを説明するものだった。クイズは奇跡的だった。問題は彼の生い立ちで印象に残った場面が偶然に出てきたのだ。 幼いころ、スラムが暴徒に襲われて母は亡くなる。マリクは兄と2人で逃げ惑い、1人で逃げる女の子も一緒になる。

 彼女が純愛の相手ラティカだった。兄はギャングの手先になるが、マリクは普通の仕事を選び、そしてふとしたことでクイズに出ることになる。 映像も、音楽も、ストーリーも新鮮だった。インドのすさまじいばかりのエネルギーを感じる。ハンセン病はまだ克服されていないし、エイズ患者も少なくない。それでいて、大きな魅力を持つインド。

 この映画はインドの過去と現代を集大成した歴史に残る作品といっていい。 貧しさに苦しむ青年の辛く悲しい物語だ。だが、マリクは純愛の相手であるラティカと再会し、ハッピーエンドとなる。経済成長を続けるインドを象徴するような映画であり、見ごたえという点では最近の話題作である「レッドクリフⅡ」や「グラン・トリノ」よりも、優れていると思った。

 最後の問題は、フランスの文豪・アレクサンドル・デュマの三銃士の1人の名前を当てるものだ。たまたま私はその答えを知っていた。だから、高額な賞金にしては、問題がやさし過ぎると思ったものだ。これは私の勝手な感想だ。