小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

映画

1007 山頭火と高倉健 映画「あなたへ」を見て思うさまざまな人生

「このみちや いくたりゆきし われはけふゆく」(注=筆者。この道は、多くの人々や人生が行き交っている。私はその人生をきょうも歩いている) 作者は放浪の俳人といわれ、無季自由律俳句(句の中に季語を入れない)で知られる種田山頭火である。歌人・若山…

991 祈りの地を目指して 歩き続ける人を描いた映画「星の旅人たち」

知人から「星の旅人たち」という映画を見てほしいというメールが届いた。「息子を亡くした初老の男のスペイン・サンチャゴ(サンティアゴ・デ・コンボステラ)への巡礼の旅(800キロ)を描いたヒューマンドラマです。昨秋、次男(33歳)の遺灰を持って…

991 祈りの地を目指して 歩き続ける人を描いた映画「星の旅人たち」

知人から「星の旅人たち」という映画を見てほしいというメールが届いた。「息子を亡くした初老の男のスペイン・サンチャゴ(サンティアゴ・デ・コンボステラ)への巡礼の旅(800キロ)を描いたヒューマンドラマです。昨秋、次男(33歳)の遺灰を持って…

978 白磁を守った日本人 浅川巧の生涯を再現した映画

山梨県北杜市出身のある兄弟が、日本以上に韓国で知られているとは私は知らなかった。浅川伯教(のりたか)、浅川巧(たくみ)という兄と弟だ。 弟の巧の墓は、ソウルの近郊の忘憂(まんうり)にある。その墓には「韓国を愛し、韓国人を愛し、韓国の山と民芸…

978 白磁を守った日本人 浅川巧の生涯を再現した映画

山梨県北杜市出身のある兄弟が、日本以上に韓国で知られているとは私は知らなかった。浅川伯教(のりたか)、浅川巧(たくみ)という兄と弟だ。 弟の巧の墓は、ソウルの近郊の忘憂(まんうり)にある。その墓には「韓国を愛し、韓国人を愛し、韓国の山と民芸…

961 社会現象を投影した2本の映画 「ハーメルン」と「わが母の記」

連休に入って2本の映画を見た。双方とも内容は社会派に属し、ともに映像が美しい心に残る作品だった。BSフジで放映された「ハーメルン」(プレカット=縮小版)と話題の「わが母の記」である。 前者は福島県奥会津の廃校を舞台に人口の一極集中化現象が進…

961 社会現象を投影した2本の映画 「ハーメルン」と「わが母の記」

連休に入って2本の映画を見た。双方とも内容は社会派に属し、ともに映像が美しい心に残る作品だった。BSフジで放映された「ハーメルン」(プレカット=縮小版)と話題の「わが母の記」である。 前者は福島県奥会津の廃校を舞台に人口の一極集中化現象が進…

960 悪い奴ほどよく眠る 衰退する日本政治

資金管理団体の土地取引をめぐって、政治資金規正法違反で強制起訴されていた小沢一郎・元民主党代表の判決は、大方の予想通り無罪という結果になった。裁判の過程をみていると強制起訴の根拠である検察の捜査資料の信用性が崩され、国民感情は別にしてこ無…

939 澄んだ目で見る戦争の恐怖 映画「戦火の馬」

私が小さいころ、わが家では馬を飼っていた。その背中に乗って、落ちないよう懸命にしがみついて坂道を下りたことを覚えている。スピルバーグ監督の映画「戦火の馬」を見て、昔を思い出した。主人公の少年が私の子ども時代と重なったからだ。 映画はマイケル…

939 澄んだ目で見る戦争の恐怖 映画「戦火の馬」

私が小さいころ、わが家では馬を飼っていた。その背中に乗って、落ちないよう懸命にしがみついて坂道を下りたことを覚えている。スピルバーグ監督の映画「戦火の馬」を見て、昔を思い出した。主人公の少年が私の子ども時代と重なったからだ。 映画はマイケル…

923 震災の不条理訴える2枚の写真 高倉健さんが持ち歩く宝物とは

80歳になった高倉健さんが6年ぶりに出演する映画が8月に公開されるという。撮影中、高倉さんは台本に東日本大震災直後に撮影された1枚の少年の写真を貼り付けて持ち歩いていると新聞に出ていた。 その写真を見ると「ギュッと気合が入る」のだそうだ。 …

923 震災の不条理訴える2枚の写真 高倉健さんが持ち歩く宝物とは

80歳になった高倉健さんが6年ぶりに出演する映画が8月に公開されるという。撮影中、高倉さんは台本に東日本大震災直後に撮影された1枚の少年の写真を貼り付けて持ち歩いていると新聞に出ていた。 その写真を見ると「ギュッと気合が入る」のだそうだ。東…

921 五輪で韓国に勝てないのはなぜなのか 映画・マイウェイで理解した背景

「真実を基に作られたマイウェイの世界」と映画のパンフには書かれてある。第二次世界大戦の大きな分岐点になった連合軍のノルマンディ上陸作戦後、一人の東洋人が捕虜として連合軍の尋問を受ける写真が残っていた。 この映画はこの東洋人捕虜という「事実」…

910 映画「RAILWAYS」の世界 立山連峰に守られた富山の街

富山を何度か訪れたことがある。県庁所在地の富山市は、立山連峰に見守られているような印象が強い。剱岳、大日岳など連峰を形成する山々は美しく、富山の人々を包み込んでいる。厳しい冬があっても富山は住みやすいといわれる。だが、そこに住む人々はどん…

910 映画「RAILWAYS」の世界 立山連峰に守られた富山の街

富山を何度か訪れたことがある。県庁所在地の富山市は、立山連峰に見守られているような印象が強い。剱岳、大日岳など連峰を形成する山々は美しく、富山の人々を包み込んでいる。厳しい冬があっても富山は住みやすいといわれる。だが、そこに住む人々はどん…

899 野球に夢を見ることができるのか 映画「マネーボール」

プロ野球・巨人の球団人事をめぐって、清武英利球団代表兼GMと読売新聞グループ本社会長・主筆・渡辺恒雄氏の確執が話題になっている。人気球団の内紛だけに、注目が集まったのだろう。そんな騒ぎのときに、大リーグ・オークランド・アスレチックスの実在…

777 逆境にあっても生きる大事さ モンゴメリー 「アンの娘リラ」の読み方

犬と人間との間には信頼関係が芽生える。それが、日本では有名な「忠犬ハチ公」物語という美談になった。これがモデルになって、アメリカ映画の「約束の犬 HACHI」も生まれた。 忠犬ハチ公は、飼い主が亡くなった1925年から10年間から渋谷駅前で…

765 歴史の舞台・長春映画撮影所 甘粕正彦の軌跡

旧満州(中国・東北部)の長春(かつて新京といわれた)にある映画撮影所を訪れたのは、いまから27年前の1984年6月7日のことだった。梅雨のない北海道と同じように空気は乾いていた。 ここはかつて満映といわれ、アナキストの大杉栄虐殺事件で歴史に…

755 政治家や官僚は子どもの顔をちゃんと見られるか 武士の家計簿と政府予算案

2011年度の政府予算案が閣議決定した。一般会計の総額は92兆4116億円で本年度の当初予算を1124億円も上回って過去最大だという。 問題は内訳だ。税収が3兆円超の40兆9270億円の見込みなのに対し、国債発行額はこれよりかなり多い44兆…

750 落胆するのも人生の糧 グレース・ケリーの名言

海外の映画女優で、印象に残るのはオードリー・ヘプバーン(ベルギー生まれのイギリス人)、グレース・ケリー(アメリカ)、イングリット・バーグマン(スウェーデン)の3人だ。いずれも、20世紀を代表するハリウッドの大女優である。 その美しさは、現代…

750 落胆するのも人生の糧 グレース・ケリーの名言

海外の映画女優で、印象に残るのはオードリー・ヘプバーン(イギリス)、グレース・ケリー(アメリカ)、イングリット・バーグマン(スウェーデン)の3人だ。いずれも、20世紀を代表するハリウッドの大女優である。 その美しさは、現代の多くの女優でも超…

742 フラガールの地にて 迫力に満ちた踊りに酔う

福島県いわき市のスパリゾートハワイアンズ(旧常磐ハワイアンセンター)に行ってきた。温泉に入り、この施設の名物であるフラダンスショーを見た。 洗練された踊り子たちの動きを見ながら、映画「フラガール」を思い出した。 あらためて書くまでもないと思…

742 フラガールの地にて 迫力に満ちた踊りに酔う

福島県いわき市のスパリゾートハワイアンズ(旧常磐ハワイアンセンター)に行ってきた。温泉に入り、この施設の名物であるフラダンスショーを見た。 洗練された踊り子たちの動きを見ながら、映画「フラガール」を思い出した。 あらためて書くまでもないと思…

734 静かな時間を楽しむ 映画・マザーウォーター

映画を見る楽しみは何だろう。手に汗を握ったり、つい泣いてしまったり、何が何だか分からないまま終わってみたりと、これまでさまざまな映画を見た。 映画名の「マザーウォーター」は、ウイスキーの仕込み水(ウイスキーをつくる時に使用し、麦を発芽させる…

734 静かな時間を楽しむ 映画・マザーウォーター

映画を見る楽しみは何だろう。手に汗を握ったり、つい泣いてしまったり、何が何だか分からないまま終わってみたりと、これまでさまざまな映画を見た。 映画名の「マザーウォーター」は、ウイスキーの仕込み水(ウイスキーをつくる時に使用し、麦を発芽させる…

728 背景は「水戸っぽ」気質か 映画「桜田門外ノ変」

かつてこんな言葉が警視庁内でささやかれたそうだ。「鹿児島署長(警視)に茨城巡査」である。鹿児島県出身者は出世し、茨城県出身者はその逆で巡査のままで終わるという出身県による差別が最近まで伝統としてあったというのだ。映画「桜田門外ノ変」を見て…

728 背景は「水戸っぽ」気質か 映画「桜田門外ノ変」

かつてこんな言葉が警視庁内でささやかれたそうだ。「鹿児島署長(警視)に茨城巡査」である。鹿児島県出身者は出世し、茨城県出身者はその逆で巡査のままで終わるという出身県による差別が最近まで伝統としてあったというのだ。映画「桜田門外ノ変」を見て…

698 小説・映画「悪人」 現代日本にはそれより悪い奴がいる

悪人の定義は「心の邪悪は人、悪事を働く人、悪者」とある。芥川賞作家、吉田修一の「悪人」の主人公は、たしかに悪事(殺人)を働いた人物だ。しかし、心は決して邪悪ではない。気が弱くて、自分の意見をはっきり主張できないごく普通の青年だ。 出会い系サ…

698 小説・映画「悪人」 現代日本にはそれより悪い奴がいる

悪人の定義は「心の邪悪は人、悪事を働く人、悪者」とある。芥川賞作家、吉田修一の「悪人」の主人公は、たしかに悪事(殺人)を働いた人物だ。しかし、心は決して邪悪ではない。気が弱くて、自分の意見をはっきり主張できないごく普通の青年だ。 出会い系サ…

697 映画「トイレット」の世界 もたいまさこの目の演技

見る人に想像力を求める映画だ。「かもめ食堂」の荻上直子監督の新しい作品「トイレット」である。米国(撮影場所はカナダのトロント)の小さな町を舞台に主な出演者は、もたいまさこと3人の孫たちと一匹の猫である。 日本の映画だが、セリフはすべて英語で…