小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

750 落胆するのも人生の糧 グレース・ケリーの名言

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 海外の映画女優で、印象に残るのはオードリー・ヘプバーン(ベルギー生まれのイギリス人)、グレース・ケリーアメリカ)、イングリット・バーグマンスウェーデン)の3人だ。いずれも、20世紀を代表するハリウッドの大女優である。

 その美しさは、現代の多くの女優でも超えることはなかなか難しい。NHKBSでグレース・ケリーの生涯を追った番組を見た。モナコの公妃となり、52歳で亡くなったグレースの生きる上での信条が心に残った。

 その生い立ちは、ここで記す必要がないくらい知られている。ペンシルバニア州フィラデルフィアアイルランド系の豊かな家に生まれた。父親は五輪で金メダルを獲得した元ボート選手だ。 ハイスクール卒業後、女優を目指しニューヨークに出て、気品を備えた美貌でクールビューティーの異名をとり、大スターへと突き進む。

 29歳の時、カンヌ映画祭で出会ったモナコ大公と結婚し、人口3万人余のモナコの公妃となる。画像 その後封印された女優の道だが、NHKは結婚後ヒチコックが「私の映画の女優はあなたしかいない」といって、出演依頼したことも紹介している。

 本人は意欲があったものの、モナコ国民の反対で断念したという。 しかし、実はグレースは、モナコで映画に出演していた。それは「リアレンジ」という作品で、モナコにやってきた天才物理学者がフラワーアシスタントに間違われ、その大会に出るというストーリーだ。グレース自身はモナコでフラワーアートに情熱を注いでおり、こうしたストーリーの映画にに強い関心を示したのだろう。

 映画ではフラワーデザインに本気になった学者は失敗し、がっかりする。 それに対し、そのままモナコ公妃役を演じたグレースがこう言って慰めるのだ。 「落胆することも人生の糧です。大切なのは悔やまず前に進むことです」。このセリフはグレース自身が考えたものだなのだそうだ。

 人生には挫折は付き物だが、それを乗り越えてこそ生きる価値があると言いたかったのだろう。 この映画の撮影が終わってから、あまり時を経ないでグレースは南仏の別荘からモナコに自分が運転する車で戻る途中、脳梗塞を発症してしまう。車はがけ下に転落、グレースは翌日亡くなった。

 後年、イギリスのダイアナ皇太子妃も自動車事故で亡くなっており、なにやら因縁めいたものを感じる。 現代日本に生きる私は、昨今落胆することが多い。だが、グレースのこの言葉を知ると勇気が出る。そう「明日は明日の風が吹く」のだから。