小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

910 映画「RAILWAYS」の世界 立山連峰に守られた富山の街

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富山を何度か訪れたことがある。県庁所在地の富山市は、立山連峰に見守られているような印象が強い。剱岳、大日岳など連峰を形成する山々は美しく、富山の人々を包み込んでいる。厳しい冬があっても富山は住みやすいといわれる。だが、そこに住む人々はどんな思いで日常を送っているのだろうか。 富山を舞台にした映画「RAILWAYS」を見た。主人公の三浦友和は富山電鉄の定年間近い運転士で、妻の余貴美子は元看護師。この2人が定年後の人生設計をめぐって対立する。夫はとりあえず2人でゆったりとした旅を考え、妻は看護師の仕事を再開したいと思う。 夫の定年後の生活に関し、この映画のように夫婦の考え方の違いが鮮明になるケースが多いと聞く。夫は家でのんびりと自由に暮らしたいと思う。しかし、夫の定年後は自分の好きなことに没頭したい妻にとって夫は粗大ごみのような存在になる。この映画もそのようなイメージを追ったものだ。 「人生は鉄道に乗った長い旅」という映画のキャッチコピーがうまい。たしかにそうだ。人生には新幹線や特急に乗って順調に目的地に向かう場合もあれば、各駅停車を乗り継いでもなかなか行きつけない場合も少なくない。人生には起伏があることを映画は訴えたかったのだろうかと思う。 富山出身の何人かの知人がいる。共通するのは「ひたむきな生き方」である。もちろん、富山の気候風土を反映するように、暗さは隠すことができない。とはいえ、物事に真摯に取り組む姿勢は富山人の気質を示しているのではないかと思うのだ。 この映画に研修中の若い運転士が出ている。埼玉県に生まれ育ち、西武鉄道の特急、レッドアローが引退後、富山電鉄に引き取られ、現役として動いていることを知って就職したという設定だ。 以前、私も友人を訪ねて、西武鉄道のこの特急を何度も利用した。その友人は病に倒れた。だが、最近、病から快復した。「小生も長いトンネルから抜けて、やがて春の訪れが来るかに感じられるこのごろです」という便りが届いた。現役で活躍するレッドアローの姿を見て、友人の元気なころを思い出した。立山連峰を背景に走るレッドアローは、ぜひ乗ってみたいと思う魅力がある。