小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

906 朝の散歩の風景 風評被害を助長した行政の怠慢

画像毎朝、犬の散歩をするのが日課になっている。震災後、変わった服装の人を見かけるようになった。年格好は64、5歳の男性が白い上下のトレーニングウエア(長袖、長ズボン)に白い靴、白い登山帽、サングラス、白いマスク姿で散歩をしているのだ。 真夏の暑い日でもその姿は同じだった。事故を起こした原発から放出された放射性物質を避けるための服装らしい。この周辺はホットスポットには該当しないはずなのに、どうしたのだろうと思った。 線量はそう高くはないといっても、彼には信用ができないのだろう。それを皮肉ることはできない。原発事故に関する政府、東電の発表は問題が多かった。 それを鵜呑みにした報道も多く、この白装束氏は「自衛手段」を取っているのだろう。5月に福島県飯舘村の隣にある川俣町に行った。その際、街中で全身黒ずくめの女性(大きなマスクだけは白)に出会った。この女性は天気がいいのに黒い傘をさしていた。 つい先日発表された2011年の新語・流行語大賞に震災関係が5つ選ばれた。それを見て、いまさらながらに3・11の後遺症の大きさを感じた。 福島では、コメに対する県の安全宣言が出た後に、暫定基準値(1キロ当たり500ベクレル以下)を超える放射性セシウム伊達市福島市内のコメから検出され、微量でも検出された29市町村の2万5100戸の検査のやり直しをすることになった。 流行語大賞に入った「風評被害」は、発表文によると、「ありもしないうわさやデマを世間に流されたり、取り沙汰されたりして被る被害のこと。福島第一原子力発電所事故後、被曝を恐れる心理から、福島からの避難民が差別的な扱いを受けるなどした。また農畜産物や魚、工業製品が過剰に避けられたりするなどのケースも発生した」とある。 しかし、今度のコメの問題は検査がいい加減だったために、基準値を超える放射性セシウムを含んだコメを出荷してしまったわけだから、「ありもしないうわさやデマ…」とは言えない。 風評被害に行政が手を貸してしまったようだ。きょう、新たに旧福島市(1950年2月1日当時の福島市)地域の稲作農家(406戸、水田面積は165ヘクタール)の産米を政府が出荷停止にしたというニュースが流れた。これによって、福島県で生産されたコメは、問題がない地域のコメでも売れなくなってしまう恐れがある。 福島の親類からコメが届いた。中には、「ヨウ素131、セシウム134、セシウム137のいずれもが検出ゼロ」という専門機関による検査結果を記した「試験成績証明書」が入っていた。送ってくれた親類は、取引がある米専門の卸売り会社を通じて専門機関に検査を依頼し、その証明書を必ず袋の中に入れているのだという。 今度の日曜(11日)は、大震災から9カ月になる。政府・東京電力は原子炉の「冷温停止状態」を年内には達成するという工程表を発表している。信じていいのか…と思う。 (写真は散歩の友のhana)