小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

2007-01-01から1年間の記事一覧

196 遠別少年(坂川栄治著) 透明な静けさの物語

13の短編集の中に「山おっちゃん」という話がある。幼いころに病気で耳が聞こえなくなったおじさんの思い出を描いたかつてはどこにでもあったような、郷愁あふれるストーリーだ。最後の一節がとても気になった。 -そして耳が聞こえない人が身にまとう独特の…

196 遠別少年(坂川栄治著) 透明な静けさの物語

13の短編集の中に「山おっちゃん」という話がある。幼いころに病気で耳が聞こえなくなったおじさんの思い出を描いたかつてはどこにでもあったような、郷愁あふれるストーリーだ。最後の一節がとても気になった。 ―そして耳が聞こえない人が身にまとう独特の…

195 新幹線のおしゃべり男 誇りを失った日本人

東京から上越新幹線に乗った。比較的空いている平日。東京駅まで満員電車に35分立ち通しだったので、ゆっくり眠ろうと思った。だが、後ろの席に座った中年の男2人のおしゃべりが、その願望を打ち砕いてしまった。 よくしゃべるのである。あまりのうるささに…

195 新幹線のおしゃべり男 誇りを失った日本人

東京から上越新幹線に乗った。比較的空いている平日。東京駅まで満員電車に35分立ち通しだったので、ゆっくり眠ろうと思った。だが、後ろの席に座った中年の男2人のおしゃべりが、その願望を打ち砕いてしまった。 よくしゃべるのである。あまりのうるささに…

194 死の哲学を聴講 千葉大でにわか学生の記

人間は死から逃れることはできない。どんな人でも100%の確率でいつかは死ぬのである。死に対する恐怖と不安は千差万別とはいえ、だれにでもあるだろう。日本でも死への恐怖や末期がんの痛みを和らげるためにホスピスが普及しつつある。人間らしい死に方を考…

194 死の哲学を聴講 千葉大でにわか学生の記

人間は死から逃れることはできない。どんな人でも100%の確率でいつかは死ぬのである。死に対する恐怖と不安は千差万別とはいえ、だれにでもあるだろう。日本でも死への恐怖や末期がんの痛みを和らげるためにホスピスが普及しつつある。人間らしい死に方を考…

193 有頂天家族(森見登美彦著) 狸一家の抱腹絶倒の物語

登場するのは狸に天狗に人間たち。善玉狸と悪玉狸一家の攻防を軸に、作者は想像をたくましてして、ストーリーを展開していく。複雑化した現代にあって、狸や想像上の怪物・天狗が人間の世界に入り交じって生活しているとしたら、考えるだけでも愉快である。 …

193 有頂天家族(森見登美彦著) 狸一家の抱腹絶倒の物語

登場するのは狸に天狗に人間たち。善玉狸と悪玉狸一家の攻防を軸に、作者は想像をたくましてして、ストーリーを展開していく。複雑化した現代にあって、狸や想像上の怪物・天狗が人間の世界に入り交じって生活しているとしたら、考えるだけでも愉快である。 …

192 続「always3丁目の夕日」 鉄腕稲尾投手時代への郷愁

昨年大ヒットした映画の続編である。作家志望青年と隣の自動車修理工場を取り巻く人々の物語を軸にしているのは、変わらない。方や芥川賞を目指し、方や事業に失敗した親戚の娘を預かる。 それに町内の人々が絡んで物語は面白おかしく進んでいく。昭和30年代…

192 続「always3丁目の夕日」 鉄腕稲尾投手時代への郷愁

昨年大ヒットした映画の続編である。作家志望青年と隣の自動車修理工場を取り巻く人々の物語を軸にしているのは、変わらない。方や芥川賞を目指し、方や事業に失敗した親戚の娘を預かる。 それに町内の人々が絡んで物語は面白おかしく進んでいく。昭和30年代…

191 雨の鎌倉 八幡宮では結婚式

11月も中旬に入ったのに、鎌倉の紅葉はこれからという印象だった。幼いころの友人たちと雨の中を歩いた。それは、鎌倉の通には、あきれられるくらい、「鎌倉入門」のコースだった。そういえば若いころ、このコースを1人で歩いたなと思い出した。 北鎌倉で横…

191 雨の鎌倉 八幡宮では結婚式

11月も中旬に入ったのに、鎌倉の紅葉はこれからという印象だった。幼いころの友人たちと雨の中を歩いた。それは、鎌倉の通には、あきれられるくらい、「鎌倉入門」のコースだった。そういえば若いころ、このコースを1人で歩いたなと思い出した。 北鎌倉で横…

190 黛まどかさんの「歌垣」 日本再発見塾「までいの村・福島・飯舘」

「ことしの紅葉は、いつもの年よりきれいではないな」と、地元の人が話す。確かに、期待した鮮やかさには少し足りない印象だ。でも、あと1週間もすれば、木々の葉の赤や黄色の色彩はさらに強くなるはずだ。初めて訪れた福島県北部の飯舘村は阿武隈高地にあり…

190 黛まどかさんの「歌垣」 日本再発見塾「までいの村・福島・飯舘」

「ことしの紅葉は、いつもの年よりきれいではないな」と、地元の人が話す。確かに、期待した鮮やかさには少し足りない印象だ。でも、あと1週間もすれば、木々の葉の赤や黄色の色彩はさらに強くなるはずだ。初めて訪れた福島県北部の飯舘村は阿武隈高地にあり…

189 文章の磨き方 書くことが大事(辰濃和男著)

文章を書くことは難しい。では、どうしたら簡潔な文章が書けるのか。そうした疑問に答えるのがこの本(岩波新書)だ。作者の辰濃和男は、朝日新聞の一面コラム、天声人語を13年間にわたって書き続けた名文記者だ。 辰濃はこの本の中で多くの作家の文章論を引…

189 文章の磨き方 書くことが大事(辰濃和男著)

文章を書くことは難しい。では、どうしたら簡潔な文章が書けるのか。そうした疑問に答えるのがこの本(岩波新書)だ。作者の辰濃和男は、朝日新聞の一面コラム、天声人語を13年間にわたって書き続けた名文記者だ。辰濃はこの本の中で多くの作家の文章論を引…

188 和菓子と洋菓子と とげぬき地蔵通りを歩く

巣鴨のとげぬき地蔵通りは、平日にもかかわらず多くの人出でにぎわっていた。この通りを歩いて、途中横道に抜ける学校を訪問した帰りに通りをぶらつき、「元祖 塩大福」の店に寄った。 「みずの」という大福の店は、行きは行列を作っていたので、帰りに大福…

188 和菓子と洋菓子と とげぬき地蔵通りを歩く

巣鴨のとげぬき地蔵通りは、平日にもかかわらず多くの人出でにぎわっていた。この通りを歩いて、途中横道に抜ける学校を訪問した帰りに通りをぶらつき、「元祖 塩大福」の店に寄った。 「みずの」という大福の店は、行きは行列を作っていたので、帰りに大福…

187 官も民もひどい乱れ これが日本の現状

防衛省や厚生労働省のいい加減さが毎日話題になっている。いつの時代でも、悪い奴や責任を逃れようとする役人はいる。日本だけでなく、隣国、中国でも公務員の汚職はひどい実態にあるという。 いま、2つの省以外の役人たちは、どんな思いで報道や国会の動き…

187 官も民もひどい乱れ これが日本の現状

防衛省や厚生労働省のいい加減さが毎日話題になっている。いつの時代でも、悪い奴や責任を逃れようとする役人はいる。日本だけでなく、隣国、中国でも公務員の汚職はひどい実態にあるという。 いま、2つの省以外の役人たちは、どんな思いで報道や国会の動き…

186 「暴走老人」(藤原智美著)考  青木の一途さに脱帽

いま、「新老人」という言葉が使われている。各地で老人たちがキレた末に、暴力を振るうケースが跡を絶たないのだ。殺人を犯す老人もいる。自分を抑えることができずに暴走して、事件を起こす。そこまでは至らないものの、公共の場で、あらゆる醜態を見せる…

186 「暴走老人」(藤原智美著)考  青木の一途さに脱帽

いま、「新老人」という言葉が使われている。各地で老人たちがキレた末に、暴力を振るうケースが跡を絶たないのだ。殺人を犯す老人もいる。自分を抑えることができずに暴走して、事件を起こす。そこまでは至らないものの、公共の場で、あらゆる醜態を見せる…

185 野間文芸賞 「ノルゲ」 佐伯一麦のノルウェーの四季

このようにして、ゆったりとした時間を送る日本人もいる。それが私小説作家、佐伯一麦の近著「ノルゲ」(ノルウェー語でノルウェーのこと)に登場する作家だ。6年をかけて書いたというだけに、分厚い小説だ。佐伯に対する冒涜かもしれないが、私はそれを数日…

185 野間文芸賞 「ノルゲ」 佐伯一麦のノルウェーの四季

このようにして、ゆったりとした時間を送る日本人もいる。それが私小説作家、佐伯一麦の近著「ノルゲ」(ノルウェー語でノルウェーのこと)に登場する作家だ。6年をかけて書いたというだけに、分厚い小説だ。佐伯に対する冒涜かもしれないが、私はそれを数日…

184 どこへ行った闘争心 NZ・オールブラックスの敗退

ニュージーランドには、マオリと呼ばれる先住民族がいる。全人口の約15%がマオリであり、ニュージーランドをラグビー強国にした原動力はマオリの存在なのだ。 だが、フランスで開催されたラグビーのワールドカップでは、世界ランキング1位だったニュージー…

184 どこへ行った闘争心 NZ・オールブラックスの敗退

ニュージーランドには、マオリと呼ばれる先住民族がいる。全人口の約15%がマオリであり、ニュージーランドをラグビー強国にした原動力はマオリの存在なのだ。 だが、フランスで開催されたラグビーのワールドカップでは、世界ランキング1位だったニュージー…

183 秋のお花畑 セイダカアワダチソウが群生

次第に冷気が増してきて、秋の花は少なくなってきた。もちろん、私の好きなコスモスはいま花の盛りを迎えている。 バラも春よりは花が小さいものの頑張って咲いているし、菊もこれからだ。。だが、家々の庭先の花壇は寂しくなりつつある。やはり春の方が気持…

183 秋のお花畑 セイダカアワダチソウが群生

次第に冷気が増してきて、秋の花は少なくなってきた。もちろん、私の好きなコスモスはいま花の盛りを迎えている。 バラも春よりは花が小さいものの頑張って咲いているし、菊もこれからだ。だが、家々の庭先の花壇は寂しくなりつつある。やはり春の方が気持ち…

182 『川の光』 大人も読める寓話(松浦寿輝著)

この土日は穏やかな天気に恵まれ、のんびりと犬と自宅周辺を散歩した。森を切り崩して大規模な住宅街を造っている地区があり、ここに棲んでいた動物たちはどうしただろうかと思った。この街に住んで20年になる。宅地開発のために山が切り崩され、緑は私が移…

182 『川の光』大人も読める寓話(松浦寿輝著)

この土、日は穏やかな天気に恵まれ、のんびりと犬と自宅周辺を散歩した。森を切り崩して大規模な住宅街を造っている地区があり、ここに棲んでいた動物たちはどうしただろうかと思った。この街に住んで20年になる。宅地開発のために山が切り崩され、緑は私が…