小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

184 どこへ行った闘争心 NZ・オールブラックスの敗退

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ニュージーランドには、マオリと呼ばれる先住民族がいる。全人口の約15%がマオリであり、ニュージーランドラグビー強国にした原動力はマオリの存在なのだ。 だが、フランスで開催されたラグビーのワールドカップでは、世界ランキング1位だったニュージーランドチーム(オールブラックス)は、準々決勝で敗退してしまい、ニュージーランド国民をがっかりさせた。(優勝はイングランドを下した南アフリカで2回目) 本番に弱いという定評のオールブラックスが定評通りになってしまったようだ。9月の同国旅行で買ってきたオールブラックスのネームが入った黒い帽子を散歩に愛用していた私も拍子抜けし、あまりかぶらなくなった。そして、旅で聞いたマオリの激しさがラグビーにも蘇ってほしいと思うのだ。 マオリニュージーランド先住民族だ。約1000年前、ポリネシア人の開拓者がニュージーランドに航海用のカヌーでやってきたが、その人たちの子孫がマオリと呼ばれている。後にイギリスからやってきた移民たちが、闘争心が強いマオリの人々にラグビーを教えた結果、この球技はニュージーランドの国技になるほど全土に普及し、世界に冠たる強豪国になったといわれる。 日本に遠征してくると、日本チームは子供扱いで全く歯が立たない。「オールブラックス強し」の印象が強く残っている。ラグビー留学のため、日本の多くの若者もニュージーランドの土を踏んだ。
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マオリの人々は、ポリネシア系らしく、男女とも足腰が発達していて大柄だ。マオリの音楽や踊りに接する機会があったが、ハワイのそれによく似ていると思ったものだ。男の踊り手たちは、日本の力士のように、髪を結い、横綱になった曙や武蔵丸に似ていた。 オールブラックスの試合前には「ハカ」といわれるマオリの踊りをやるが、これも本来はマオリの戦士が戦いの前に踊るものだ。手をたたき、足を踏み鳴らして大きな声で叫び相手を威嚇するのである。大柄のマオリの人たちが演じると本当に迫力がある。1905年にオールブラックスがイギリスに遠征した時に演じて以来、国際大会で披露しているのだという。 ニュージーランドは屈指のラグビー強国である。1987年に地元で開催した第1回ワールドカップでは当然のように優勝した。世界ランキンは1位だ。しかし、その後はW杯では準優勝1回、3位2回と優勝を逃し続け、今大会も下馬評は高かったにもかかわらず、準々決勝で開催国フランスに敗れてしまった。 マオリのパフォーマンスをエッフェル塔前でやったという記事が外電で流れたが、そのおまじないも効かなかったようだ。マオリの闘争心がオールブラックスから次第に失われつつあるということなのだろうか。 次回の2011年大会は、再びニュージーランドで開催される。地元大会でマオリの闘争心が復活するかどうか、4年後が楽しみだ。それにしてもサッカーと比べ、ラグビーの荒々しさはものすごい。日本人は体格的にも外国に勝てそうにないと、マオリの踊りを見て実感した。