小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

80 東京マラソン 人の波にのまれる

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雨の中で、東京マラソンがあった。日比谷や銀座で3万人が走った大会をのぞいた。一口に3万人というが、それはいつまでも続く蟻の列のような感じがした。 東京の都心部を、7時間の制限時間で走るというこのマラソン。沿道もすごいというしかない人出だった。午前中は雨が強く、気温も上がらず寒い。ランナーたちは、寒さを忘れているのだろうが、沿道の人たちはそうではない。 ランナーが来ると、一斉に「頑張れ、頑張れ」と声をかける。ラストランの有森裕子さんが男性の集団に囲まれ、近付いてくる。近くにいる人たちが気づいて「有森さん頑張れ」と、名前を読んで声援をする。有森選手はにこやかだった。 日本人のマラソン好きは大変なものだと思う。このような冷たい雨の中でも、沿道の人出は何とも形容しがたいほどだ。銀座周辺の道路際にはどこまでも人がいて、ランナーを見るのは大変だった。強引に割り込まない限り、傘に邪魔され、ランナーは少ししか見えない。何しろこの日だけで178万の人たちが都心に押し寄せたのだから。 この大会を裏から支えるボランティアの人々の姿が尊敬に値する。3万人のランナーが楽しんだ大会だが、実は裏方さんとして、1万人のボランティアが協力していたという。 中間点の女性は、雨に打たれながら中間点の標示を持ち続け、ランナーに「中間点です。頑張って」と声を掛ける。跡片付けの老人は「覚悟してきたのでこれぐらいの寒さは大丈夫だよ」という。 沿道で見ていて思った。できるなら、見物するより、走ったほうが楽しいのではないかと。それは、阿波踊りと同じ感覚だ。「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損々」。「見る阿呆に走る阿呆。同じ阿呆なら走らにゃ損々」なのだ。 東京の都心は、このマラソンで一日中道路の方はマヒ状態になった。でも、それだけ車の量が少なく、排気ガスの排出量も減ったはずだ。ボストン、ロンドン、ニューヨーク、ホノルル、さらにパリ、ベルリンと世界の大都市でマラソンは風物詩になっている。東京マラソンは、こうしたマラソンの仲間入りを果したようだ。(写真は有楽町の中間点付近)