小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

74 スリランカの涙(2)

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コロンボ市内の平凡な風景を見ていると、この国が内戦状態にあることを忘れる。しかし、別の場所では、政府軍の兵士が武器を持ち、厳しい顔つきで立っている。それがスリランカの日常なのだ。 政治的なことはよく分からない。新聞などによると、スリランカの北部と東部地域の分離独立を主張する少数派のタミル人が武装組織「タミル・イーラム解放のトラ」(LTTE)を結成し、長い間多数派のシンハラ人と民族対立を続けているのだという。それが1980年代から内戦に発展しいったんは2002年に停戦で合意した。 しかし、2006年の夏から再び北東部で戦闘が激化し、停戦合意は事実上崩壊してしまったのだ。1月には、コロンボ周辺で一般市民が乗ったバスが2回にわたって自爆テロに遭い、多数の死傷者が出た。 2005年に大統領選に当選したラジャパクサ大統領は、タミル人の分離独立要求に対して強硬姿勢をとってきたタカ派といわれ「妥協はしない」と明言し、一方のイーラム解放のトラには、少年兵も混じり、海外に居住するタミル人が資金援助をしているといわれる。こうした事情から和平までには時間がかかるという見方が強いようだ。 この国は、一昨年大津波の被害も受けた。内戦と自然災害という二重の難問に人々は、どう立ち向かうのか。だが、人々の表情に暗さは感じられない。青年時代、日本に留学し、日本人女性を妻に持つある実業人は、3人の子供を日本ではなくアメリカに留学させたという。将来を考えると、日本よりもアメリカの方が頼りになるというのだろうか。 それが、現在の日本とスリランカの関係を象徴しているように思える。それほど、スリランカは「遠い国」になってしまったのだ。しかし、この国で飲む「セイロン紅茶」の味は格別である。紅茶を飲みながら、「アヌラーダプラ」など7つの世界遺産もある美しい国に争闘は似合わないと考えた。 北海道より、やや小さな島国。そこで対立を続ける仏教徒のシンハラ人とヒンドーゥ教徒のタミル人。融合は可能だとの見方を信じたい。