小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

83 映画「ルワンダの涙」 極限での生き方の選択

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 ルワンダは、アフリカ中央部にある。高原地帯で平均気温は約19度というから、住みやすい国土のはずだ。だがこの国も、先に書いたスリランカ同様、部族対立が根強く、それが元で虐殺があったことは記憶に新しい。この虐殺劇が何度も映画化されている。  

 昨年後半に上映された「ホテルルワンダ」、いま上映中の「ルワンダの涙」とも、この悲劇を追ったものだ。 百科事典「マイペディア」によると、ルワンダの部族対立は、14-15世紀に移住してきた牧畜民のツチ族が農耕民で人口の多数を占めるフツ族を支配して王国をつくったのが始まりだ。

 映画はルワンダの首都キガリの英国カトリック教会系の公立技術学校が舞台だ。1994年4月、ルワンダでは同国ととブルジン両国の大統領を乗せた飛行機が撃墜され、内戦が激化した。 その結果、フツ族によるツチ族への大虐殺が起きる。助けを求めてツチ族の住民多数が国連軍の陣地になっている公立技術学校に避難する。

 映画は教会の神父、学校で働く青年協力隊の英語教師、国連軍であるベルギー軍の司令官、英語教師を慕うツチ族の女生徒らが主な登場人物だ。 国連軍が撤退することになり、神父と教師は選択を迫られる。教師は悩んだ末、軍とともに避難する道を選び、神父は子供たちを助けようと、トラックに載せて避難する途中、民兵に阻止され射殺されてしまう。

 極限状況に置かれたら、人間はどのような選択をするのだろう。それを選ぶのは個人の自由である。だから避難した教師を責めることはできない。死んだ神父と同じように、身を捨てて、子供たちを助ける行為ができただろうかと自問する。

 このような大量虐殺が地球上で起きているにもかかわらず、国際社会が手をこまねいていた事実が悔しい。大量虐殺があったルワンダでは、あれから13年近くが過ぎ、権力はツチ族が握っている。前途が平穏であるのかどうか、予断はできない。