小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1369 どくだみの季節 意外においしい?梅雨の花

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 関東地方まで梅雨入りした。この季節の花といえば紫陽花が一番幅をきかせているようだが、木陰を歩いていると、どくだみの白い花(白く密集して見えるのは総苞で、苞の中心に黄色い花を穂状に付ける=角川・俳句歳時記)が一面に咲いているのを見かける。

 薬用になることから「十薬」ともいわれ、どくだみ茶は老廃物の排出に効果があるという。そのほかこの多年草はゆでたり、てんぷらにしたりして食べると意外にうまいそうだ。

 私はまだ食べたことはないが、手元にある山口明彦著『山菜ガイドブック』(永岡書店)には「陰湿な空き地に生えている雑草です。干した葉をお茶として飲めば健康茶になりますが、山菜として食べてもおいしいものです。摘むと嫌なにおいとムッとするので、食べることなどだれも積極的にやりません。しかし、ゆでると、鮮やかな緑色となり、においも消え、おいしく食べられます」と出ている。

 また、パキラハウス編『週末のナチュラリスト』には、「葉や茎を天ぷらにすると格別の味。熱を加えることで独特の強い匂いが消えるので食べやすい」とあるから、かつては食用として重宝された時代があったのだろう。いや、現在も食べている人がいるのかもしれない。

「どくだみの花の白さに夜風あり」 高橋淡路女(1890-1955)

 陰鬱な季節。そんな梅雨時にどくだみの白い花が夜風にかすかに揺らいでいる風景が浮かんでくる句である。

西の魔女が死んだ』で知られる作家の梨木香歩は、植物が登場する作品を数多く手掛けている。その中で、どくだみが出てくるのは『家守奇譚』である。売れない物書きの綿貫征四郎が亡き友人の高堂の自宅の日本家屋の守をするようになり、そこで四季折々に幻想の世界が繰り広げられる。梨木の植物に対する造詣の深さは『冬虫夏草』でも感じ取る。

 どくだみの名前の由来は、諸説あるようだ。毒にも痛みにも効くから「毒痛め」となり、それがどくだみになったという説、独特の匂いがあるため、「毒溜め」と呼ばれ、いつしかどくだみになったという説もある。

 花自体は可憐であり、どくだみという名前はこの植物にとって気の毒のように思ったりする。 最近、日本社会はおかしなこと続きである。いちいち書くことがばからしくなるほどだ。日本社会に老廃物が溜まってしまったかのようである。どくだみ茶を勧めたい政治家や官僚が多すぎる。その筆頭は誰だろうか―。

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写真 1、公園の樹陰に咲くどくだみ 2、わが家に庭に咲いた八重のどくだみ