小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1394 ああ田沢湖よ 秋田を歩く

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 過日、晩夏の秋田を歩いた。角館も田沢湖も人影はまばらで、昨今話題の中国人観光客の姿も見かけなかった。秋田新幹線田沢湖駅はふんだんに秋田杉を使った美しい建物だった。私がこれまで見た中では北海道の旭川駅とともに気に入った建物だ。

 だが、駅前は寂しく、たまたま昼食に入った店の料理はひどかった。 親戚の家族とともに入った店には先客として15人くらいの学生とみられる若い男女がおり、まだだれも料理がきていない。だからこちらの料理も出てくるのには時間がかかると予想した。

 メニューは豊富で私たち10人は天ぷらソバ、うどん、カレー、ラーメン、どんぶりものなど、それぞれ別の品を注文した。 小一時間待って料理が出てきた。私が頼んだソバは粉っぽく、とてもソバとは言えない代物だった。小麦粉が半分以上も入ったような妙な味がし、コシもない。

 天ぷらも駅の立ち食いソバの方がましなくらいだった。別の品を頼みひと口食べただけでやめてしまった人もいた。全員の感想を集約すると「これまで食べた食事で最悪」「素人の料理でもこんな味は出ない」という散々なものだった。駅前の小さな食堂に入ってみたら、出てきた料理はその味は忘れることができないほど美味だった―と書きたいところだったが、それが逆になった。「秋田よ、どうした」と私は思った。

 日本一深い湖という田沢湖に行くと人影はまばらで、夏の終わりを感じた。全体が県立自然公園で日本百景にも入っているとはいえ、いま話題の中国人らしき姿もない。地元の人によると、現在はかつてのように多くの観光客がこの湖を訪れることはないという。岸近くにある戦後日本を代表する彫刻家といわれる舟越保武作の「たつこ像」もさびしげな雰囲気が漂っている。

 デンマークコペンハーゲンの海辺にあるアンデルセンの人魚姫像が観光スポットとしてにぎわっていたことを思い出した。金色に輝くたつこ像は幻想性があって人魚姫像にひけをとらないが、国立公園でもない田沢湖はマイナーな存在なのだろうか。

 かつて数年間、秋田に住んだことがあり、私にとって秋田は大事な場所である。いま、秋田県は人口減少率が全国一である。現在の人口( 2014年10月現在で103万6861人)が2040年には70万人まで減ってしまうという推計もあり、深刻な状況だ。そんな一端を田沢湖で感じ取った。 湖に人影なしや夏送る

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写真 1、秋田の田園風景 2、田沢湖舟越保武作「たつこ像」。船越は「長崎26殉教者記念像」で高村光太郎賞を受賞した戦後日本の代表的彫刻家 3、角館の武家屋敷周辺 4、田沢湖駅 5、田沢湖に停車した秋田新幹線こまち号

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