小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

2003 ああ、不元気日本! 続くメーカーの身売りと譲渡

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 かつて「made in Japan」は、品質に優れた日本製品の代名詞だった。そんな言葉もいつの間にかほとんど聞かれなくなった。日本のメーカーの元気のなさばかりが目に付く昨今だ。音響メーカー「オンキヨー」は、主力のスピーカーやアンプなどの「ホームAV事業」を譲渡するためシャープなど2社と協議を始めた。大手電機メーカー「パナソニック」は、テレビの生産のかなりの部分を中国家電大手のTCL集団に委託する方向で協議をしている――という2本の記事も、そうした日本メーカーの不振を象徴しているように映るのだ。

 私の部屋にあるオーディオのうちスピーカーとアンプ、CDプレーヤーの一つ(もう一つはかつての音響トップメーカー、日本ビクター製の年代物)はともにオンキヨー製。さらに居間の55型テレビはパナソニック製だから、これらの記事を読んで何とも複雑で寂しい気持ちになった。テレビの方は2年半前、日立のプラズマテレビから別のメーカーのものに買い替えた。しかし、このメーカーのものは不調(途中で電源が切れたり、録画ができなかったりと、エラーが多発した)が目立ち、基盤交換やテレビ本体を取り替えるなどしても問題が解決しなかったため、パナソニック製に交換してもらった経緯がある。

 一方のオンキヨー製品はかつての日本ビクター製のCDプレーヤーとともに、現在も利用中で私の部屋で一定の位置を占めている。戦後の一時期黄金時代を築いたオーディオ業界だが、それが長くは続かなかった。多くの有名メーカーが身売りや事業撤退を繰り返し、ついに「オンキヨーよ!お前もか」という寂しい状況に至ってしまった。時代の流れなのか経営上の問題か、経済の門外漢の私にはその事情はよく分からない。

「ものづくり日本」というキャッチコピーがあった。輸出立国日本にとっていい製品をつくることが目標であり、経営者が率先し技術者、職人、営業、事務職も含め各社とも全社一丸となったはずだった。だが、いつのころからか、その精神が薄れてしまったように思える。たぶんバブル経済が崩壊したころからだっただろうか。これ以降、メーカーの不祥事や身売りが続出しているからだ。シャープは台湾メーカーの傘下となり、東芝も経営上の失態で躓いた。そしてパナソニックのテレビ部門の縮小というニュースは、不元気日本が続いていることを示しているようだ。

 アメリカの社会学エズラ・ヴォーゲル(1930~2020)は著書『ジャパン・アズ・ナンバーワン』(原題・Japan as Number One: Lessons for America)の中で、高度経済成長を支えた日本的経営を評価した。その要因として日本人の高い学習意欲、読書習慣があることを指摘した。しかし、今や日本の書店数は減る一方で、書店調査会社アルメディアが2020年6月に発表した書店数は2020年5月1日時点で1万1024店、総売場面積は122万2302坪、書店数のうち売場面積を持つ店舗に限ると9762店となり、1万店を割り込んでしまった。20年前に比べると、ほぼ半減したという。
 
 アマゾンなど通販の普及や大型店舗の展開などの背景があるものの、書店の激減は日本人の本離れが進んでいることと無関係ではない。それが日本全体の衰退につながっているのかもしれない。新型コロナワクチンの開発・接種でも日本はかなり立ち遅れてしまった。こんな日本に誰がした……。

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