小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1105 ミニコンポの修理で知った現実 使い捨て時代を実感

画像 ある国内メーカーのミニコンポを使っている。2006年8月に購入したもので、使い出して間もなく7年なる。最近、CDを入れても音が出なくなったので修理を頼んだ。

 すると、やってきたメーカーの担当者は、「読み取り装置が壊れたので、交換する必要がある。修理代は1万以上かかります。いまは1万円以上出せばミニコンポが買える時代なので考えた方がいいですよ」と言うのである。

 このメーカーは使い捨てを奨励しているのではないかと思ったが、このミニコンポの音に愛着があったので修理することを選んだ。 10日ほどで、ミニコンポが返ってきた。修理費は1万6485円だった。

 内訳は交換した読み取り装置(ピックアップ)が4935円、出張費用が2310円、技術料が9240円、消費税785円だった。担当者が言うように、修理費は安くはなかった。

 保証期間がとうに過ぎており、メーカーとしても現物を引き取り、さらに大阪の工場まで送って修理し、さらに返送したものを私の自宅まで届けたのだから、正当な修理代なのだろう。それを承知したとしても釈然としない思いが残った。

 部品代よりも技術料が高いのは壊れたら修理するより買い替えた方がいいとメーカーが奨励していることの表れのように思えたからだ。 メーカーにとっては自社の製品を長く使ってもらうのが誇りのはずなのに、ものを大事にする風潮が日本社会から失われていることをコンポの修理でよく分かった気がした。

 昔から「安かろう、悪かろう」といわれるが、安くても簡単に壊れない製品をつくるのが技術者の矜持ではないか。そんな期待は無理なのだろうか。日本の家電メーカーのほとんどは、発売した製品の交換部品の供給は10年までとしており、私のミニコンポはまだ3年の余裕がある。

 戻ってきたコンポでCDを聴くと、以前のクリアな音が耳に入ってきた。 これから数年は、この音に親しむことができると安心した。ちなみに、このミニコンポは音響専門メーカーの製品ではなく、総合家電メーカー製だ。

 実は、私の部屋にはもう一つのCDプレーヤーがある。1988年に発売され、当時9万9800円で販売された日本ビクターの製品で、いまも現役として使っている。25年も使って問題なく動いているのだから、この会社の技術陣は誇っていい。

 しかし、日本ビクターは経営不振から他のメーカーに吸収され、2011年に日本ビクターの名前は消えてしまった。さびしい限りだが、このような優れた製品をつくった技術者たちは、別のメーカーに移っても、きっと誇りを持って働いているだろうと想像する。

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