小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

894 幸せとは ノルウェー・福井・ブータンの共通項は

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 ことしほど、人間の幸せとは何だろうと考えさせられたことはない。東日本大震災によって、多くの死者・行方不明者を出し、さらに東電福島原発の事故でいまも福島県の人々の多くが未来を信じることができない避難生活を余儀なくされている。 そんな中で2つの報告が目を引いた。

 国連開発計画(UNDP)が発表した2011年人間開発報告書と、法政大学の研究者がまとめた日本の幸福度に関する調査研究だ。 UNDPの報告では生活をして満足度の高さを「人間開発指数」として、187カ国と地域を対象に調査した結果、北欧のノルウェーが1位になった。

 一方、法政大大学院教授の調査では福井県がトップになった。 こうした調査とは別に以前のブログで紹介したように、ブータンには「国民総幸福量」(GNH)という精神的な豊かさを目指すユニークな政策がある。物質的豊かさを求めるより精神的豊かさ、幸福を目指す という考え方で、2007年の同国政府の調査では9割の国民が「幸福」と答えたという。

 ブータンの知識人はこうした結果について「経済的に豊かな先進国の人々が幸せとは限らない」と説明する。 人間開発指数は、国連の年次報告で公表されるもので、その国の人々の生活の質や発展度合いを示す指標だ。発達状況や先進性を表す指標としてその国の生活の質を調べており、数字の高い国が先進国と重なる場合も多い。先進国を判定するための新たな基準ともいわれるのだが、この指数が高い国の国民は幸福度も高いことは言うまでもない。

 では法政大の調査でなぜ、福井県がトップになったのだろう。この調査は各種の統計を利用し、40の指標を分けて、総合平均点を算出したという。こうした調査で福井に続き2位が富山、3位が石川と北陸3県が上位を独占しという。

 一方、最下位は大阪市長選に鞍替えした橋下氏がつい最近まで知事をしていた大阪府だった。 担当した教授は「3県に共通するのは「日本海側にあり、東京からも離れた人口100万人前後だが、ものづくり、第二次産業が集積している。失業率の低さ、保育所定員の高さなど就業環境や子育て環境も整っている」と分析している。

 ノルウェー、福井、ブータンに共通するものがあるのだろうか。ブータンには行ったことがないので、この3つを簡単に比較するのはできない。気候風土も異なる。(ノルウェーと福井は冬の寒さ、暗さでは似ているが)生活のレベルも違う。

 だが、住みやすさという点では共通するのではないか。ことし9月にノルウェーを旅した。少しの時間の滞在だったが、この国では満員電車で携帯の画面を見つめたまま中に詰めなかったり、自転車に乗って携帯をいじったりするような忙しい人々の姿は見かけなかった。

 知人によれば、ブータンは経済的に貧しくても国民は精いっぱい生活を楽しんでいるという。いま、日本にはそうした精神的ゆとりがないことが悔しい。 (写真はノルウェーオスロ郊外の町で開かれたフリーマーケットの子どもたち)