小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

言葉

1986 渚に燃やせかがり火 永遠の海への祈り

「大島」と聞くと、多くの人は伊豆大島か奄美大島を思い浮かべるかもしれません。2つの島に比べますと、福岡県宗像市の大島、山口県の周防大島(屋代島)、宮城県気仙沼市の大島は「知る人ぞ知る大島」といえるでしょう。気仙沼の大島は東日本大震災の被災…

1979「明日は明日の風が吹く」の日々 想像の旅へ出よう

「明日は明日の風が吹く」の「明日」の読み方は文語的な「あす」ではなく、俗語風の「あした」だ。「明日のことなど何も分からない、そんな明日を心配しても始まらない」や「先のことを考えても仕方がない」という無責任、自棄的な意味がある一方で、「明日…

1977 困難な未来予測 あなたは悲観的、楽観的?

現在の地球は混沌とした時代が続いていて、未来を予測することは難しい。できれば、楽観的に生きたいと思う。「21世紀の世界は、人間が未来を語るときに、今ほど暗い疑いを持つことのない世の中になるでしょう」(『深代惇郎の天声人語』朝日新聞)。46…

1976 かつての長老・翁が老醜に 若者よ奮起して

「老醜」という言葉があります。「年をとって顔や姿、心が醜くなる」という意味ですね。「老醜をさらす」とも言います。年をとって醜くなった顔や姿、心を人前に出し、恥をかく、ということです。昨今、内外でこの言葉通りの行いをする人たちが目に付きます…

1971 ラッセルの警告が現実に 人類に未来はあるか

「人類に未来があるか、あるいは破滅か。その解答の出ないまま私は死んでいく。ただ私の最後の言葉として遺したいのは、人類がこの地球に生き残りたいと思うならば、核兵器を全廃しなければならない」。イギリスの哲学者、バートランド・ラッセル(1872…

1970 散歩途中考えること 不可思議な世論調査

ここ1年私の散歩コースでもある遊歩道で平日、散歩やジョギングする人が少なくない。コロナ禍が影響していることは間違いないだろうと思われる。散歩は「(行く先・道順などを特に決めることなく)気分転換・健康維持や軽い探索などのつもりで戸外に出て歩…

1969 生涯現役と老害と 仲代さんと政治家たち

俳優の仲代達矢さんがラジオに出演し、最近米寿(88歳)を迎えたと話していました。1932(昭和7)年12月13日生まれ。今も現役の俳優です。政治の世界。新しくアメリカの大統領になったバイデンさんは78歳と、史上最高齢での大統領就任だそうで…

1966 今の日本に必要なものは 半藤一利が残した言葉

今の日本に必要なのは何か? 12日に90歳で亡くなったノンフィクション作家の半藤一利は、『昭和史 戦後篇』(平凡社)で5つの項目を挙げている。コロナで後手、後手に回る政府の対応策を見ていると、そのほとんどが欠けているように思えてならない。そ…

1964 1年前の不安が現実に 文明人と野蛮人の勇気の違い

新型コロナウイルス感染症の発生地といわれる中国武漢市が封鎖になったのは、2020年1月23日だった。あれから間もなく1年になる。私がこのブログで新型コロナのことを初めて書いたのも、この日だった。当時のブログを読み返すと、「新型コロナウイル…

1962 繰り返す歴史 知恵を絞ろう

歴史は繰り返すという。この言葉は、人類が成長していないことを表しているのではないか。コロナ禍のこの1年、世界、日本の動きを見ていると、そう思わざるを得ない。このブログで何回か書いている通り人類はウイルスに襲われ、それを克服した歴史といって…

1961 言葉の軽重 2020年の終わりに

フランスの詩人、ステファンヌ・マラルメ(1842~98)は「詩は言葉で書く」と、教えたそうです。当たり前のことですが、言葉を発することはなかなか難しいものですね。2020年、今年ほど言葉が重く、あるいは逆に軽く感じたことはありません。新型…

1957『今しかない』が第2号に 哀歓の人生模様

朝6時の気温は4度。昨日(氷点下1度)より5度高い。東南の空に、明けの明星(金星)が輝いている。日本海側では新潟を中心に大雪が降り、関越道で2000台以上の車が一時立ち往生した。一方、太平洋側はカラカラの天気が続き、房総半島の一部では水不…

1956 心に響く政治家の訴え 日本の首相は劣勢

画家のゴッホは、弟テオと親友の画家エミール・ベルナールに多くの手紙を書いている。その内容は含蓄がある。例えば、ベルナールに出した手紙(第4信)(岩波文庫)の中で言葉について、こんなふうに書いている。「何かをうまく語ることは、何かをうまく描…

1954 コロナに負けない言葉の力 志賀直哉と詩誌『薇』と

コロナ禍の日々。時間はたっぷりある。考える時間があり余っているはずだ。だが、世の中の動きに戸惑い、気分が晴れない日が続いている。そんな時、手に取った志賀直哉の『暗夜行路』の一節に、そうかと思わせる言葉があった。その言葉は、私たち後世に生き…

1951 男たちはどんな顔? 険しく卑しくもの欲しげでずる賢くなっていないか

「男たちはいい顔をしているだろうか。女の目から見てどう映るか」。男にとって耳の痛いことを書いた文章を読んだ。では日本の首相、アメリカの大統領は、いい顔をしているだろうか。考え込まざるを得ないのは、私だけではないはずだ。逆に、ニュージーラン…

1945 トランプ氏は「魚を与える」人? 出典は何か

「トランプのやっていることを見ていると、『魚を与えるのではなく、魚の捕り方を教えよ』ということわざを思い出したよ」。テレビで米大統領選の投開票直前の特集番組で、白人男性がこんなふうに、トランプ大統領の4年間の政治について語っていた。含蓄の…

1930 教養ある人間の条件 チェーホフの手紙から

ロシアの文豪、アントン・チェーホフは多くの手紙を書いたことで知られる。中でも実の兄あての教養に関する手紙は辛辣で、面白い。27歳だったチェーホフは、少しだけ年上の兄を「天才」と持ち上げたあと、1つだけ欠点があると書く。それは「無教養」だと…

1929 文芸作品に見る少年たち 振り返る自分のあの時代

最近、少年をテーマにした本を続けて読んだ。フィクションとノンフィクションに近いフィクション、ノンフィクションの3冊だ。読んだ順は馳星周『少年と犬』(文藝春秋)、高杉良『めぐみ園の夏』(新潮文庫)、佐藤優『十五の夏』(幻冬舎文庫)になる。そ…

1923 政権を投げ出した首相 現代の政治家が失ったこと

本来なら有終の美を来年の東京五輪で飾るはずだった。だが、安倍首相は28日、辞任を表明した。持病の難病、潰瘍性大腸炎が再発したというのが表向きの理由だ。あと1年の任期を残しての辞任の背景に何があるのだろう。病によって精魂ともに尽き、政治のリ…

1917 8年間に6000キロを徒歩移動 過酷な運命を生き抜いた記録

今年5月、このブログで『今しかない』(埼玉県飯能市の介護老人保健施設、楠苑・石楠花の会発行)という小冊子を紹介した。この中に「「私の人生は複雑で中国に居たんです。抑留されて8年間いました。野戦病院だったから、ロシアの国境近くから南の広東ま…

1911 私利私欲を憎め 小才子と小悪党がはびこる時代

現代の日本社会を見ていると、小才子(こざいし)と小悪党が跋扈(ばっこ)し、私利私欲のために権力を動かしている者たちが大手を振って歩いている。これは独断と偏見だろうか。決してそうではないはずだ。コロナ禍に襲われた今年も残りは5カ月余になって…

1909「人生は死に至る戦いになる」かみしめる芥川の言葉

先日、俳優の三浦春馬さん(30)が自殺し、テレビのワイドショーでは連日過熱報道が続き、行き過ぎだという声も出ている。そんな折、今月24日が「河童忌」であることを思い出した。大正文壇の寵児といわれた芥川龍之介の命日(1927年7月24日)だ…

1904「医」と「恥」から想起すること 国手が欲しい国は

山形県酒田市出身の詩人吉野弘(1926~2014))の詩『漢字遊び』の中に「医」「恥」という短い作品がある。コロナ禍の現代を端的に表すような詩を読んで、私は漢字の妙を感じ、同時に多くの政治家の顔を思い浮かべた。 吉野の「医」は以下の通りだ。…

1901 富山平野は「野に遺賢あり」 中国古典の言葉から

「野(や)に遺賢(いけん)なし」。中国の古典「書経」(尚書)のうち「 大禹謨(だいうぼ)にある故事である。「民間に埋もれている賢人はいない。すぐれた人物が登用されて政治を行い、国家が安定しているさまをいう」(三省堂・大辞林)という意味だ。現…

1883「 栄冠は君に輝く」を歌おう『今しかない』(2)完

前回に続き、『今しかない』(埼玉県飯能市・介護老人保健施設飯能ケアセンター楠苑、石楠花の会発行)という小冊子に絡む話題を紹介する。夏の全国高校野球大会が春の選抜大会に続いて中止になった。楠苑は全国高校野球連盟(高野連)に対し、この冊子など…

1882 『今しかない』 短い文章で描くそれぞれの人生(1)

それぞれの人生を垣間見るような思いで、凝縮された文章を読んだ。埼玉県飯能市の介護老人保健施設・飯能ケアセンター楠苑(1997年6月2日開設、定員98名)石楠花の会発行の『今しかない』という44頁の小冊子である。頁をめくるとほとんどの文章が…

1880 専門医の厳しい言葉 辛い入院生活を描いた斎藤茂吉

「犯罪的です」。新型コロナに関するテレビを見ていたら、大相撲の三段目力士、勝武士さん(28)がこの感染症で亡くなったことに関して、専門医はこう話し、さらに「人災です」と強い口調で国の姿勢を批判した。つい最近まで新型コロナに感染しているかど…

1866 科学には国境がない かみしめたいパスツールの言葉

第一次世界大戦が終結したのは1918(大正7)年11月のことだった。この年の3月初めに米国カンザス州の陸軍基地から発生したとみられるインフルエンザA型(H1N1型)は、欧州戦線に従軍した米軍兵士を通じてヨーロッパに伝わり、さらに世界的流行(パ…

1864 桜の季節に届いた手紙「心は自由」「若者へ伝えること」

春立つや子規より手紙漱石へ 榎本好宏 俳人の正岡子規と文豪、夏目漱石は頻繁に手紙を交わしたそうです。この句は立春の日、子規から漱石に手紙が届いた情景を描いています。立春から春の彼岸が過ぎ、新型コロナウイルスによる感染症が世界で爆発的に流行し…

1840 続「語るに落ちる」人権意識欠如 「桜を見る会」名簿廃棄の首相答弁

昨年6月、このブログで「語るに落ちる」という言葉(ことわざ)を使い、政治家の言動について書いたことがある。残念ながら、その後もこのことわざ通りの動きが政治の世界では続いている。連日、ニュースで取り上げられている「首相と桜を見る会」に関する…