2022-09-01から1ヶ月間の記事一覧
「自分の言ふ言葉の意味が、他人に解らないというふことはどんなに悲しいことであるか。自分の思想が他人に理解されないといふことは死刑以上の苦しみではないか」。これは、詩人の萩原朔太郎(1886~1942)の「言はなければならない事」という『散…
いつもの喫茶店。朝の散歩の後、ふらりと入ると、見知った顔の2人がいた。彼らは、私が店に入ったことに気が付かず、何やら話し込んでいる。「昨日の安倍元首相の国葬は……」という声が聞こえる。ラジオ体操仲間のMさんとKさんの会話だった。昨日は安倍元…
くらい想念を軽蔑しながら、私の幸福と平和は、いつもくらい。 くらい平和のなかで、私の笑ひはいつも痩せてゐる。 立原道造(1914~1939)の『くらい想念を』という詩の冒頭だ。第1次世界大戦が始まった年に生まれ、第2次大戦が起きた年に24歳…
秋の彼岸。墓参りに出かけた人は少なくないだろう。しかし、戦争で死んだ人たちの、遺骨や遺灰がない墓も珍しくない。戦争の責任を問われ、極東国際軍事裁判(東京裁判)で死刑判決を受け、執行された東条英機元首相らA級戦犯7人の遺骨も、遺族には返還さ…
コスモスが風に揺れて美しい季節になりました。秋の花の中で、コスモスが好きだという人は多いはずです。私の知人もその一人でした。過去形で書くのは、この人が亡くなって30年の歳月が流れたからです。知人は戦前に旧満州(中国東北部)に渡り、戦後もそ…
千葉市の幕張にあるZOZOマリンスタジアムのプロ野球パリーグ・オリックス~ロッテ戦に鳥の群れが迷い込み、試合が21分も中断する珍事があった。テレビのBS12の中継でその風景を見た。ナイター設備の中を飛び回る鳥の群れは美しく、争いごとに明け…
ツクツクボーシツクツクボーシバカリナリ 正岡子規 今朝、ラジオ体操会場近くにある木からツクツクボウシ(法師蝉)の鳴き声が聞こえた。晩夏から初秋にかけての蝉だ。9月に入ってよく聞くようになったが、今年はこの蝉がかなり長く鳴いている。今日は糸瓜…
この夏は、街路樹にかなり世話になった。日中、暑さを避けるため木陰を求めて歩いた。例えば、私の住む地域ではけやき並木が遊歩道にあり、駅に向かう途中、この緑陰が暑さを避けるコースにもなった。このけやきも最近傷んでいるものもあって、台風にやられ…
コロナ禍、ウクライナ戦争、災害の続発、物価高……。21世紀の地球は、いいことがない。そんな思いに沈むときは、本を読む。本棚から古びた文庫本を取り出した。井上靖(1907~1991)の『星と祭』(角川文庫)だった。先日、中秋の名月を見たばかり…
むらがりていよいよ寂しひがんばな 日野草城 吹く風がさわやかになり、秋の彼岸(ことしは9月20日~26日。中日は23日)が近づいて来たと思ったら、あちこちで曼殊沙華(ヒバンバナ)を見かけるようになった。本来は赤い花だが、最近は亜種の白い花も…
近所でネムノキの薄紅色の花が咲いているのを見つけた。普通は梅雨の頃に咲いている花で、この時期に花を見るのは初めてだ。狂い咲きかと思ったが、そうではないようだ。一度咲いた後、盛夏のころは一休みして夏の終わりにもう一度咲くこともあるらしい。私…
最近、時々だが絶望と希望について考える。この世は閉塞感が強く、日々のニュースを見ても希望を感じるものは少ない。一方で、ため息をつく記事が圧倒的に多いのだ。「希望とは、もともとあるものともいえぬし、ないものともいえない。それは地上の道のよう…
行きつけの喫茶店に入ると、見知った顔の先客が2人いた。相席しようと近づくと、何やらきつい表情で話し合っている。その顔を見たら相席をするのが悪いと思い、気付かれないように後ろの席に座って、コーヒーを頼んだ。新聞を読みながら香りのいいコーヒー…
(センニンソウの花) 山形の友人から「この秋は山ブドウやイチジクが大豊作、サトイモ、サツマイモも順調で、稲刈りもそろそろです」という便りが届きました。9月、季節は晩夏から初秋へと移ろいを始めています。「春夏秋冬といっても、じっさいにはそのそ…
散歩道に豆粒程度の小さな青い実が落ちている。ことしもクスノキに白くて淡い黄緑色の花が咲いたので多くの実がつき、風で枝が揺れて実が落ちたようだ。クスノキの寿命は長い。樹齢40年程度のこの木はまだ若く、元気旺盛な木を見ると私まで力をもらったよ…
野球少年にとって、「投手で4番」は夢といっていいだろう。高校野球までは、その夢を実現させる選手は珍しくない。だが、その後急にいなくなるのは、投手と打者、いわゆる二刀流をやるのが極めて難しいからだ。野球を職業とするプロ野球で投手と打者の両方…