小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1970 散歩途中考えること 不可思議な世論調査

 

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 ここ1年私の散歩コースでもある遊歩道で平日、散歩やジョギングする人が少なくない。コロナ禍が影響していることは間違いないだろうと思われる。散歩は「(行く先・道順などを特に決めることなく)気分転換・健康維持や軽い探索などのつもりで戸外に出て歩くこと」(三省堂新明解国語辞典第7版)だ。他人のことは知らないが、私は散歩をしながら様々な(独断と偏見に満ちた)考え事をしている。昨日の新聞に掲載された世論調査結果で不可思議なことがあったので、今朝の散歩ではその記事のことが頭を占めていた。    

 作家の大佛次郎(1897~1973)は『今日の雪』(光風社)という随筆で、ぶらぶら歩きは、西洋人が来て教えてくれたもので、それまでの日本人は散歩を知らなかった、と書いている。武士も町人も用がない外出は控え、ぶらぶら歩きをするのは遊び人と隠居ぐらい、例外的に武士で散歩をしたのは勝海舟だったという。長崎に留学中、オランダ人の先生から散歩の習慣を仕入れたようで、海舟が新しい考え方をしたのは散歩好きによるものではないか、というのが大佛の推測だ。  

 散歩の効用は間違いなくある。精神的、肉体的に散歩はいいと思う。作家の藤沢周平(1927~1997)は、かなりの悪天候の日を除いて1日に1回、自宅から約20分の駅前まで散歩に出かけたそうだ。喫茶店でコーヒーを飲んだあと書店をのぞき、気が向けばパチンコ屋に入る。このようなのんびりとした散歩の一方で、体がなまったと思う時は約2時間かけてせっせと歩いたという。冒頭紹介した辞書には「(行く先・道順などを特に決めることなく)」というカッコ書きがあるが、私はほぼ同じ時間に歩き、道順も決めている。同様の人も多いのではないかと思われ、このカッコの説明は不要だろう。  

 今朝の散歩途中、頭を占めたのは昨日(25日)朝日新聞産経新聞(産経とFNN=フジニュースネットワーク)に掲載された世論調査の数字だった。両社とも23、24日に実施し、菅内閣の支持率は朝日が33%(不支持45%)、産経が支持52・3%(不支持45・0%)と、かけ離れた数字が出た。朝日は前回より6%下がったとして、この原因は「新型コロナ対応への批判が大きく影響しているとみられる」と書いている。     

 一方、産経は「新型コロナウイルスのワクチンへの期待に加え、携帯電話料金の引き下げなど若者をターゲットにした施策を積極的に打ち出していることも、支持率向上に影響したとみられる」と分析した。産経・FNNは業務を委託していた調査会社が実際に電話を掛けずに架空のアンケート結果を入力するという不正が発覚、昨年6月から調査をストップしていたが、今回再開したという。  

 他のメディアも今月調査を実施しており、内閣支持率は朝日と同様(共同通信41・3%、NHK40%、読売・NNN39%、時事通信34・2%、毎日33%)低落傾向にある。それと比べると、産経の調査結果は驚きであり、「?」と思った人は少なくないようだ。産経は「回答が不明確な場合『どちらかといえば』と再度質問して回答を得た」という手順を踏んでいる。いわゆる「重ね聞き」と呼ばれる手法だそうだ。これを見た読者からは「回答を誘導して高めの支持率を出しているのではないか」と疑う声もあるという。いずれにしろ、こんな不可思議な調査結果を見たのは初めてだ。  

 今朝の天気は、薄曇り。肌寒い。気分もさえない。散歩の効用も台無しだ。夕方の散歩は、頭の中を無にして歩こう。