2024-11-01から1ヶ月間の記事一覧
「人の悪口を言うのを怒る人は、訳が分からない。どうして言わずにいられようか」。これは、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス・social networking service)時代といれる現代のことではない。清少納言の『枕草子』第255段(「人の悪口はいけ…
どっどど どどうど どどうど どどう 青いくるみも吹きとばせ すっぱいかりんも吹きとばせ どっどど どどうど どどうど どどう 宮沢賢治『風の又三郎』(新潮文庫)の書き出しだ。9月1日、強い風の中やってきた転校生の話だから、「どっどど どどうど どど…
喜び、悲しむ、そんなことのために、 人間は生まれてきたものではないのです。 働く、そして、きょうはきのうより一歩前進する、 これが人生の目的、人間の生き方です。 ⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄ アメリカの詩人H・W・ロングフェロー(1807~1882)の『人生の…
「人生邂逅し、開眼し、瞑目す」。北海道函館出身の文芸評論家亀井勝一郎(1907~1966)が残した言葉(『愛と結婚の思索』大和書房)です。「人生は多くの出会いを通じて物事を知り、それまで見えていなかったものが見えるようになって、終わりの時を迎える…
会津・勝常寺 「時雨」はこの季節特有の雨のことです。歳時記には「冬の初めに降る通り雨をいう。降る時間は短く、地域も限定されている。時雨という季語は京都で生まれ、京都の初冬の美意識として完成されたのだと見ることも可能である」(『角川俳句大歳時…
今から2500年前の中国春秋時代の思想家といわれる老子の言葉(道=タオ~生き方)は、現代でも通ずるものが少なくない。春秋時代は弱肉強食の戦乱の時代でもあった。全81章からなる老子の言葉には、当然「戦争」に関する考察も含まれている。ロシアの…
「僕は三文詩人に」という詩を書いたのは立原道造(1914~1939)だ。「三文小説」「三文芝居」「三文文士」「三文判」など、低級で値打ちがないこと意味する「三文」を自分の詩作に当てはめ「三文詩人」という表現を思いついたのだろう。ただ、道造の詩は短…
兵庫県の出直し知事選挙で、パワハラ疑惑などで失職した前知事の斎藤元彦氏が再選された。直前までは元尼崎市長の稲村和美氏がわずかにリードし、斉藤氏が追い上げていると新聞には報じられていたが、ふたを開けてみると、米国の大統領選で返り咲きが決まっ…
けさはけさの落葉はじまる石畳 昨夜来の雨と風で街路樹のけやきの葉がかなり遊歩道の上に落ちている。秋が深まり、冬の到来を感じさせる風景だ。この句の舞台は長崎だ。かつての外人居留地があった大浦周辺に残る石畳に、落葉が積っていく姿を描いた長崎の医…
芥川龍之介の『夢』という短いエッセイの中に、「美しい紺色は札幌色」という表現がある。何ゆえに紺色と札幌が結び付いたのか説明はない。ただ、それぞれの都市に合う色があるかもしれない。それでは東京は何色なのだろう。私の住む街は? 戦火の渦中にある…
沖縄那覇にある首里城正殿などが火災(2019年10月31日)になって5年が過ぎた。2026年秋の完成に向け、再建・復元工事が進んでいるという。家族が首里に住んだことがあって那覇を訪れる度に首里城周辺を散歩しただけに、あの火災は衝撃を受けた…
2階の部屋の窓の外 けやきの街路樹が見える四季折々の「色」に変化する大きな木々暦の上では初冬 現実の自然は晩秋 けやきの葉が黄や赤に色づき 陽光に輝き出した朝その下を小学生たちが 三々五々歩いている ⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄ 春 芽吹きの時夏 すっか…
プロ野球で完全試合も達成した佐々木朗希投手について、所属するロッテがポスティングシステムで大リーグ(MLB)に移籍することを認めると発表し、プロ野球ファンの間で賛否の声が巻き起こっている。賛否と書いたが、メディアやネットでは佐々木を非難する意…
「アート書評」という言葉を聞いて、普通の人は絵画や芸術関係の出版物に関する本の書評と思うだろう。ところが、それは違うのだ。イラストレーターで多彩な才能を発揮し続ける横尾忠則が朝日新聞の書評欄で「展開」している書評を朝日はこのように名付けた…
『郵便局の窓口で』という詩や散文詩『郵便局』を書いたのは、萩原朔太郎だ。かつての郵便局は詩のテーマになるほど人々にとって大事な存在だった。だが、メールが発達した現在、郵便局は苦境に立たされている。郵便料金もこの秋(10月1日)から大幅値上…
「きのうの出来事に関する新聞記事がほとんどうそばかりである場合がある」。寺田寅彦が『随筆集』(岩波文庫)で、こんなことを書いているのを読んだ。戦前の話だ。それにしても、随分なことを書いたものだと思う。だが「中(あた)らずと雖(いえど)も遠…
「喨々(りょうりょう)」という言葉がある。最近ほとんど見かけないが、高村光太郎の『道程』の「秋の祈」という詩の中に、この言葉が使われている。「 音が明るく澄んで鳴り響くさま」を言い、光太郎は秋という季節にふさわしい言葉として採用したのだろう…
人はなぜ口笛を吹くのか。私は散歩をしていて、気分がいい時などつい口笛を吹くことがある。歌人である石川啄木の詩集を開いたら、「口笛」という詩が載っており、読んでいて気持ちが軽くなった。この詩と似た句を放浪の俳人、種田山頭火も作っていたことを…
(少し色づいた街路樹のけやき) 「人間が人間でなくなった時、わたしたちの楕円形に回転する小さな球はいったい何だろう? 小さながらくただ。不快で、いやらしくて、大きくなりすぎた、小さながらくただ。(中略)1945年を忘れるな!」 『ケストナーの…
松明あかし地と海と空壊れても 東日本大震災の被災地、福島県須賀川市は東京五輪のマラソンで銅メダルを獲得した名ランナー、円谷幸吉の故郷だ。同市出身の俳人、永瀬十悟(とうご)の句である。「3・11」から間もなく13年8カ月。原発事故で故郷を追わ…