小径を行く 

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。(筆者=石井克則・遊歩)

2023-10-01から1ヶ月間の記事一覧

2415 自然は選り好みがない 早くも出現ビーナスベルト

今朝の日の出は午前6時だった。西の空には月が輝き、その横には木星が光を放っていた。いつものコース。その下方の空はピンクの帯、さらに下には藍色の空が広がっている。こんな空を見て、立原道造の「かなしいまでに」という詩の一節が頭に浮かんだ。美し…

2414 秋は「漫歩」の季節 朔太郎に誘われて

詩人の萩原朔太郎は、散歩が大好きだったという。書き物をして家にいる時以外は、半日は外にいるというから、相当な散歩マニアといっていい。そのことは、朔太郎のエッセイ『秋と漫歩』に書かれている。私も散歩は嫌いではないが、朔太郎ほどではない。これ…

2413 被ばくは『第五福竜丸』だけではなかった 闇に沈んだ真相

最近、知人から『第五福竜丸』事件関連の資料を受け取った。この事件のことは昔中学の社会科で習い、読売新聞がスクープしたことも知っていた。ただ、もらった資料には私がほとんど知らなかった内容が含まれていた。(今回は少し長めです。興味がある方はお…

2412 霧立つ朝に 漱石に見せたい自然

今朝、私の散歩コースの調整池周辺は霧が立ち込めた。歳時記には霧について「水蒸気が地表や水面の近くで凝結し、微少な水滴となって大気中に浮遊し、煙のように見えるものをいう」とあった。確かに、今朝の霧は煙のようだった。このところ、周辺は霧が立つ…

2411 ザクロと『黒い雨』民衆の悲しみ見続けて

ラジオ体操仲間から、ザクロの実を1つもらった。実が割れ、赤く輝く種子が幾つも付いている。世界各国にあり、熟した果実に多数の赤い種子が入っていることから、世界的に子宝の象徴として縁起のいい樹木と言われているそうだ。その一方で、一部には人肉の…

2410 愚かな連中が勇気を持つ時代 ケストナーの嘆き現代も

「世界の歴史には愚かな連中が勇気を持ち、賢い人たちが臆病だった時代がいくらもあります。これは正しいことではありません。勇気ある人たちが賢く、賢い人たちが勇気を持った時初めて、人類の進歩が見られるようになるでしょう」。これは、『点子ちゃんと…

2409 公園で倒れて一晩 「虫老ゆ」の季節の中で

「虫老ゆ」(秋の虫が、晩秋から初冬の頃にまだ細々と鳴いていること・冬の季語)の季節だ。この夏は猛暑が続いたと思ったら、秋は駆け足で進み、冬へと近づいている。立冬までにはまだあるが、このところの昼と夜の温度差が10度以上になるという、大陸的…

2408 安保理でまた拒否権 クローグの壁画が見つめる「茶番」

テレビの国連に関するニュースで、安全保障理事会議場が映ることがある。その時、議場にある巨大な「壁画」も映し出される。作者はノルウェーの画家、ペール・ラッソン・クローグ(1889~1965)だ。この壁画は北欧の伝説を基に描かれ「国連の任務の…

2407 許されないガザの病院攻撃 ブリューゲル『死の勝利』の世界の恐怖

イスラム組織、ハマスが実効支配するパレスチナ・ガザ地区にあるアフリアラブ病院が17日夜、空爆を受け、患者ら500人以上が死亡したというニュースが流れた。ガザの保健当局はイスラエルの攻撃だと発表、イスラエルはハマスとは別のイスラム過激派「イ…

2406 名曲と共に生きる 谷村新司逝く

シンガソングライターの谷村新司が亡くなった。74歳。多くの人に口ずさまれた歌をつくり、歌った名歌手だった。私の手元に2冊の本がある。オペラ歌手の米良美一編『日本のうた、やすらぎの世界』(講談社+α文庫=日本で昔から歌い継がれている歌の歌詞3…

2405 パレスチナの行方 人間の英知で解決を

パレスチナでのイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘は、第5次中東戦争の様相を呈している。イスラエルはハマスが実効支配するガザ地区で空襲を続け、住民に対しては南へと退避するよう勧告し、地上戦に入る準備を進めている。緊迫の度が強まる一方、ハマ…

2404「よきサマリア人」のたとえはどこに 戦争は人類の支配欲から

「過去のあらゆる時代がそうであったように、これから先いつまでも、人間は同胞を支配したいと願い、大地は老若の血で赤く染められるであろう」。イギリスの作家、ジョージ・ギッシング(1857~1903)が『南イタリア周遊記』(岩波文庫・小池滋訳=…

2403 返り咲いた高台の桜 人を惹きつける小さな花

私が住む街の高台にある公園の十数本の桜のうち1本だけが開花した。返り咲きである。歳時記(角川)には「帰り花、返り花、忘れ花、狂ひ花、狂い咲き、二度咲き」とあり、「小春日和に誘われて咲く季節外れの花のこと」と出ている。春の花に比べると、やや…

2402「遠き者来たらず」の埼玉 虐待禁止条例案の挫折

1990年代、2年間浦和市(現在のさいたま市)に住んだことがある。東京への通勤が便利で、東京や神奈川に比べると地価も安いということで埼玉県の人口は急速に増えていた。海はない。しかし秩父や長瀞など身近な観光地があり、自然も豊かだ。子育てもし…

2401「明窓浄机」は遠いのか 読書の楽しみ方

「明窓浄机」(めいそうじょうき)という言葉は、今はほとんど聞かれなくなった。「明るい窓とちり一つない清潔な机」から転じて、明るく清潔で落ち着いて勉強できる書斎、読書や物を書くことに適している場所を言う。何となく想像はできるが、学者は別にし…

2400 困難な自然との共生 クマ出没の時代

秋田県美郷町で作業小屋に長時間入り込んでいたクマ(熊)3頭を5日に捕獲し駆除(殺処分)したことに対し、秋田県や同町に主に県外から抗議の電話やメールが殺到しているという。地元の人にとって、迷惑で腹立たしい行為だろう。ことし1月のこのブログで、…

2399 季節のバトンタッチ 秋思のこのごろ

スポーツのリレー以外にもさまざまなバトンタッチがある。四季がある自然界。観察していると、今はバトンタッチの季節といえる。私の散歩コース、調整池の周辺でも蔓延っていた葛に代わるように、急にススキとセイタカアワダチソウが目立ってきた。前者は白…

2398 スポーツに求めるもの 「爽やかさ」が一番

秋はスポーツの季節だ。やるのもいいし、見るのもいい。スポーツ観戦で私が求めるのは、何よりも「爽やかさ」である。「爽やか」は言うまでもなく「すがすがしく快いさま。気分のはればれしいさま。爽快」(広辞苑)のことであり、俳句では秋の季語になって…

2397 夕焼けは悲しみの風景 極限状況下の受け止め方

夕焼けはいつ見ても美しい。俳句の季語では、夕焼けは夏の季語で、それ以外の季節の季語はそれぞれ「春夕焼」「秋夕焼」「冬夕焼」という。ようやく秋めいてきた今の季節の夕焼けは、「色も淡く、たちまち消えてゆく」のが特徴だそうだ。世界各地で様々な夕…

2396 どん底でも希望があれば 藤岡陽子『リラの花咲くけものみち』を読む

(富良野のラベンダー畑) 人の生き方は運命にかなり左右される。家庭の事情に幼い子どもはどうすることもできない。それでも、希望を持つことができれば幸いだ。藤岡陽子『リラの花咲くけものみち』(光文社)は、不幸な家庭に生まれ育ち、一時はどん底に陥…

2395  輝く音楽家たち 港が見える丘公園にて

人にはそれぞれ、青春時代の思い出がある。私にとって横浜の「港の見える丘公園」はその舞台だった。昨年から今回で3度目、ここへやってきた。咲き始めたバラの香をかすかに感じながら、公園を歩いた。この夏、猛暑が続いたためか、四季咲きのバラの花は少な…