小径を行く 

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。(筆者=石井克則・遊歩)

2024-10-01から1ヶ月間の記事一覧

2643 旅人と呼ばれて 芭蕉・バード・山頭火の世界

(白く輝くススキの群生) 旧暦七十二候の「霎時施(こさめときどきふる)」は、昨28日だった。「時雨(しぐれ)が降るようになるころ」という意味だ。「旅人と我名よばれん初しぐれ」(芭蕉「笈の小文」から」。「今日から私も旅人と呼ばれるようになろう…

2642 いつまでも青年の輝きを 強固な自己意識貫く

(2度咲きした河津桜) 《入社したころの自分の写真と今を見比べてみると愕然(がくぜん)とする。あのころは美少年とは言えないまでも、視力2・0の目に眼鏡は不必要だったし、ふさふさした髪の毛は真っ黒であった。それに自分で言うのは厚かましい話だが…

2641 ネムノキが3度咲き 経済人類学者の人類危機への提言

「合歓の花が七変わりすると盆が来る」(ねむの花の咲きおわったころが盆)ということわざが岐阜県にあると『続故事ことわざ辞典』(鈴木栄三編、東京堂出版)に出ていた。ネムノキの花は7月下旬から8月に咲く。咲き終わったころに、旧盆(8月)がやって…

2640 機械より人間 世論調査とAI放送音声の虚しさ

時々、固定電話や携帯電話に世論調査の電話がかかってくることがある。昨夜も携帯のベルが鳴り出し、登録されていない番号が出ている。受話ボタンを押すといきなり録音された機械的音声が聞え、それは27日投開票の衆院選挙に関する世論調査の電話だった。…

2639 後ろからゆつくり吹く秋の風 朝焼けの空に向かって

うしろよりゆつくりゆけと秋の風 昨日に続いて秋に関する俳句を紹介する。俳句にも前衛の世界があるようで、この句の作者、酒井弘司(1938~)は、このカテゴリーに属する俳人だという。何となく秋に何かを思うという雰囲気が伝わる、私の好きな句の一つだ。…

2638 秋の夕暮れと『てぃんさぐぬ花』 懐かしき鳳仙花

ホウセンカの花 あやまちはくりかへします秋の暮 無季俳句の俳人、三橋敏雄(1920~2001年)の句だ。広島平和記念公園にある原爆死没者慰霊碑の「安らかに眠って下さい 過ちは 繰返しませぬから」をもじったことで知られる、世の中の無常観を表した句だ。秋…

2637 無軌道犯罪と水俣病と『地方記者の回り舞台』を読む

いわゆる「闇バイト」といわれる無軌道な犯人たちによる広域強盗・強盗殺人事件が相次いでいる。フィリピンの拘置所から強盗や特殊詐欺を指示していた「ルフィ」らのグループが逮捕されたのは昨年2月だった。しかし、これ以後も似た事件は続き、ことし8月…

2636 もう一度行きたい場所は 北と南の美しき廃校

~更け行く秋の夜 旅の空の~ラジオから流れるメロディーを聴きながら、この歌の歌詞を自然に口ずさんでいる。アメリカの作曲家オードウェイの原曲(家と母を夢みて)に犬童球渓が作詞した名曲(『旅愁』)だ。少子高齢化現象が進み、日本各地で住む人がなく…

2635 季節の移ろいの中で 変わらぬセザンヌの少年の眼差し

(ススキとセイタカアワダチソウが棲み分け) この夏の猛暑が尾を引いている。10月も中旬(16日)だというのに、私が住む首都圏では現在(午後2時半)の気温が26・1度と「夏日」となっている。昨日、何人かで集まった会合でも自然界の異変が話題にな…

2634 遅々たる歩みでも 「核廃絶と生ましめんかな」

年を経るごとに、時間が過ぎるのが早くなる印象だ。「一日は何をしたやら秋の暮」とは正岡子規の句だが、10月も中旬ともなると「一年は何をしたやら……」と、考え込んでしまうのだ。しかし、目を世界に向けると、こんな悠長なことを言ってはいられない動き…

2633 被団協にノーベル平和賞 焼き場に立つ少年も一役

(ススキが美しい近所の調整池周辺) 今年のノーベル平和賞に、核廃絶の訴えを続けてきた「日本原水爆被害者団体協議会」(日本被団協)が受賞することが発表された。関係者の長い努力が報われたと言える。9年前、今回の受賞の前触れとなるような動きがあっ…

2632 秋空の下に似合う花 キバナコスモスも咲いた

雲のみか秋天遠きものばかり 斎藤空華(さいとう・そらげ。澄みとおった秋の空。雲も、山も、鳥も、思いも、すべて遥かかなたにある=山本健吉)10月もきょうで9日。現在(午前8時20分)の気温は15・7度。涼しさを通り越して寒いくらいだ。外は雨。…

2631 敵味方が歌った『リリー・マルレーン』 切ない老マンドリン弾き

第2次大戦下、ヨーロッパを中心にヒットした歌がある。『リリー・マルレーン』というドイツで作られた曲だ。戦場に行った兵士が故郷の恋人への思いを歌った歌詞で、日本では戦後流行した。現在、ウクライナ、中東ガザ、レバノンで戦闘が繰り返されている。…

2630「秋の日のヴァイオリンのため息」 名詩と暗号と写真家と

フランスの詩人、ポール・ヴェルレーヌ(1844~1896)の詩でよく知られているのは上田敏(1874~1916)訳の『落葉』だろう。同じ詩は、堀口大學(1892~1981)によって『秋の歌』と訳されている。どちらも名訳だが、秋の風が肌に感じる季節に口に出して読ん…

2629 小さい秋を見つけた キンモクセイと名も知らぬ花

(ススキに混じって群生するオトコエシ) (山形から届いた新米・つや姫の稲束) 朝起きて、新聞を取りに行くと、キンモクセイの香りが漂っている。そうか、今年も秋がやって来たと思う。昨日は9月の暑さが戻ったような一日だったが、小さな秋は少しずつ近…

2628 野球人生の光と影 大谷の活躍と田中の凋落

今年のスポーツ界の話題の中心は大リーグの大谷翔平だった。最高の契約金(10年で7億ドル、日本円で約1015億円)でエンゼルスからドジャースに移籍し、肘の手術で投手としては出場せず、打者に専念し、50本塁打、50盗塁(最終的に54本、59個…