小径を行く 

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。(筆者=石井克則・遊歩)

2022-08-01から1ヶ月間の記事一覧

2182 鬱陶しい日々へ 寅さんの口上再び

「天に軌道があるごとく、人はそれぞれ自分の運命というものを持っております。嘘つきは泥棒の始まり、と申しますが、最近は平気でごまかそうという政治家がいるようでございます。そうは行きません。おてんとうさまはよく見ているのでございます。いつか必…

2181 優しいサウスポー 全力投球した友人偲ぶ

夏の高校野球甲子園大会で宮城県代表の仙台育英が優勝した。大会優勝は東北の高校で初めてだ。かつて高校野球のレベルは、西高東低と言われた。今やそんな時代は昔の話になった。私の高校時代、野球部のエースだった級友のI君が2年前にこの世を去った。福…

2180 野球少年たちの戦争と平和 及川和男『甲子園への遠い道』

「野球は筋書きがないドラマだという至言は、とくに栄光以外なにものも求めない高校野球において、ぴったりと心に喰いこむ。意外性とドラマ性は、それを演ずる高校生自身の哀歓にとどまらず、見る人をも感動させてやまない。ただ一箇のボールをめぐってのプ…

2179 もう一つの『種をまく人』から 先人たちから何を学ぶのか

ジャン=フランソワ・ミレー(1814~1875)といえば、『落穂拾い』『晩鐘』『種をまく人』」などの農民画で知られるフランス・バルビゾン派の画家だ。このうち『種をまく人』(油絵)は、1850年、ミレー36歳の時に発表され、画壇に衝撃を与え…

2178「悪花は良花を駆逐する」のか 繁殖力旺盛な「シンテッポウユリ」

最近、あちこちで白いユリの花を見かけることが多くなった。最初は花の形から「テッポウユリ」だと思っていた。だが、植物辞典によると、テッポウユリの開花時期は6月ごろとあり、葉の形も違う。行き着いたのは「シンテッポウユリ」という繁殖力の強い、外…

2177 自家撞着の新聞社 五輪組織委元理事逮捕の社説

昨年開催された東京五輪・パラリンピック(以下、東京五輪あるいは五輪)に絡み、組織委員会の高橋治之元理事が大会スポンサーだった紳士服大手のAOKIホールディングから5100万円の賄賂を受け取った容疑でAOKIの3人とともに東京地検特捜部に逮…

2176 貧弱な言葉は心に響かず「十年一日」の首相あいさつ

一国のリーダーともなれば、様々な会合でのあいさつも仕事のうちだ。8月。岸田首相は広島、長崎の平和式典に続き終戦記念日の15日は、全国戦没者追悼式でも式辞を述べた。これらの全文は新聞にも掲載されている。そのキーワードは文章の丸写しである「コ…

2175 勤労動員の女生徒たちの悲劇  友達と手をつなぎながら……

沖縄戦での「ひめゆり学徒隊」の悲劇は、多くの人に知られている。糸満市にある「ひめゆりの塔」を訪れ、涙を流した人は多いはずだ。そうした学生たちの悲劇は、他の地域でも起きている。『神様は海の向こうにいた 平和を願って戦争体験を語る』(福島県棚倉…

2174 フジコ・ヘミング画『紙のピアノの物語』「幸せは自ら紡ぐもの」

ピアニストのフジコ・ヘミングさん(フジ子・ヘミング=本名:ゲオルギー=ヘミング・イングリッド・フジコ)が、絵本を出していることは知りませんでした。そのことを最近送られてきた齋藤八重子さんという知人の文章で知ったのです。絵本は松永順平さん原…

2173 薄暗い林にひっそりと咲く花 思い馳せる77年前の夏

朝、元々の雑木林を整備して造られた自然公園の山道を歩いた。虫除けスプレーをしていたものの、やぶ蚊が寄ってきて、快適とはいえない。この道で季語にもなっていない地味な花を見つけた。「ヤブミョウガ」という花だ。スマートフォンのカメラを向ける。こ…

2172 朔太郎作品もじり鋭く風刺 五輪元理事と大会スポンサーの疑惑

友人が「風哲」というペンネームで川柳と「犬の遠吠え」という風刺の短文(言葉)をウエブサイト(ウォッチドッグ21)に書き続けている。最近の作で目に付いたのは、《『パリ五輪』 せめてはAOKIの背広着て…——朔太郎》(7月30日)だった。よく考えた…

2171 炎天で感じる「言葉」の大事さ あたり前の事でも

ある日の午後、手元の辞書『旺文社国語辞典第8版』(松村明、山口明穂、和田利政編)を何気なく開くと、巻末の付録に「和歌・俳句索引」の項目があり、「本文に全釈つきで収めてある和歌・俳句を引くためのものである」という説明のあとに「百人一首」「現…

2170 泉求めて難行苦行 猛暑の中での「歩々到着」

「泉に添いて 茂る菩提樹……」は、シューベルト作曲の歌曲集『冬の旅』の中の第5曲『菩提樹』の歌い出しです。明治時代の訳詞家・近藤朔風の名訳が今も歌い継がれています。猛暑が続いています。こんな時、冷たい水を飲むと一息つくことができます。「砂漠に…