小径を行く 

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。(筆者=石井克則・遊歩)

2024-02-01から1ヶ月間の記事一覧

2490「人生に幸あれ」と願う 精神的に向上心がない者は?

国会での質疑応答。岸田文雄首相の答えぶりを見ていて、がっかりという思いを通り越し、悲観的になる。この人に任せていて日本の現在・将来は大丈夫なのか、と。自民党のパーティー券キックバックによる裏金事件。衆院での政治倫理審査会開催をめぐっても、…

2489 米国終戦のシナリオを追った記者 仲晃氏逝く

国際政治学者で共同通信社の外信部記者として一時代を築いた仲晃さんが21日に亡くなった。97歳。このブログでも何度か、共同通信の大先輩である仲さんの著書について取り上げている。冷静な分析が光る本だった。仲さんを追悼して、以下に2本を再掲する…

2488 さまざまな春が来る 暗くて寂しい藤村の詩だが……

(近所で咲いたボケの花) 春はきぬ 春はきぬ さみしくさむくことばなく まづしくくらくひかりなく みにくくおもくちからなく かなしき冬よ行きねかし 島崎藤村(1872~1943)の詩集『若菜集』の中の「春の歌」の2節目だ。何とも暗く、寂しく、希望がない内…

2487 遠い国から近い国での戦争  ウクライナ侵攻2年

(開花が近いモクレン。芽が膨らんでいる) 「遠い国には戦があり…… 海には難破船の上の酒宴(さかもり)……」と書いたのは石川啄木(『心の姿の研究(3)』の「事ありげな春の夕暮れ」)だ。啄木より21歳後輩の中原中也は「幾時代がありまして 茶色い戦争…

2486 自然からの便り 2月の雨の日に寄せる「詩」(うた)

先日、気象予報士が言っていた。2月としては史上最高の陽気になりました、と今日は冬に逆戻り。糠雨よりももっと細かい小糠雨が降っているいつもの調整池、歩くのは私一人雑草が生い茂る一角から顔を出した雉鳩一家枯草をきれい刈った斜面。嘴でしきりに突…

2485 達意の文章とは 芥川、直木賞の2作品を読む

「言語と云ふものは案外不自由なものでもあります。のみならず、思想にまとまりをつけると云う働きがある一面に、思想を一定の型に入れてしまふと云う欠点があります」(谷崎潤一郎『文章読本』中公文庫) この言葉を念頭に置き、今回芥川賞と直木賞を受賞し…

2484 マンサクからミモザへ 早春の花だより

近所の遊歩道を散歩していましたら、民家の庭から遊歩道にかかるようにしたミモザに花が咲いているのを見かけました。 この路地はみんな花好き花ミモザ 前田和子 こんな句もありますが、この1本だけでなくこの先ずうっとミモザがあったらさぞかしきれいで、…

2483 暴力装置の暴発続く世界 朝の美しい自然に祈る

ロシアの反政府活動家ナワリヌイ氏が北極圏の刑務所で死亡したことをめぐって、当局によって殺されたのではないかと世界各国からプーチン政権批判の声が起きている。つい最近は、香港警察がカナダに事実上の亡命をした民主活動家・周庭さんを指名手配したと…

2482 心合わせて困難に立ち向かう 『今しかない』の人々……

(菜の花畑で家族の撮影風景)「日々の移ろいに心くじけそうになっても どうか自分を見失わないで 遥かな道をここまで生きてきたのだから 決してあきらめないで 信じて生きていれば 夢はきっと叶えられる……」。アメリカの歌手、ダイアナ・ロスが歌う『if we …

2481 あなたが感じる音楽の色は 《芭蕉布》の青は沖縄の悲しみ

音楽に「色」を感じることがあるだろうか。感じると書いたのは、音楽評論家の吉田秀和だ。その説明を読んである程度納得した。私はクラッシック音楽ではないが、沖縄を歌った《芭蕉布》(吉川安一作詞、普久原恒男作曲)を聴くと、沖縄の空と海の青い色を頭…

2480 見習いたいデガナウィダらの精神 高邁な理想と行動力

(ノルウェーの石積みのダムで堰き止められた人造湖クローデレン湖) 世界の政治家を見ていると、相当に危ないと思われる人物がその国のトップに立ち、あるいはこれから立とうとする野心を持っている。現代はますます混迷の時代になっていると思わざるを得な…

2479 それぞれの生きる力 短歌と辞典と学問と

時々、朝日新聞の歌壇欄に、アメリカから投稿された短歌が入選作として掲載されている。投稿者は「郷 隼人」という名前の歌人で、1月7日には「渡米時の大志破れて短歌あり我には歌の残されしのみ」が入選作として掲載された。郷氏はアメリカで殺人事件を起…

2478 浅き春に寄せて 調整池に霧が立つ

今は 二月 たつたそれだけ あたりには もう春がきこえてゐる だけれども たつたそれだけ 昔むかしの 約束はもうのこらない さう! 花は またひらくであらう さうして鳥は かはらずに啼いて 人びとは春のなかに笑みかはすであらう (立原道造「浅き春に寄せて…

2477 市井の片隅の豊かな?人生 映画『パーフェクトデイズ』

私の散歩コースの一角に公衆トイレがある。時々、車でやってきた男性がモップなどを使って掃除しているのを見かける。彼はここだけでなく他の公衆トイレを回っている「専属清掃人」なのだろう。役所広司主演の日本・ドイツ合作の『パーフェクトデイズ』(PER…

2476 名指揮者育てた指導者 小澤征爾と斎藤秀雄の厳しい関係

指揮者の小澤征爾が亡くなった。88歳。晩年は病気との闘いの連続だった。作家の村上春樹は、2月11日付朝日新聞朝刊に「小澤征爾さんを失って」と題する1頁の追悼文を寄稿した。その中で村上は小澤について「夜明け前の同僚」と書いた。「みんなが寝静…

2475 分かりやすい「ブッダ伝」 カトリック信徒が出版

「日本は仏教国ですが、お釈迦様の一生を記した本は帯に短したすきに長し。適当なものが見当たりません。調べているうちに分かったのは、宗派に縛られているお坊さんは自分以外の宗派の仏典に弱い。学者もその傾向にあります。宗派に縛られない一般人こそ仏…

2474 太宰が書いた「明日こそは幸福」 平凡な日々こそ……

(幸福度世界1のフィンランド・ヘルシンキにて) 暇であることはあまりいいことではない。世間の雑音が新聞、テレビを通じて入って来るからだ。世界も日本も心が晴れ晴れするニュースが少ない。私を含め、現代人はこうも愚かになってしまったのだろうと、朝…

2473 いつまで耐える針のむしろ 「記憶にない」もほどほどに

「針の筵」(はりのむしろ)という言葉がある。「(針を植え込んだ筵に座らされる意から)少しも気の休まることのない、つらい場所や境遇のたとえ」(大修館書店『明鏡ことわざ成句使い方辞典』という意味だ。現代では筵を見たことがない人がいるかもしれな…

2472 雪は天からの手紙 昨今の世界と日本へ

「雪は天から送られた手紙である」。世界で初めて雪の結晶を人工的に作ることに成功した物理学者・随筆家、中谷宇吉郎(1900〜1962)の言葉だ。科学者として自分の研究に裏打ちされた言葉なのだが、私なりに解釈してみると、昨今の世界の動きを見て「天が怒…

2471 人生の邂逅を知る 聞き書きカルテットとの出会い

(ラジオ体操広場の上空に美しい朝焼けが広がった) コロナ禍以降、人に会うことが少なくなった。私自身の加齢によって、その傾向はますます強くなっている。だから「人生邂逅し 開眼し 瞑目す」(人生は多くの巡り合いがあり、それを通じて物事の本質を知り…

2470 火の玉はどこに 剛速球より変化球の首相

(新幹線から見た富士山。2.3) 「火の玉」と聞いて、人は何を連想するだろう。野球が好きな人なら、かつて「火の玉投手」といわれた大リーグのボブ・フェラー(インディアンス=現ガーディアンズ)を思い、あるいは墓地などで見られる鬼火・人魂(ひとだま…

2469「国会議員をやめればいい!」中学生の嘆きの声再び

私の家の庭の前は遊歩道になっていて、一日中いろいろな人が歩いたり、自転車に乗ったりして通り過ぎていく。昨日の夕方のこと。暖かい日よりなので庭に出ていると、中学生らしい男の子の声が聞えてきた。「国会議員の裏金問題って酷い話だね。あんなことを…

2468 「平和はヴァイオリンの音」 戦争と音楽の関わり

「私たちが移動して行くと、どこからか音楽が聞えてきたの。ヴァイオリン(原文はバイオリン)の音色。あの日が私の終戦だった。ヴァイオリンが聞えた日が。みんなが空を仰いで祝砲を撃ち、抱き合ったりキスし合ったりした勝利の日ではなく。本当に不思議な…