人間模様
かつて多くの日本人が住んでいた旅順の街並み 戦後80年。新聞には、さまざまな太平洋戦争にまつわる記事が載っている。ソ連の参戦・侵攻による旧満州(中国東北部)からの日本人避難民の悲劇も当然含まれている。その一つである、藤原ていさん(1918-2016…
紫色のオシロイバナ 部屋に積んだままの資料の整理をしていたら、4年前のコロナ禍のころに出した手紙の下書きが出てきた。人生の先輩、Yさんの逝去を知らされ、奥さんに出したお悔みの手紙だった。そこには記者としての駆け足時代のことが書かれていた。懐…
美しい国宝・犬山城天守 蜩(ひぐらし)や悲しみ過ぎて笑つちやふ この句を見て、国宝犬山城を思い浮かべる人は、相当俳句に詳しいに違いない。この城は愛知県犬山市にあり、日本の城では松本(長野県)、彦根(滋賀県)、姫路(兵庫)、松江(島根県)とと…
夕方の東の空に出た珍しい形の雲 甲子園は高校球児の聖地なのか……。夏の全国高校野球が甲子園球場で始まった。しかし近年の猛暑続きの結果、試合時間は午前8時から午前2試合、午後4時15分から午後の2試合、という変則的な時間帯で実施されている。だが…
東京湾から見た美しい夕日の風景 アメリカはどこに行くのだろうか。ジョージ・オーウェルの『一九八四年』の世界、あるいは独裁者率いる北朝鮮のような国か。2度目の大統領になったトランプ氏の日々の行動を見ていると、急速にアメリカが変わっていくことを…
孔子の言葉と弟子たちとの問答を集めたといわれる「論語」の最初は「学而第一」で冒頭によく知られている言葉が出てくる。《子曰く、学びてこれを習う。亦説(またよろこ)ばしからずや。朋遠方より来たる有り。亦楽しからずや。人知らずして慍(いた)らず…
透明感のある調整池の風景 明治生まれの母の世代は、戦争に翻弄された時代を送った。愛する人を戦争で失い夥しい人が絶望し、打ちひしがれた。そんな思いを、歌に救われた人もいるだろう。ただ私は、母がどんな歌が好みだったのか全く知らない。歌に救われた…
この雲の彼方に…… 長い人生を生きていると、さまざまな人に出会います。強烈な個性を持った人、その反対に慎み深い人。それぞれに忘れることができない人が少なくありません。かつて、若い時代に同じ職場、同じ団地に住んでいた先輩もその一人ですが、既にこ…
沖縄のサガリバナに少しだけ似たギンバイカの花 『アンネの日記』で知られるアンネ・フランクが父親から買ってもらった日記帳に初めて少女のささやかなつぶやきを記したのは、13歳の誕生日である1942年6月12日、今から83年前のことだった。2年間…
ヒマワリのような存在だった長嶋さん スポーツに関する動きが大きなニュースになった。元横綱白鵬の宮城野親方(40)が9日付けで相撲協会を退職すること、プロ野球で戦後一番の人気選手で巨人の監督を務め、国民栄誉賞と文化勲章を受章した長嶋茂雄さんが…
かなり以前の話になる。海外に転勤する友人に、一冊の本とトラベルウォッチ( 旅行用の小型目覚まし時計)を記念に贈ったことがある。どんな理由だったのだろう。当時の備忘録を読み返してみた。それは作曲家、團伊玖磨さん(1924—2001)の旅に関するエッセ…
上向きに咲くスカシユリ:ロリポップ 「苦労人」という言葉がある。「多くの苦労を経験し、世の中のことや人情に通じている人」(新明解国語辞典)のことである。米の値段が高騰している中、講演で「コメは買ったことはない。支援者の方々がたくさんコメをく…
白のシャクヤク(ボタン同様、ややピンクがかって見える) 「苦労」という言葉を辞書で引く。「困難な条件下で何かをやろうとして肉体的(精神的)に多くの労力を費やすこと」(新明解国語辞典)、「苦しみつかれること」「骨を折ること。心配。労苦」(広辞…
森で控えめに咲くスイカズラ 「無告の民」という言葉を聞いて、私はトランプ・アメリカによって追放された不法移民や戦争、内戦で国を追われた難民を思い浮かべる。手元にある先輩編集者のエッセーにも、同じタイトルの文章が含まれていた。かなり以前のもの…
白い小さな花がびっしりのエゴノキ 夕方、目の前が急に暗くなりました空を見上げると、あの人の顔に似ている雲が出ていました怒っているような、それでいて笑っているような何とも不気味な雲です今にも雨を降らせるような黒い雲それを私はトランプ雲と名付け…
前回に続き『北の話 選集』(北海道新聞社)の心に残ったエッセーをもとに書いてみたい。今では大作家となった夫妻の若い時代のストーリーだ。芥川賞作家、津村節子(1928~)の「思い出の根室」と言う話だ。津村の夫は同じ作家の吉村昭(1927~2006)だが、…
「生まれてから5年がその人の人生の方針(生きる上での視点)を決める」と書いたのは、作家の池澤夏樹だ。1945年7月北海道帯広市で生まれた池澤は、この町で5年間を送った後東京に移った。5歳の目でも帯広と東京の風景の違いを覚えており、特に帯広…
海棠の花が美しい ロシアに軍事侵攻されたウクライナ。政府は兵士の追加動員を進め、いつ動員されるのかと苦悩している若者が少なくないというニュースを見た。戦場では死と隣合わせになるのだからその苦悩は当然といえるだろう。部屋にあるカレンダーの4月…
美しい雲 仏には 桜の花を たてまつれ わが後(のち)の世を 人とぶらはば(仏となった私に桜の花を供えてほしい。私の後世をだれかが弔ってくれるならば) 辻邦生の名作『西行花伝』(新潮文庫)は、この歌で終わっている。西行の弟子藤原秋実(あきざね・…
イタリア生まれのオペラ作曲家、ジョアキーノ・ロッシーニ(1792~1868)は、37歳で引退した。この後の人生を、ロッシーニは何をして送ったのだろう。それは「食」である。ロッシーニは若くしての引退だが、定年後にスペインのバルセロナで豆腐屋を始めた…
年々にわが悲しみは深くしていよよ華やぐ命なりけり 作家で歌人(画家岡本太郎の母親)岡本かの子(1889~1939)の歌(『歌日記』より)だ。だれでもがそうだろうが、年をとるほどに悲しみは深まる。日々の動きをテレビのニュースや新聞の記事で読みながら、…
遅ればせながら、イチローが日本に続いてアメリカ野球の殿堂入りが決まったことを書いてみる。日本では実質7年間しかプレーしなかったため、日本の殿堂入りについての賛成は 92・6%(有効投票349票のうち323票を獲得)で26人がイチローに投票し…
「くちびるに歌を」という言葉が好きだ。いつのころからか、逆境に立たされてもこの言葉を思い出し、勇気を奮い起した。18日夜、知人が主催した音楽会に行き、あらためてこの言葉の意味をかみしめた。飯能市のホテルで開かれたマリンバを中心とする演奏会…
夜中に目が冴えてしまい、眠れぬままラジオを聴いてみた。終夜やっているというNHKの「ラジオ深夜便」という番組で、懐かしい音楽を流していた。タンゴで知られる「アルフレッド・ハウゼオーケストラ」と往年の人気コーラスグループ「マヒナスターズ」の特集…
(沖縄県うるま市勝連城から見た風景) 私の部屋のカレンダーの1月は、フランスのアンリ・マティス(1869~1954)の絵《ザクロのある静物》だ。独特の雰囲気があり、雑然とした私の部屋でも違和感がない作品だ。マティスといえば、青年時代は法律学校で学び…
かつて不良少年だった大先輩の知人(故人)が1冊の本によって立ち直ったことを知った時、私は本の力を感じたものだ。闇バイトに落ち込む若い人に、この話をぜひ伝いたいと思う。本離れが進み、SNS全盛の時代だが、知人の話は若い人たちにも生きる上で参考に…
暦の上では冬に入っているが、私の住む周辺ではまだ紅葉の季節が続いている。このブログでも何度か紅葉の写真を載せている。けさ、往復約1時間をかけて紅葉で知られる自然公園までサイクリングをしてきた。その自然の風景をあらためて掲載する。歳時記を見…
「人の悪口を言うのを怒る人は、訳が分からない。どうして言わずにいられようか」。これは、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス・social networking service)時代といれる現代のことではない。清少納言の『枕草子』第255段(「人の悪口はいけ…
喜び、悲しむ、そんなことのために、 人間は生まれてきたものではないのです。 働く、そして、きょうはきのうより一歩前進する、 これが人生の目的、人間の生き方です。 ⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄ アメリカの詩人H・W・ロングフェロー(1807~1882)の『人生の…
「人生邂逅し、開眼し、瞑目す」。北海道函館出身の文芸評論家亀井勝一郎(1907~1966)が残した言葉(『愛と結婚の思索』大和書房)です。「人生は多くの出会いを通じて物事を知り、それまで見えていなかったものが見えるようになって、終わりの時を迎える…