小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

2000 コロナ禍で沈んだ社会 ブログ「2000回」に寄せて

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 このブログのタイトルのように私は毎日、遊歩道の小径をのんびりと散歩しています。その折々に様々なことが頭に浮かび、現代の世相のことを考えるのです。この世界は、どこへ行くのかと……。その想念を文字にしたのがこのブログです。2006年9月からスタートしたこのブログは、1991回までは『小径を行く』というタイトルでした。1992回からは事情により『新・小径を行く』と改め、今回で2000回目を迎えました。

 きょうは、私が住む千葉市の天気は快晴です。花粉の季節も終わり、五月晴れを前倒ししたような爽やかな日和だといっていいでしょう。300ミリの望遠レンズが付いたカメラを持ち出し、シャッターを押してみました。今回は2枚だけ写真を載せようと思います。最初の1枚は調整池の遊歩道斜面に咲いた「桐の花」で、2枚目は私の家の満開になった「ナニワイバラ(難波茨)」です。バラ、桐ともに俳句では夏の季語になっています。今年は桜の開花がかなり早かったのですが、そのほかの木々もやはり前倒しで花の季節を迎えているようです。

 歳時記を見ますと、バラは5月ごろが最盛期で、桐の開花は5月上旬が普通だそうです。「あを空を時の過ぎゆく桐の花」林徹(はやし てつ)という、医者で俳人だった人の句です。きょうの青空と調整池の桐の花を描いたような句だと思うのです。桐の木は遊歩道脇の斜面に2本だけ残っているのですが、コロナ禍を忘れさせてくれる大きく爽やかな樹木だといえるでしょう。

 桐の木は成長が早く、しかも材質がいいため、昔から箪笥の材料に使われていました。私の生家の畑にも桐が何本か植えられていて、姉たちが結婚するとき母はその木で嫁入り用の箪笥を作ってもらい、持たせたことを覚えています。今はそうした習慣は、ほとんどなくなってしまったようです。2015年の映画『おかあさんの木』(鈴木京香主演)も、桐の木が大きな役割を持っていたことを思い出しました。

 夫を早くに病気で亡くした母親(鈴木京香)が主人公です。この家には7人の息子たちがいましたが、次々に太平洋戦争に召集されます。母親は息子たちが出征する度に無事を祈って桐の木を植えるのです。しかし、6人は戦死してしまいます。一時行方不明だった5男がただひとり引き揚げてきたときには、母親は桐の木の根元で倒れ、帰らぬ人になっていたという、悲しいストーリーでした。この映画では桐の木は悲劇の象徴として扱われましたが、本来の桐の木は青い空の下が似合う、希望の木ではないかと私は思うのです。

 この1年、何といってもコロナ禍が継続性のある大きなニュースになっています。ある報道機関はコロナ禍を21世紀最大のニュースと位置付け、取材をしていると聞きました。この新型感染症は、日本だけでなく全世界の人々に多大な影響を与え続けているのです。日本ではPCR検査で陽性になったにもかかわらず入院する病院が見つからず、自宅で待機していた人が相次いで亡くなったことが報じられています。これはまさに「人災」といっていいでしょう。

 東京、大阪、兵庫、京都の4都府県に3度目の緊急事態宣言(25日~5月11日まで)が出されることになりましたが、政府のやっていることは後手に回っているとしか言いようがありません。ワクチンの接種も、遅れに遅れています。先行接種が進んでいるはずの医療関係者でも接種した割合は1回目が約25%、2回目となると15%(19日の政府発表)ということですから、それ以外の私たちの接種はかなり先になりそうです。日本政府はこの1年、何をやってきたのでしょうか。

 そんな中で、東京五輪聖火リレーが進んでいます。香川県聖火リレーのための交通整理をしていた警察官がコロナに感染したというニュースもありました。どこで感染したのかは不明ですが、変異種による感染拡大は不気味に思えてなりません。IOC国際オリンピック委員会)のバッハ会長が理事会後の記者会見で「(東京などの)緊急事態宣言は、ゴールデンウイークに向けて、日本政府がまん延防止のために行う事前の対策だと理解している。東京五輪とは関係がない」と語ったそうです。そうでしょうか。菅首相に五輪中止の選択肢はないのでしょうか。このような地球規模の災厄が続いている中で、五輪開催は可能なのでしょうか。

 昨年からことしにかけて私は、行動半径が狭い日常を送っています。2021年も間もなく4カ月が過ぎようとしています。残り8カ月で劇的にコロナ禍に沈んだ社会が変わるのでしょうか。変わると信じたいのですが、どうでしょうか。青空の下で花を全開させた桐の木に、一日も早く普通の生活に戻ることができるよう願いを託したい、そんな気持ちでいっぱいです。

 追記 ブログをこのように長く、しかも2000回まで続けることができるとは、考えてもいませんでした。お付き合いくださった皆様に感謝しております。コロナ禍が続きますが、焦らず、気長に世の中の動きを見続けたいと思います。今後ともよろしくお願いします。遊歩

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1370 映画『おかあさんの木』 忘れてはならない戦争の不条理