小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1636 人気スポットは早朝に  京都・伏見稲荷を歩く

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「外国人に人気のスポット2017 日本国内4年連続第1位」白い字でこんなことが書かれた赤い旗が立っている。だが、周辺にまだ人影はない。……京都に行く機会があり、早朝、京都の伏見稲荷を歩いた。この旗には小さな字で「伏見稲荷大社は外国人旅行者の皆様に高い評価をいただきました」とあったが、この時間帯、さすがに外国人は見かけなかった。しかし、なぜここが外国人にそんなに人気があるのだろう。  

 伏見稲荷京都市伏見区稲荷山の西麓にある元官幣大社( 明治政府によって定められた神社の格に関する制度)で、711(和銅4)年に創建された全国の稲荷神社の総本社である。外国人に有名なのは、朱色の「千本鳥居」のようで、原色のおびただしい鳥居は写真写りもよく、外国の人々を惹きつけるのだろう。いまはやりのインスタ映え(写真写りがひときわいい)するのだろう。  

 この神社はJR奈良線稲荷駅前にあり、改札口を出ると赤い大鳥居が見え、日中は大勢の人々でごった返す。神社は稲荷山の中に含まれており、千本鳥居は山へ登る道の両側に建てられている。いずれも参拝者の奉納したもので、江戸時代から始まったらしい。  

 それが次第に増え、山全体には1万基くらいあるというが、それが観光の目玉になるとは、奉納者自身は考えてもいなかっただろうし、稲荷山の神々も驚いているのかもしれない。これだけの鳥居を並べるとはユニークな発想だ。「稲荷坂見あぐる朱の大鳥居ゆり動かして人のぼり来る」江戸時代末期の歌人橘曙覧(たちばなあけみ)の歌である。この歌のように、伏見稲荷の祭礼には全国から多くの人が集まるという。ところが、昨今は日本人だけでなく外国人(特に中国)観光客も押し寄せる人気スポットになり、千本稲荷はラッシュアワーの電車のように込み合う。  

 とはいえ、早朝だけに千本鳥居の中を歩く人はほとんどいない。遠くからウグイスの鳴き声が聞こえる。時折すれ違うのは日本人だけで「おはようございます」と声をかけると、同じように「おはようございます」のあいさつが返ってくる。地元の比較的高齢と思われる男性が散歩を兼ねて山を上り下りして姿が目に付く。  

 足を痛めて回復途上にある私は、足を踏み外さないよう注意しながら階段の上り下りをして途中の「熊鷹社」で引き返した。大鳥居をくぐって約1時間が過ぎていた。入り口に戻ると、ようやく空は明け切り、若い外国人女性数人が大鳥居に向かっていく。これからの時間は、喧騒が増していくのだろう。私は混雑する場所は好きではない。東京の美術館の混雑ぶりにはへきえきする。だから、伏見稲荷もこのような早朝を狙って行ってみたのだが、それは正解だった。  

 ちなみに、この人気スポットというのは、大手旅行サイト「TripAdvisor®」の日本法人トリップアドバイザーに投稿された外国語の口コミの評価、投稿数などから集計したもので、2017年版は、伏見稲荷がトップ、次いで前年9位だった『アキバフクロウ』(秋葉原にあるフクロウカフェ)が2位、『広島平和記念資料館』が3位だった。この人気スポットはインターネット時代を反映したものだろう。私はアキバフクロウには行ったことがなく、行きたいとも思わない。

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