1540 天に軌道があるごとく 歴史に残る人たちの街を歩く
「天に軌道があるごとく、人はそれぞれ運命というものを持っております。とかく気合いだけの政治家は威勢のいいことを言うが、中身はない。トランプのババじゃあないんだから、自分の主張が全部通ると思っていたら、あなた、すぐに化けの皮がはがれますよ。な、そうだろう」
映画『男よつらいよ』シリーズで、渥美清演じる柴又の寅さんの切れ味のいい口上を忘れることができない。間もなく米国の45代大統領に就任するドナルド・トランプ氏に関して、寅さんの口上を借りると冒頭のような言葉になってもおかしくはない。それほど、トランプ氏の言動は目に余るのである。
米国内の雇用優先という内向き思考から、メキシコに工場建設を計画したフォードやGM、空調機メーカーをツィッターで「恥知らず」「高関税をかける」などと脅し、空調機メーカーとフォードは工場建設を中止した。さらに同じようにメキシコに工場建設を予定している日本のトヨタ自動車も標的にして計画の撤回を要求した。
折も折、昨年の米大統領選にロシアの情報機関がプーチン大統領の指示でサイバー攻撃を仕掛けたことが、米国家情報長官室の公表した報告書で明らかになった。ヒラリー・クリントン氏有利という大方の予想を覆しトランプ氏が当選した。この結果についてロシアのサイバー攻撃が力を発揮したというのだから、大変な時代になった。
情報戦争に米国は負けたといえるが、米国を分断する(今後は米国外にも波及するだろう)トランプ氏の言動は、プーチン・ロシアには思う壺のはずだ。
ことしも年明けからテロが相次ぎ、トランプ騒ぎも含めて明るいニュースは少ない。それでも株式市場は上昇を続けているのだから、私の頭の中にはモヤモヤ感が充満している。
それを晴らそうと、七福神巡りを兼ねた街歩きをした。歴史に残る人物3人にゆかりの深い、深川(江東区)界隈である。この3人は、わが国で初めて正確な国土地図を作製した伊能 忠敬、江戸時代の俳人・松尾芭蕉、大相撲の第48代横綱大鵬である。
深川七福神巡りのスタートは、富岡八幡宮の境内西側にある恵比寿神だった。八幡宮の鳥居をくぐると、左側に伊能忠敬の銅像があった。忠敬は千葉・佐原で商いを営み、49歳で隠居した。このあと江戸に移り、八幡宮近くの黒江町(現在の門前仲町1丁目)に住んで、50歳のころから測量と天文学を学び、17年をかけて約3万9000キロを踏破、「大日本沿海輿地全図」を完成させる。
七福神巡りは以下冬木弁天堂(弁財天)→心行寺(福禄寿)→圓珠院(大黒天)→龍光院(毘沙門天)→深川稲荷神社(布袋尊)→深川神明宮(寿老神)と続いた。万歩計を見ると約1万1000歩になっている。
龍光院と深川稲荷神社の途中に、深川江戸資料館があって、その一角に大鵬のコーナーがあった。深川稲荷神社の石柱の一つにはやはり大鵬幸喜の名前があるから、神社に寄付をしたことがあるのだろう。サハリン(旧樺太)でウクライナ人の父と日本人の母の間に生まれ、母親と北海道弟子屈町に引き揚げ、大相撲界に入り、32回優勝し大横綱になる。大鵬は引退後、旧深川の清澄2丁目に大鵬部屋を創設し、深川の人たちと交流を続けた。
7つめの深川神明宮(寿老神)に向かう途中に芭蕉の名前をとった芭蕉稲荷神社があり、足を止めた。さらにその先の隅田川に面する場所に芭蕉記念館があった。芭蕉は37歳のときに、深川に移り住み、その家は「芭蕉庵」」と呼ばれた。それがこの辺らしく、隅田川に面して芭蕉の銅像(坐像)もある。「川上とこの川下や月の友」の句碑を読む。川面を見ると、ゆったりとした流れが陽光に輝いている。ひととき、世の喧騒を忘れた。
ことしは寅さんの口上を借りて、折々に私なりの口上を記していきたい。(冒頭の写真は、隅田川を臨む芭蕉の坐像)
(伊能忠敬像)
(大鵬の名前が入った石柱)
(新大橋のレリーフ)
弁財天(冬木弁天堂)
福禄寿(心行寺)
大黒天(圓珠院)
布袋尊(深川稲荷神社)
寿老神(深川神明宮)
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