小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1520 中国の旅(7) サービスについて、ある体験

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 以前、中国を訪れた際、社会主義の国なのだからサービスは不要だというような、店員の態度に腹を立てたことがあった。物を買うと、お釣りを投げ「ありがとう」も言わない。これが中国とあきらめた時期もあった。だが、いまやそうした態度をとる店員はほとんどいない……はずだった。

 だが、大連市内の有名宴会場で、昔の中国を思い出してしまうほどの残念な体験をしてしまった。店側の従業員教育に問題あり、というケースだった。 八木さんは帰国が迫った日の夕方、かつての知り合いを集めて食事会を開いた。招待者は6人だった。だが、いずれもが奥さんか娘さんを連れてきていて、予定よりも倍の人数が集まった。

 八木さんは45歳まで中国で暮らしていたから、大連には友人が多い。集まってくれたのも元職場の同僚や仕事で知り合った人たちだった。 会は和気あいあいと進んだ。みなさん高齢でアルコールはほとんど飲まず、2時間半でお開きになった。特に時間の制限はないから、八木さんや私たちは、みなさんを送ったあと、残った料理を食べ始めた。

 ところが、若い男性従業員が八木さんの娘さんに向かって早く支払いをするよう、催促を始めた。まだ料理を食べていないので、もう少し待ってほしいと断ると、この店員は料理の一部を下げ始め、裏に回って大きな声を出しながらお皿を乱暴に投げていた。デザートを出すのを忘れていたらしく、ほかの従業員が慌てて持ってくる。 これを見た、娘さんが、優良社員というバッジをした女性従業員に抗議した。

「あなたは彼を指導する立場にあるはずだ。私も食べ物を扱う仕事をしている。お客さんに失礼ではないか」。これに対し、女性従業員は「私は彼を信じている。彼はそんなことをするはずがない」と、若い男性従業員の肩を持つ発言をしたから、一緒にいたAさん(前回のブログで紹介した中国人実業家)も怒り出した。

 結局、この店の責任者(総経理)が出てきて「従業員の教育はしっかりやっているが、そういう話があるなら、2人の従業員を厳重に注意する」と話した。しかし、「ご不快な思いをさせて、申し訳ありませんでした」という、謝罪の言葉はなかった。

 謝ると、何か都合が悪いのだろうかと思うほど、客に対し、頑なな姿勢だった。Aさんが怒るのだから、それが現代中国の接客の基本姿勢とは到底思えない。この店の信用は大きく損なわれたことに彼らは気付いただろうか。

 一方で、中国茶専門の店に行くと、店主はにこにこしながらさまざまな種類のお茶を試飲させ、その効能を詳しく説明してくれた。ついうれしくなって必要以上のお茶を買ってしまった。旅をすると、いろいろな体験をする。意外に、食事会のことは長く覚えているのかもしれない。 写真 ある温泉リゾートの入り口につくられたクジャクの置物

(続く・次回は8回目、神風運転の車に乗って……)