小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1519 中国の旅(6) 若き知日派たち

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 いま、日本と中国の関係は「非常に」という形容詞がつくほどギクシャクしている。政冷経熱といわれて久しい。今回の旅で2組の若い世代の夫妻にお世話になった。この人たちは日本通で、八木さんの家族のような存在だ。互いに日本と中国を行き来する知人と若い2組の夫妻に日中間の壁はないと感じた。

 一組の夫妻(以下奥さんをAさん、ご主人をBさんと書く)は、大連市内で月餅などの菓子工場を経営し、さらに自分たちのビルを持ってコンビニとカフェを営業している実業家である。2人とも日本に留学し八木さんと知り合った。今回の旅の期間中、Aさんが私たちと一緒に各地を回り、Bさんはことあるたびに顔を出して車で荷物を運んでくれたり、食事の世話をしてくれたりした。帰りには空港まで見送りにきて、別れを惜しんだ。

 Aさんと八木さんの長女は姉妹のような関係(姉的存在が知人の長女)で、本当に仲がいい。 あるとき、Aさんに「あなたは毛沢東周恩来、鄧小平のうち、だれを尊敬しますか」と質問をした。

 すると、「私も主人も毛沢東は神様と思っているわ。毛沢東に比べたら周恩来と鄧小平は普通の人ね」という答えが返ってきた。さらにAさんは「主人は胸に毛沢東バッジを付けているのよ」と言っていた。毛沢東が主導し多くの国民が犠牲になった大躍進運動文化大革命は若い世代には遠い存在になりつつあり、中国のいまがあるのは鄧小平でも周恩来でもなく、毛沢東のリーダーシップだと考える人たちが増えているのかもしれない。

 2人が所有するビルは大連の中心部からはやや離れているものの、周水子国際空港まで車で15分という至便な地区にある。1階はコンビニとラーメンやギョウザなどを食べさせる食堂、2階はカラオケルームもある、しゃれたカフェになっている。ちなみに食堂の水ギョウザ、日本式のチャーシューメンはいずれも15元(1元は約15円だから、日本円にすると300円くらい)の値段がついていた。

 夫妻は2人とも日本の留学経験があり、店のスタイルは日本式を取り入れている。2人にとって日本は遠い外国ではなく、家族が住む隣の町のような存在なのかもしれない。もう一組の夫妻は、機内食のケータリング会社に勤務する職場結婚組である。

 この会社の幹部として働く2人も八木さんとは家族ぐるみの付き合いで、知日派(夫は日本に留学した)である。この2組の夫妻と知人の姿を見ていると、日中関係の険しさはどこの話かと思う。隣国同士が冷たい関係を続けることは不幸なことなのだ。

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 写真 1、大連の繁華街 2、大連の地下鉄駅入り口 3、大連の海岸部にできたマンション

続く・次回は(7) サービスについて、ある体験)