小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1517 中国の旅(4) 中国の高齢者たち

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 八木さんは旅順で生まれ、この町で1年間だけ小学校に通っている。その小学校を探して歩いていると「旧八一零歴育退休職工活動室」と書かれた平屋の建物が目に入った。文字を読むと、定年退職者専用の建物のようだ。中国にはこのような、定年退職者が集まってゲームを楽しむ娯楽用施設があるらしい。

 中に入ると八畳間ほどの広さの部屋があり、そこで4人(女性3人と男性1人)が麻雀、2人(男性同士)が中国将棋を楽しんでいた。それぞれのゲームを立って見ている人もいる。この人たちは恵まれた人たちに違いない。

 2015年の中国の人口は13億7400万人で、日本はその10分の1の1億2700万人である。日本は現在高齢化の一途をたどっている。では、中国はどうなのか。既に2001年には65歳以上の高齢者が総人口の7%に達しており、2050年には人口の35%以上になるという予測もある。中国も今後、人口の高齢化が社会問題になることは確実だ。

 4年前に北京に行き、有名な天壇公園を歩いた。公園では将棋をしたり、歌を歌ったり、踊りを踊ったりする高齢者たちでにぎわっていた。有り余る時間をそれぞれに工夫して送っているのである。知人は旅順のあと、大連に移り住んだ。その家を探しているとき、かつて知人がいたころの原っぱが、老人用の健康広場になっているのを見つけた。

 そこには平行棒など老人用の遊具が備えられていた。休み場には高齢の男女7人がのんびり井戸端会議みたいなおしゃべりに興じていた。日本では高齢者専用のこうした公園を見たことはない。私が毎朝ラジオ体操に行く広場に隣接して、健康遊具が設置してあるが、これを使っている高齢者を見たことはない。

 大連の遊具は利用されているのだろうか。 ことし5月、福島県いわき市の内郷の「白水(しらみず)阿弥陀堂に行った。建築物として国宝に指定されている美しい建物である。この前に公園があり、地域の高齢者たちが、大連の人たちと同じように、おしゃべりを楽しんでいた。

 住む国は違っても、人はこうしたとりとめのない時間を送ることが大切なのだと思う。 退職者用の娯楽施設で、将棋をする人の後ろに立って観戦していた男性が、知人が探す小学校はあそこだと言って、自ら外に出て案内してくれた。そのあと、彼はふたたび施設に戻った。将棋か麻雀、どちらかに入って私たちのことを話題にしながら、ゲームを楽しんだことだろう。

 この世代の人たちは新中国建国後の大躍進運動文化大革命という激動の時代を生きてきた。時には、そうした昔話もするのだろうか。

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(続く・次回は(5)いまは?のアカシヤの大連)