絵画
ノルウェーの首都、オスロの中心部にある国立美術館でエドヴァルド・ムンクの油絵「叫び」を見た。世の中の不幸を一身に背負ったような、独特なタッチの人物と赤く染まったフィヨルドの夕景が不気味であり、つい福島原発事故で避難を余儀なくされた人たちの…
東京・乃木坂の国立新美術館で開催されている「第12回日美絵画展」をのぞいた。友人の田口武男さんの作品がが日本画部門の秀作に選ばれ、展示されたからだ。 公益財団法人国際文化カレッジの主催で入選した2000点を展示するという大きな美術展だった。…
ことしは本当にため息を吐いた。それは私だけではないはずだ。多くの日本人が行く末を不安に思い、東日本大震災で避難生活を余儀なくされている人たちのニュースに接し、体に悪いため息を吐いている。それは、まだ当分続くだろう。 そうした悩める魂を救うの…
正直なところ、東日本大震災以来、心の底から笑ったことはない。体に悪いと知りつつ、被災地のこと、原発事故のことを思うと軽々に笑うことはできないと思ってしまうのだ。 「笑いの自粛」みたいな感覚なのか。 退陣を迫られ「ペテン師」と言われても、土俵…
女子美の4年生で、この春大学院に進むという絵本作家・イラストレーターの加藤祐子さんに会う機会があった。幼いころからの夢を実現した輝く才能の持ち主だ。 加藤さんは、2009年に福島県矢祭町で開催された第1回矢祭もったいない図書館「手作り絵本コ…
詩人の故飯島正治さんの長男で画家の誠さんが東京・京橋の画廊で「景色と面影」という個展を開いた。30数点の淡い色彩の作品の中にブータンの自然を描いた「道」など2点があった。ブータンは日本人にはなじみの薄い国だ。 私が2009年に訪れたラオスと…
過日、ある美術館に入った私は一枚の絵の前で「既視感」を持った。それはつい最近オープンした「ホキ美術館」でのことだった。 この美術館は名前からして変わっている。展示内容も「写実絵画専門」なのだという。 写実絵画の代表的な作者としてクールベ、コ…
62歳から油絵を始め、89歳で亡くなるまで筆を離った女性の画家の存在を初めて知った。その画家の名前は望月定子という。 彼女が独力で創設したのが「望月定子美術館」だが、入場者は私たち夫婦以外だれもいなかった。「夏休みなので、大勢の人が来るでし…
ピアノの天才のことを昨日書いた。辻井伸行さんのことだ。日本にはピアノだけでなく、ヴァイオリンでも天才がいるのは多くの人が知っている。 16歳のときパガニーニ国際ヴァイオリンコンクールで優勝した庄司紗矢香さんだ。史上最年少だった。その庄司さん…
ピアノの天才のことを昨日書いた。辻井伸行さんのことだ。日本にはピアノだけでなく、ヴァイオリンでも天才がいるのは多くの人が知っている。 16歳のときパガニーニ国際ヴァイオリンコンクールで優勝した庄司紗矢香さんだ。史上最年少だった。その庄司さん…
主に登場するのは3人という小説を読んだ。スペインの作家、アルトゥーロ・ペレス・レベルテの「戦場の画家」という作品だ。 私はこの作品を読んだあと、人間社会の不条理を主題にしたカミュの「異邦人」をなぜか思い起こした。 戦場の画家は、元戦争カメラ…
主に登場するのは3人という小説を読んだ。スペインの作家、アルトゥーロ・ペレス・レベルテの「戦場の画家」という作品だ。 私はこの作品を読んだあと、人間社会の不条理を主題にしたカミュの「異邦人」をなぜか思い起こした。 戦場の画家は、元戦争カメラ…
詩人の飯島正治さんには、画家になった誠さんという自慢(私の想像だが)の息子がいる。その誠さんが京橋の画廊で「記憶と光彩」という個展を開いた。 2月の終わりの夕方、画廊に向かった。ほっそりとした青年が1人、画廊に立っている。どことなく父親の正…
千葉の幕張メッセで14日から始まった小児がん学会の会場一角で「命の輝き」を訴える絵画展が開かれた。 「財団法人 がんの子供を守る会」が10年前から毎年実施しているささやかな展覧会だ。この展覧会をのぞいて、あるポスターの前でくぎ付けになり、涙を…
10月の上野公園は、さわやかな季節とあってかなりの人出でにぎわっている。JRを降りて動物園方向へと歩くと、右手に「国立西洋美術館」がある。 フランスの設計家ル・コルビュジエによる建物は、世界遺産候補となり来年9月にその可否が決まる。そんなことを…
約650年という長い時代、ヨーロッパに君臨したのがハプスブルク王朝だ。日本では徳川幕府(江戸時代)が264年、足利幕府(室町時代)が237年の長期政権を維持したが、とても及びもつかない。スイスの一豪族が偶然手にした神聖ローマ帝国皇帝という地位から、急…
金曜日の夕方、私は心も体も疲れ切っていた。このところ重いテーマのイベントに接することが多かったからだ。だが、会場に一歩足を踏み入れると、その疲れを忘れてしまった。日本橋・高島屋で開かれている「絹谷幸二展」でのことだ。 それは朱色の世界であり…
金曜日の夕方、私は心も体も疲れ切っていた。このところ重いテーマのイベントに接することが多かったからだ。だが、会場に一歩足を踏み入れると、その疲れを忘れてしまった。日本橋・高島屋で開かれている「絹谷幸二展」でのことだ。 それは朱色の世界であり…
東京から水戸に向かい、水戸でJR水郡線に乗り換え、奥久慈地方(茨城県北部-福島県南部)を旅した。 ソメイヨシノは終わっている。だが沿線には八重桜やカスミ桜が咲き、新緑の山は遠くが霞み、東山魁夷の絵を見ているような錯覚さえ覚える。 奥久慈地方は…