小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

絵画

1397 地球の裏側にやってきたペルーの宗教画 藤田嗣治が持ち帰ったクスコ派の作品

日本画の技法を油彩画に取り入れ、エコール・ド・パリの画家として知られている藤田嗣治は1931年南米旅行をした際、ペルーのクスコを訪れている。標高3400メートルの高地にあるクスコはかつてのインカ帝国の首都で、インカ文明の中心地だった。ここ…

1395 これが安藤忠雄の真骨頂? 藤田嗣治壁画の秋田県立美術館

藤田嗣治(1886―1968)の壁画「秋田の行事」を見たのは、かなり昔のことだ。秋田市の千秋公園(旧久保田城跡)に面した旧県立美術館は、秋田の資産家、平野政吉のコレクションを中心に展示し、藤田の壁画が巨大に見えた。 その壁画は、2013年9月にオー…

1395 これが安藤忠雄の真骨頂? 藤田嗣治壁画の秋田県立美術館

藤田嗣治(1886―1968)の壁画「秋田の行事」を見たのは、かなり昔のことだ。秋田市の千秋公園(旧久保田城跡)に面した旧県立美術館は、秋田の資産家、平野政吉のコレクションを中心に展示し、藤田の壁画が巨大に見えた。その壁画は、2013年9月にオープ…

1391 未来を予見させる聖母子画 ラファエロと無名画家

アルテ・マイスター絵画館(ドイツ・ドレスデン、古典巨匠絵画館)の『システィーナの聖母』(『サン・シストの聖母』とも呼ばれる)はラファエロ(ラファエッロとも)・サンティ(1483~1520)の最もよく知られた祭壇画である。第二次大戦後、ソ連に持ち去…

1391 未来を予見させる聖母子画 ラファエロと無名画家

アルテ・マイスター絵画館(ドイツ・ドレスデン、古典巨匠絵画館)の『システィーナの聖母』(『サン・シストの聖母』とも呼ばれる)はラファエロ(ラファエッロとも)・サンティ(1483~1520)の最もよく知られた祭壇画である。第二次大戦後、ソ連に持ち去…

1385 大災害から復興したオランダの古都  フェルメール・「デルフトの眺望」

8月になった。部屋の絵カレンダーをめくると、今月は日本でも人気が高いヨハネス・フェルメール(1632~75)の風景画『デルフトの眺望』だった。フェルメールが自分の生まれ故郷、オランダ南ホラント州デルフトの朝の町並みを描いた作品だ。 1660〜16…

1381 美を考える ニュースに登場する醜悪な人たち

最近、美について考えることが多い。美という概念からは芸術、哲学から自然界まで幅広いものを感じとることができる。関心事の一つである仏像を見ても、その気品ある姿は美そのものである。私の家の墓地がある寺には薬師如来像がある。顔の表情はとても柔ら…

1377 光の画家フェルメールと帰属作品  西洋美術館の『聖プラクセディス』

東京・上野の国立西洋美術館の常設展に「フェルメールに帰属」という作品がことし3月から展示されている。『聖プラクセディス』という、オランダの画家ヨハネス・フェルメール(1632-75)が若き日、イタリアの画家、フェリーチェ・フィルケレッリ(1605-60…

1353 二足のわらじの芸術家たち 多彩な才能に畏敬

手近にあったCDをかけると、ロシアのアレクサンドル・ボロディン(1833~87)の「ノクターン~弦楽4重奏曲第2番ニ長調第3楽章」が流れてきた。ボロディンといえば作曲家のほかに化学者の顔を持ち、二足のわらじを履き続けた人である。 多方面に才…

1345 平山郁夫の一枚の絵 千葉県立美術館にて

「サラエボは画家としての私に、どんな境遇や環境にあろうと、平和を祈る作品を描き続けなければならないと、あらためて覚悟させた。画家として、感動することがいかに大事であるかを再認識させた」――。 改修工事のため休館していた千葉県立美術館が再開館し…

1345 平山郁夫の一枚の絵 千葉県立美術館にて

「サラエボは画家としての私に、どんな境遇や環境にあろうと、平和を祈る作品を描き続けなければならないと、あらためて覚悟させた。画家として、感動することがいかに大事であるかを再認識させた」―。 改修工事のため休館していた千葉県立美術館が再開館し…

1329 外交史料館で「マッサン展」 スコットランドとの交流史

「マッサン展」という風変わりな名前の特別展が、外務省外交史料館で開催中だ。東京・麻布台の飯倉公館に隣接した外交史料館別館をのぞくと、明治以降からの外交資料の常設展示のほかに、「マッサン展 竹鶴政孝と知られざる日本・スコットランド交流史」と題…

1328 人間賛歌・種まく人 ミレー展にて

ジャン=フランソワ・ミレーの「種まく人」(1850年)に触発されて、フィンセント・ファン・ゴッホが同じ題名の作品を描いた(1880年)ことはよく知られている。東京・丸の内の三菱一号館美術館で開催中の「ボストン美術館・ミレー展」で見た「種ま…

1328 人間賛歌・種まく人 ミレー展にて

ジャン=フランソワ・ミレーの「種まく人」(1850年)に触発されて、フィンセント・ファン・ゴッホが同じ題名の作品を描いた(1880年)ことはよく知られている。東京・丸の内の三菱一号館美術館で開催中の「ボストン美術館・ミレー展」で見た「種ま…

1322 冬本番、春を待つ心 東山魁夷展にて

東京・恵比寿の山種美術館で開催中の「東山魁夷と日本の四季」という特別展をのぞいた。東山魁夷(1908~1999)が亡くなってことしで15年になる。 以前、東山魁夷の絵は東京世田谷にある長谷川町子美術館と竹橋の東京国立近代美術館で見ているが、何回見ても…

1311 「戦争」を憎むシャガールの絵 チューリヒ美術館展をのぞく

マルク・シャガール(1887~1985)の「戦争」を見た。大作の割には立ち止まる人が少なく、時間をかけることができた。国立新美術館で開催中の「チューリヒ美術館展」。展示された74点(絵画大半で一部が彫刻)は、画家たちの代表作といわれるものが…

1311 「戦争」を憎むシャガールの絵 チューリヒ美術館展をのぞく

マルク・シャガール(1887~1985)の「戦争」を見た。大作の割には立ち止まる人が少なく、時間をかけることができた。国立新美術館で開催中の「チューリヒ美術館展」。展示された74点(絵画大半で一部が彫刻)は、画家たちの代表作といわれるものが…

1297 hana物語(39) つぶやき16

「ついに絵のモデルに hanaのつぶやき」 「一芸に秀でる者は多芸に通ずということわざがある。ある分野を極めた人は他の分野でも優れた才能を発揮することができるという意味だよ」。 旅行先から、大きな荷物を持って帰ってきた「お父」が、その荷物をほ…

1208 いまも色あせない芸術作品 モネとマーク・トゥインに触れる

この1週間に2人の個性的な芸術家の世界を垣間見る時間を持った。フランスの画家・クロード・モネ(1840年11月14日―1926年12月5日)の作品を中心にした「「モネ、風景をみる眼」展(国立西洋美術館)を見、「トム・ソーヤの冒険」で知られる米…

1208 いまも色あせない芸術作品 モネとマーク・トゥインに触れる

偶然だが、この1週間に2人の個性的な芸術家の世界を垣間見る時間を持った。フランスの画家・クロード・モネ(1840年11月14日―1926年12月5日)の作品を中心にした「「モネ、風景をみる眼」展(国立西洋美術館)を見、「トム・ソーヤの冒険」で…

1123 遠くから見つめる富士 凛とした姿描いた友人の絵

富士山の世界遺産(文化)登録が決まる直前、大阪から上京した友人から一枚の日本画をもらった。雪を抱いた富士山とその前には白い波の海が広がっている。各地から望む富士山の姿を描いた葛飾北斎の「富獄三十六景」や以前のブログで紹介した平松礼二の「2…

1063 絵のモデルになりました2 歳末のhanaのつぶやき

お父さんが家族に一枚の絵を見せて「どう、hanaに似てるだろう」と、自慢していました。それが、この絵です。あれ!どこかで見た写真にそっくりだと思いませんか。そうです。この16日のブログに載せてある私をモデルにした絵だそうです。 きょう、お父…

1051 心に残る福美ちゃんの絵 小児がんの子どもたちの絵画展にて

11月もきょう30日で終わり、明日から師走に入る。日本人は楽しいことには気が早いのか、街ではもうクリスマスツリーを見かける。そのクリスマスツリーを自分の目で見ることを夢見ながら、病床で絵を描いた少女がいた。石川福美ちゃんだ。 横浜のみなとみ…

1012 ああフェルメールよ 残暑の中の絵画展にて

日本人のフェルメール(ヨハネス・フェルメール、オランダ、1632-1675)好きは相当なものだと思う。「真珠の耳飾りの少女」と「真珠の耳飾りの女」(こちらもパンフには少女とあったが)という2つの作品が展示された上野の森にある東京都美術館と…

1011 共通する叫び・ムンクと飛鳥さんの絵 東日本大震災から1年半に思う

きょうで東日本大震災から1年半が過ぎた。先日、大きな被害を受けた宮城県石巻市の沿岸部に行ってきた。がれきが撤去された中心部から沿岸部に入ると、津波で壊されたままの数多くの廃屋がそのまま残っていた。人が戻ることがないこの地区が将来どのような…

988 幸徳秋水と建長寺の天井画の画家と 四万十・中村にて

清流で知られる四万十川がある高知県四万十市は、平成の大合併で中村市と隣接の西土佐村が合併して誕生した。その中心部に近いホテルに泊まった。すぐ裏手の高知地検中村支部・中村区検の隣に大逆事件で刑死した中村出身の思想家、幸徳秋水(本名、伝次郎)…

973 人生讃歌・画家の夢 シャガールの愛をめぐる追想展

「愛の画家」といわれるマルク・シャガール展が日本橋・高島屋で開かれている。日本未公開作品を中心にした「愛をめぐる追想」という名前がついた企画展だ。 一方、長崎県美術館でもほぼ同期間に「愛の物語」というシャガール展が開催中で、97歳まで生きた…

956 大人も惹きつけられる児童書 沢木耕太郎の「月の少年」

まさか、沢木耕太郎が児童書を書くとは思わなかった。青年時代に香港からからロンドンまでを、バスだけを使って旅をした体験記「深夜特急」でノンフィクション作家としての地位を確立した沢木がこうしたジャンルに挑戦したことが面白いと思ったのか、朝日新…

953 絵のモデルになりました hanaの4月のつぶやき 9歳のゴールデンレトリーバーです

「一芸に秀でる者は多芸に通ずということわざがある。ある分野を極めた人は他の分野でも優れた才能を発揮することができるという意味だよ」。 旅行先から、大きな荷物を持って帰ってきたお父さんが、その荷物をほどきながら、こんなことを言っていました。ひ…

868 「凛」として生きる日本へ 平松礼二の「祈り」を見る

3・11は、多くの日本人に打撃を与えた。被災地の人々だけでなく、被災地から離れて生きる私たちもその例外ではない。日本画家の平松礼二は、大震災被災者への思いを「2011311-日本の祈り」という作品に込めたのだという。 荒れ狂う海に囲まれ、花…