小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

48 昭和史 過信と狂信の日本人

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友人の父親が書いた日中戦争の記録を読んだ。昭和史の中でも、大きな位置を占める日中戦争に学生の身で従軍した記録である。 中国で日本軍が何をしたかは、これまでも多くの記録や小説が出版されているが、今回あらためて記録を読んで、日中戦争当時の一兵士の思いが理解できた。この記録は近いうちに上梓される予定だ。 記録を読んだあと、半藤一利の「昭和史」を取り出し、再読した。旧満州中国東北部)に介在したうえ、満州国を強引に建国し、その後日中戦争、さらに太平洋戦争へと突き進み、破局に至った昭和の前半を「半藤節」の語り口調で分かりやすく描いた名著だ。 半藤はこの本の中で、戦前の軍人の過信ぶり、政治家の無責任ぶり、新聞のいい加減さを徹底的に暴いている。こうした時代に遭遇したため310万人以上の人々が無念の死に追いやられた。私の父もその1人である。 半藤は、昭和史の教訓として5点を挙げている。 ①国民的熱狂をつくってはいけない②危機の際、日本人は抽象的な観念論を好み、具体的、理性的な方法論を検討しない③タコツボ社会における小集団主義の弊害④問題が起こったときに対症療法的で、すぐに成果を求める短兵急な発想をする⑤国際社会の中の日本の位置づけを客観的に把握しない まさに、その通りである。が、この指摘はその後の日本にもあてはまるのではないかとぞっとする。自民党郵政民営化をめぐる除名議員の復党問題など、その典型ではないか。 それにしても、戦後61年。この間この日本が戦争に巻き込まれなかったのは、幸運だった。21世紀に生きるわれわれは、昭和史という負の歴史を無にしてはならないのだと思うのだ。