64 昭和史 戦後篇を読む
きょう、防衛庁から昇格した防衛省が誕生した。戦後は遠くなりにけりの印象だ。
正月休みに、半藤一利の「昭和史」の後編である戦後篇を読んだ。太平洋戦争で多くの都市が廃墟になった日本。作品は荒廃から立ち直り、現在の姿になるまでどのような時代を歩んだかを幅広い視点から描いている。
同時代を生きてきた者には、自分の歴史を振り返るような懐かしい思いで読み進めることができる作品だ。
単純に戦後62年などというが、昭和史に書かれた復興の歴史は、日本人の打たれ強い精神構造を示していると感じた。
戦後のGHQ・マッカサーとの駆け引き、現行憲法の成立、天皇制の維持をめぐるエピソードは興味深い。
さらに55年体制をつくりあげ、維持してきた政治のリーダーたち。吉田茂、鳩山一郎、岸信介、池田勇人、佐藤栄作、田中角栄らについて人間性を含めて、けっこう辛らつに、あるいは正確に分析している。官僚政治の功罪についても手厳しい。
戦後篇を書き上げた半藤は日本の進路について「このままひたすら世界平和のために献身する国際協調的な非軍事国家でいくか、平和主義の不決断と惰弱を清算して、責任ある主体として世界的に名誉ある役割を果せる普通の国にならなければならないかの2つかだ。その選択は若い人の大仕事だ」と書く。
さらに横町の隠居なりのお節介として次の点を掲げる。
1、無私になれるか。日本人が私を捨ててもう一度、新しく国をつくるために努力と知恵を絞ることができるか。
2、小さな箱から出る勇気。自分たちの組織だけを守るとか、組織の論理や慣習に従うとか、小さなところで威張っているのではなく、そこから出て行く勇気があるか。
3、大局的な展望能力。物事を世界的に、地球規模で展望する力があるか。
4、他人に頼らないで、世界に通用する知識や情報を持てるか。
5、「君は功を成せ、われは大事を成す」(吉田松陰)という悠然たる風格を持つことができるか。
半藤は「現在の日本に足りないのはこれらのことであって、決して軍事力ではない」と結びに書いている。政治家、役人だけでなく、日本人全体へのメッセージとして受け止めたい。