小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1975 いつまで続く泥濘(ぬかるみ)ぞ うそと特権意識と自らの利害と

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 政治屋という言葉を使ったのは、コラムニスト・随筆家の高田保(1895~1952)だった。「政治家は次の時代のことを考え、政治屋は次の選挙のことしか考えない」と。昨今は「政治家はコロナ禍の一刻も早い終息を考え、政治屋はコロナなんて無関係。ただ特権意識を振りかざす」というべきか。平気でうそをつき続けた首相に続き、またもやうそがバレた議員たちの姿に怒りを通り越し、あきれ果てた人が多いのではないか。

 日本の政治に公然とうそがまかり通るようになった。安倍前首相は「桜を見る会」前夜祭に関する疑惑を巡り、国会で118回も虚偽答弁をしていたことが衆院調査局の調査で判明した。このようなリーダーの姿勢を国会議員も見習っているらしく、いずれはバレるうそを平気でついてしまう。「銀座のクラブに陳情や要望を聞くために1人で行った」と記者会見で話した松本純国家公安委員長。実はその場には自民党の国会対策族の後輩2人(田野瀬太道文科副大臣大塚高司国会対策副委員長)が同席していた。3人は自民党を離党し、同じく銀座のクラブで飲食していた公明党ホープといわれた遠山清彦衆院議員は議員を辞職した。

  中国春秋時代(紀元前6世紀のごろ)の哲学者といわれる老子に81章からなる「老子道徳経」があり、中でも73章の「天の網」はよく知られている。「天網恢恢疎にして漏らさず」(天の張る網は広い。粗いように見えるが、実は網の目から漏らすことはない)だ。1人で行ったとうそを言い続けた松本議員も、昨日(2月1日)まで名乗り出なかった2人もいつ発覚するのではないかと怯えながら、この数日を送ったのではないか。もちろん、天の網は彼らの行動をじっと見ていたに違いない。

  文科副大臣を更迭され自民党を離党した田野瀬議員は、菅首相から叱責されたそうだ。しかし、菅首相自身も昨年12月、二階幹事長らと銀座のステーキ店で忘年会を開いていたことが発覚し謝罪しているから、喜劇のような構図といっていい。3人が記者会見をしている後ろには「国民のために働く」という自民党のポスターが張られていた。ブラックユーモアでしかない。

  幾つかの辞書には「政治屋」という言葉が出ている。

「立場や権力を利用して利権を得ようとする政治家を軽蔑していう語」(岩波書店広辞苑

「地位や立場を利用し、みずからの利害に重きをおいて行動する政治家を軽蔑していう語」(小学館デジタル大辞泉

「政治家としての使命や志を失い、保身や私利の追求に走る政治家をいやしめて言う語」(実用日本語表現辞典)

 これに付け加える。

「政治家としての使命や志はなく、自身の利害と特権意識に重きをおいて行動する政治家を軽蔑していう語」

  ミャンマーでは国軍がクーデターを起こし、政権与党を率いるアウンサン・スーチー国家顧問らを拘束した。国軍系の最大野党が先の総選挙で政権与党に大敗。国軍の幹部は、この原因は「選挙に不正があったから」と異議を唱えていたという。クーデターは、この意見を通すために強行したとみられる。これは、アメリカ議会に乱入したトランプ前大統領支持者らと共通する「自らの利害」を優先する考え方ではないか。世界は「泥濘(ぬかるみ)にはまり続けている」といっていい。

 

 写真 以前訪れた北海道夕張の雪景色(2011・1撮影)

 

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